【VW ゴルフ 試乗】内外装から走りまで、すべてが大きく進化…松下宏

試乗記 輸入車
フォルクスワーゲン ゴルフ
フォルクスワーゲン ゴルフ 全 20 枚 拡大写真

日本での『ゴルフ』(VII)の発表・発売は2013年夏ごろとされているが、4月上旬から導入記念の特別仕様車の受注が始められたので、ヨーロッパで乗ったゴルフについて報告しておこう。

今回のゴルフは気合いの入った開発が進められたモデルで、「MQB」と呼ぶモジュラー戦略をベースにした新しい開発・生産システムを採用し、基本プラットホームからシャシー、パワートレーンなどを一斉に新しくした。内外装のデザインや装備などが刷新されたのは言うまでもない。

MQBに基づくクルマ作りの革新は、大幅な軽量化にもつながるもの。比較の仕方にもよるが、単純な言い方をすれば従来型ゴルフ(VI)に比べて最大100kgも軽くなったという。

ボディサイズはやや大きくなった。全長やホイールベースが延長されたほか、全幅も10mm拡大して1800mmに達したので、日本で使うには限界ともいえるサイズになった。ここで踏みとどまったのは良かったが、ゴルフVIIもまたフルモデルチェンジのたびにクルマが大きくなるという呪縛(じゅばく)からは逃れられなかった。

エンジンはダウンサイジングしているのだから、ボディやタイヤのダウンサイジングにもチャレンジしてほしいところである。

ただ、そのことを除くとゴルフVIIはとても良くできたクルマだった。デザインを始め、インテリア回りのクォリティ、剛性感にあふれたボディ、乗り心地と操縦安定性に優れた走り、動力性能など、とても良くできていた。

外観デザインはひと目でゴルフと分かるものだが、現代的に洗練されたものにアップデートされた。ボディの拡大でパッケージングはやや変わったが、基本的にキープコンセプトの正常進化である。

外観に比べるとインテリアは大きく変わった。これまでのゴルフは機能性を追求した内装デザインが採用され、それがゴルフらしい質実剛健さを表現していたのだが、ゴルフVIIではそれをはっきりと変更してきた。

ドライバーオリエンテッドのインストデザインを採用したのが変更点で、これによってインテリア回りの雰囲気が大きく変わり、合わせてインパネ回りに全面的にソフトパッドを採用したことなどによって質感が大きく向上した。ラグジュアリーかつプレミアム感のあるインテリアになった。

試乗したのは1.4リッターのTSIエンジンを搭載した上級モデルで、快適装備や安全装備をてんこ盛りにした仕様の2ドアと4ドア車。ほかに、ディーゼルエンジンを搭載したレンタカーにも試乗した。

直列4気筒1.4リッターのTSIエンジンは、直噴+インタークーラー付きターボ仕様であることなどはこれまでと変わらないが、エンジン自体は全く新しく開発された。オールアルミ製のブロックを採用するなど、軽量化や効率の向上が図られたエンジンである。

排気ガス浄化の効率を高めるために前方排気から後方排気に変更されたほか、スタート/ストップ(アイドリングストップ)機構に加えて気筒休止システムも採用され、いろいろな意味で新世代のエンジンになっている。

動力性能もこれまでの1.4リッターのTSIエンジンに比べて大きく向上し、103kW/250Nmを発生する。ボディの軽量化が進められて動力性能が向上したのだから、走りが良くなるのは当然のこと。7速DSGも中身はいろいろな改良を受けているという。

ゴルフVIIに乗って走り出すと、剛性感のあるしっかりしたボディが、素性の良さを感じさる。しっかりしたボディは、静粛性の高さや乗り心地の良さにもつながるものだ。

新開発エンジンのトルク感はこれまで以上のものだ。わずか1500回転から3500回転までの領域で250Nmの最大トルクを発生するから、通常の走りをしていると、ほとんどの領域で最大トルクを発生している。滑らかで力強い走りになるのも当然だ。

信号待ちなどで停車するとすぐにスタート/ストップ(アイドリングストップ)機構が働いてエンジンが停止する。積極的にエンジンを停止して燃費を良くしようという意図が伝わる設定だ。

高速などでクルージングに入ると、気筒休止システムが働く。アクセルを抜いてエンジンブレーキを使うときはもちろんのこと、じわっと加速しているようなときなどもアクセル開け方を抑えると、意外に良く粘って2気筒が休止した状態で走れる。これも燃費につながる要素だ。

詳述する余裕はないが、ゴルフVIIには様々な新機構・新装備が採用されている。特に最近話題の安全装備が充実したものになったのが大きなポイントだ。先行受注の特別仕様車にはこれがふんだんに盛り込まれている。本格発売されるモデルも同様の設定になるものと期待される。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。

《松下宏》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. ベントレーの超高級住宅、最上階は「55億円」 クルマで61階の自宅まで
  2. 日産の新型セダン『N7』、発売50日で受注2万台を突破
  3. 【ダイハツ ムーヴ 新型】「ポッキー入れ」にイルミネーション、軽自動車でも質感を“あきらめさせない”インテリアとは
  4. トヨタ RAV4 新型、PHEVのEV航続は150km
  5. タワーバーだけじゃない! ボディ補強パーツの最新事情と乗り味革命~カスタムHOW TO~
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  2. 独自工会、EV減速でPHEVに着目、CNモビリティ実現へ10項目計画発表
  3. 茨城県内4エリアでBYDの大型EVバス「K8 2.0」が運行開始
  4. 中国EV「XPENG」、電動SUV2車種を改良…新電池は12分で80%充電可能
  5. コンチネンタル、EVモーター用の新センサー技術開発…精密な温度測定可能に
ランキングをもっと見る