『フォレスター』がフルモデルチェンジして4代目のモデルが登場した。フォレスターは、元はといえばステーションワゴンに由来する低全高SUVが特徴だったが、今では背の高い一般的なSUVパッケージのクルマに変わってきた。
そのため『インプレッサ』には改めてステーションワゴンから発展したSUVとして「XV」が設定されている。あるクルマが進化して性格や車格を変えていくと、そのあいたスペースに新しいクルマが必要になるのは良くある話である。
ボディは全長、全幅、全高が少しずつ大きくなった。世界中の多くのクルマは、モデルを重ねるごとにボディやエンジンやタイヤが大きくなっていくが、フォレスターもやはりその呪縛から逃れることはできなかった。それでも全幅を1800mm以内に収めているので、日本市場にも一定の配慮をしている。
高めの全高を持つようになったが、基本パッケージは悪化しておらず、運転席には自然な姿勢で乗り降りできるし、乗り込めばSUVらしい高めのアイポイントによって開けた視界が目に入る。周囲が見やすく最小回転半径も5.3mと小さめなので、取り回しのしやすいクルマである。
新型フォレスターは全体的に魅力を向上させ、乗用車系の車種が持つ安定感のある走り、SUV系車種が持つ高い走破性を併せ持つ。新世代のボクサー(水平対向)エンジン、シンメトリカルAWD、そしてアイサイトなどが新型車のポイントだ。
搭載エンジンは水平対向4気筒2.0リッターで、自然吸気仕様(109kW/196N・m)と直噴ターボ仕様(206kW/350N・m)の2機種が搭載され、リニアトロニックと呼ぶCVTと組み合わされる。自然吸気エンジン搭載車の一部には6速MTの設定もある。
新しいエンジンとCVTの組み合わせによって燃費が良くなったのが注目点だ。スバルのAWDはこれまで、燃費が弱点として指摘されることが多かったが、今回はアイドリングストップ機構の採用も含めて確実な改善が図られた。
自然吸気エンジンのCVT車でリッター15.2km、ターボ車でもリッター13.2kmを達成し、エコカー減税は50%減税が適用される。
自然吸気エンジンの搭載車は車両重量が1500kgを切っていて、SUVとして比較的軽めに作られている。そのため自然吸気でもけっこう良く走る。CVTは滑らかな走りを実現するし、チェーン式CVTに特有の金属音も良く抑えられている。
ターボ仕様のエンジンは『レガシィ』用と同じものながら、レガシィに比べるとやや抑えたチューニングが施されている。それでも余裕十分の動力性能であり、アクセルを踏み込めば豪快なパワーフィールが楽しめる。
SI-DRIVEでS#を選択すれば、アクセルワークに対して機敏に反応して一段とスポーティな走りが楽しめる。またパドルを使って8速のマニュアルモードを楽しむこともできる。
足回りはちょっと硬めの印象で、しっかりした足回りという印象だが、オンロードではもうちょっともう快適性が欲しいと感じるシーンもあった。ターボ車や2.0i-Sは18インチタイヤを履くので余計に硬めに感じられた。
新型フォレスターはオフロード走破性も向上している。センターコンソールのXモードスイッチを押すと、オフロードを走るための機能が選択され、本格派のオフロードに匹敵するような走りを見せる。今回の試乗会がオフロードコースのあるモビリティランドで開会されたのもそのためだ。
2輪が浮いて2輪しか接地していないような状態でも確実に駆動力を伝えるし、急な下り坂で速度を制御するヒル・デセント・コントロールも良く機能する。実際には本格的なオフロードを走る機会は少ないだろうが、それに対応できる性能も備えている。
パワーリヤゲートを始めとする充実した快適装備を備えることや、アイサイトに代表される安全装備を持つことなどもフォレスターの特徴。
強いていえば、国内向けではサイドエアバッグが標準装備からオプション設定に変わったことを厳しく指摘しておきたい。スバルはアイサイトで安全イメージを高めているのだから、ほかの部分でもしっかりやって欲しい。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。