【ランドローバー フリーランダー2 試乗】9速ATの存在が気になってしまう…金子浩久

試乗記 輸入車
ランドローバー フリーランダー2
ランドローバー フリーランダー2 全 3 枚 拡大写真

フルモデルチェンジというかビッグマイナーチェンジした『フリーランダー2』の最も大きな改変点は、エンジンが2リッター4気筒ガソリン直噴ターボに置き換えられたことだ。

その240馬力という最高出力は、先代の日本仕様に搭載されていた3.2リッターV型6気筒エンジンよりも排気量が3分の2以下にダウンサイジングされたにもかかわらず、反対に7%向上している。最大トルクは340Nm。エンジン単体で40kgもダイエットされ、CO2排出量も14%も軽減。このエンジンと6速ATは『イヴォーク』と共通のものだ。フルタイム4輪駆動システムも同様。しかし、マグネライド・アダプティブダイナミクスはオプショナルにも設定されていない。

イヴォークとの関係で気になるのは、イヴォークの6速ATが2013年後半からすべて9速化されることだ。筆者はすでにジュネーブで試乗したが、その仕上がりはとても上々だった。

変速は素早く、賢い。1段飛ばしの変速も可能で、アイドリングストップも行うようになったから燃費も約1割向上するはずだと同社エンジニアは力説していた。

1速がよりローギアード化されたことによって、オンロードでは2速から発進する。1速はテレインレスポンシステムでオフロード用の各モードを選んだ時に用いられる。ローギアード化された1速は悪路や牽引などでより大きな低速トルクを伝達するのに役立つ。

そういったいいことづくめの9速ATが現時点ではフリーランダー2にも搭載されると発表されていないのが気になるのだ。イヴォークとフリーランダー2はパワートレインは共通なのだから、ぜひ搭載するべきだと思う。生産態勢の問題なのだろうが、よりオフロード指向の強いフリーランダー2にこそふさわしい。

インテリアの質感も向上している。各部には合成樹脂が用いられているのだけれども、仕上げと組み付けが上質になった。サイドブレーキがレバー式から小さな電子制御スイッチ式になったのも改良点のひとつ。それによって、センターコンソール周辺の空間が増えて使いやすくなった。

高速道路に乗りペースを上げても、パワーは十分。チーフプログラムエンジニアのデイビッド・ミッチェル氏が、「排気量をダウンサイジングすることで高性能と経済性を確保できた。軽量化によるドライビングダイナミクスの向上にも寄与している」と語っていた通りだ。

旧型から引き継いでいる美点として挙げられるのは、自然で好ましいドライビングポジションだ。それは、兄貴分のディスカバリー4やレンジローバーなどが標榜している「コマンドポジション」そのものだ。背筋を伸ばして座り、ボディの四隅と遠くの路面がしっかりと把握できる。ドライビングポジションはオフロードを走るために重要な要素だが、結果的にオンロードを走る際にも役立っている。タイトなイヴォークとは対照的だ。

雪山の中の細いトレイルでは、センターコンソールのテレインレスポンスシステムのスイッチを押し、「草/砂利/雪」モードを選ぶ。エンジン回転の伸び方が穏やかになり、シフトアップの回数も減る。

轍が深くなってきたので、今度はもう1回スイッチを押して「泥/轍」に。さらに低速で粘りながら走り続ける。深い轍を乗り越える場合には1輪が浮き上がり、ボディが大きく傾くような局面にも遭遇した。窓ガラスを下ろして首を出し、路面状況とタイヤの位置を直接に目視する必要が出てくる。コマンドポジションとテレインレスポンスは、まさにこうした状況のためにあり、それはとても有効だ。ランドローバーならではの悪路走破性とバランスの取れたオンロードでの乗りやすさがフリーランダー2の真骨頂だ。守備範囲の広さがイヴォークとの違いとなってくる。

完成度が高くコンパクトSUVを求めている人に強く推薦したいのだが、前述した9速AT搭載を待たない手はないだろう。待っても搭載される保証はないが、待つだけの価値は十分にある。したがって、現時点では★の数も3つとなってしまう。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア・居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★

金子浩久|モータリングライター
1961年、東京生まれ。主な著書に、『10年10万キロストーリー 1~4』 『セナと日本人』『地球自動車旅行』『ニッポン・ミニ・ストーリー』『レクサスのジレンマ』『力説自動車』(共著)など。

《金子浩久》

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