【アテンザ開発者への10の質問】Q.4 なぜ今MTを設定したのか?

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マツダ アテンザ 梶山浩開発主査
マツダ アテンザ 梶山浩開発主査 全 18 枚 拡大写真

2012年11月、マツダが販売を開始した新型『アテンザ』。3月3日現在での受注台数は当初の予定を大幅に上回る1万2000台超と、上々の立ち上がりを見せている。

同社の新世代技術"SKYACTIV TECHNOLOGY"をフルに採用した新世界戦略車である新型アテンザはどのようにして生まれたのか。それを明らかにするため、アテンザ開発陣に「10の質問」を行った。

Q. なぜ今MTを設定したのか?
A. MTの楽しさを実感してもらいたかったから。また、MTを無くしてしまえばいずれ弱体化したメーカーになると考えたから。

今やスポーツドライビングはDCT、DSGなどの2ペダルMTが主流だ。にも関わらず、アテンザはATとMTを用意している。しかもMTは完全新設計のSKYACTIV-MTである。トレンドと逆行していると見ることもできるこの設定について、まず聞きたいのは社内ではどんな議論が行なわれていたか、ということだ。当然、導入には賛否があったことは想像に難くない。新型アテンザ開発主査の梶山浩氏に聞いた。

◆「MTを無くしてしまえば、いずれ弱体化したメーカーになる」

「ファイナンスの担当部署からは『そんなことやってて儲かるのか?』と言われましたよ。『それは儲かる訳ないでしょう』とハッキリ答えました。何しろ、今は免許取得者の8~9割はAT限定なんですから。他の自動車メーカーはどんどんMTを設定から外している状況ですし。『だからといってMTを無くしてしまえば、いずれウチは弱体化したメーカーになりますよ。いいんですか?』と言って説得したんです」

メーカーが弱体化する、というのは具体的にはどういうことなのだろうか。トランスミッションという伝達装置は、クルマの開発にとってどういう存在なのか。

◆MTの良さをATでも実現していくことが大事

「ATは構造だけでなく、制御部分のチューニング次第でどうにもでもなるんです。しかし、それを進めていくと、どんどんギミックの領域が増えていって、運転するという感覚が薄れていってしまいます。MTの良さを我々も皆で味わって、それをATでも実現していくことが大事だと思うんです」

マツダの考える人馬一体は、運転する感覚をいかにリアルに楽しんでもらえるか、ということにある。

「ドイツでクルマのテストをする際にも、評価するのはMTなんです。MTを持っていなければ、欧州では通用しない。FFでもシフトフィールに優れたMTを作りたいというのがありました。この楽しさを日本のお客さんにも知って欲しい、という思いもありますね」

◆新しいMTを作った理由はシフトフィールに尽きる

しかしショートストローク化やシフトレバーの角度の最適化などは、レバー本体やシフトリンケージの工夫でも達成できるはず。あえてMT自体を新設計した理由はどこにあるのだろう。

「操作系だけでは、スペックは達成できてもフィールまではなかなか難しいものがあるんですよ。だから最新のMTを作ったんです。新しいMTを作った理由は、もうシフトフィールに尽きますね。DCTは、ATのSKYACTIV-DRIVEが出来たおかげで、必要性を感じなくなってしまったんです。確かにデュアルクラッチは低速域の力強さなどに魅力を感じますが、一方でパーキングスピードでのスムーズさなどに問題があると思っています。SKYACTIV-DRIVEの場合、シフトに要する時間はDCTより短いですから、そちらを採用しました」

◆SKYACTIV-Dによってディーゼル車における新しいスポーツ感を提案できた

たしかに、トルコンの滑らかさとダイレクト感を両立できれば、DCTにこだわる必要はない。ただ、アテンザではガソリンエンジンにMTを用意する可能性はないのだろうか。

「そういった声があれば、ガソリン車のMT仕様導入も実現しやすいかもしれませんね。それはともかく、SKYACTIV-Dによってディーゼル車における新しいスポーツ感を提案できたと思っています。SKYACTIV-DにのみMTを用意したのは、それを達成することが狙いですから。設定時は月に5台も出ればいいところと思っていたものが、受注の10%もの割合を占めているんですよ」

予想以上のMT好調ぶりに梶山氏の声も弾む。

《高根英幸》

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