【池原照雄の単眼複眼】「スマート工業団地」の先進事例に…トヨタ東日本などが宮城で運営開始

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F-グリッドのコージェネ(右)と太陽光発電装置
F-グリッドのコージェネ(右)と太陽光発電装置 全 3 枚 拡大写真

大型のガスエンジン・コージェネ中心に

トヨタ自動車が東北復興プロジェクトのひとつに位置付けてきた宮城県の工業団地でのエネルギーマネジメントシステムが4月から本格稼働した。コージェネレーション(熱電併給)装置を中核に構築されており、災害時には自治体などに電力を供給する先新型のスマートコミュニティ事業となる。

このシステムは「F-グリッド」と呼んでおり、トヨタが国内第3の生産拠点と位置付ける東北の子会社、トヨタ自動車東日本の本社地区(宮城県大衡村)に発電装置などを設置している。コージェネは都市ガスを燃料とするガスエンジン式で、出力は7800kW。コージェネとしては大型であり、その出力パワーはトヨタ東日本で生産している『カローラ』400台分に相当する。

このほか住宅用に換算すると約180戸分となる740kWの太陽光発電を装備している。さらに、『プリウス』などハイブリッド車の使用済みニッケル水素電池をリユースする蓄電池も90kWh分ある。

隣接の野菜工場には高温水を供給

現在のエネルギー供給先は、トヨタ東日本や豊田通商グループが運営する野菜工場のベジ・ドリーム栗原など3社。2014年度初めまでには外食産業、すかいらーくの食品工場など工業団地内の7社に供給先を広げ、その時点で電力の自給率は7割程度となる。

電力の不足分は東北電力の系統から調達する。F-グリッドでは、各工場の電力使用量や使用時間帯、時々の天候などから最適の供給ソーズを選択し、工業団地内のコストや環境負荷低減につなげている。同規模の既存工業団地に比べ、CO2排出量は約3割の削減を目指す。

発電に伴う排熱エネルギーでは175度Cに達する蒸気をトヨタ東日本の塗装工程に、低温水を塗装ブースなどの空調用に、さらに高温水をトヨタ東日本の工場に隣接して開設されたベジ・ドリーム栗原の新工場に供給している。

「災害に強い町づくり」の視点も

電力と排熱回収・利用の総合効率は、フル稼働時で80%に達するという。ガスエンジン・コージェネでは最大級の効率であり、現状の技術では余すとこなく都市ガスを電気と熱に転換できる性能だ。高温水を植物工場内の暖房に使っているベジ・ドリーム栗原の野菜工場は、パプリカの専門拠点。国内では単一工場で最大規模となる年315tの生産を目指している。

同社は国産パプリカのほぼ半数のシェアをもつ最大手だが、国内総市場の9割強を占める韓国産など輸入品にはコスト競争力で劣っている。新工場はF-グリッドからの熱供給でエネルギー費用の25%削減を図る。豊田通商の加留部淳社長は「競争力を高めて食料自給率の向上や、地域の雇用創出につなげたい」と強調する。

F-グリッドの、もうひとつの大きな特徴は災害などにより電力会社の供給に不備が生じた場合のバックアップ機能だ。自家発電した電力は、地元の大衡村役場などの地域防災拠点に供給する協定を結んでいる。「地域と工場がエネルギーを支え合う“災害に強い町づくり”を、東北から発信」(トヨタの友山茂樹常務役員)し、グループによるスマートコミュニティ事業のノウハウ蓄積にもつなげる構えだ。

《池原照雄》

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