1983年以来、自動車メーカーに高品質なサウンドシステムを供給して来たボーズは、一昨年の上海、昨年の北京と続けて上海モーターショー13に出展。とくに今回はこのオートモーティブ事業30周年を迎えるにあたり、会場ではそれを記念した様々な行事を開催した。
会場で真っ先に飛び込んで来たのは、懐かしいキャデラック『セビル・エルドラド』だ。このクルマこそ、ボーズが最初にサウンドシステムを供給した車両。まだカセットが主流の時代に、理想的なカーサウンドを実現するために車両の設計段階からボーズとGMが共同で開発に取り組んだのだ。その第1号が1983年型セビル・エルドラドであり、ビュイック『リビエラ、オールズモビル・トロネード』であった。会場にあったのはそのセビル・エルドラドの1985年型。この当時のサウンドと最新型を聴き比べできる! それが今回の最大の目玉だ。
セビル・エルドラドに乗り込むと、木目調のインパネ、ふかふかのシート、毛足の長いトリムなど、内装は80年代のアメリカンな雰囲気でいっぱい。インパネの中央部に目を移すと、そこにはこれまた懐かしいカセットデッキ付きのオーディオシステムがセットされていた。
ところが、再生はこのカセットから行われるのではなく、グローブボックス内に特別に取り付けられたCDから。実は、ボーズが手掛けているのはアンプからスピーカーに至るまでのシステム。もっとも取り付けが難しいこの部分を手掛けることで、ソースを選ばず、車両にとって最良のサウンドを提供することを最大の目的としているのだ。これは開発当初から今もなお継続されている基本コンセプトでもある。
試聴は80年代にヒットした音楽で始まった。ボリューム感あふれる低域とマイルドな中高域が耳に心地良い。加工のない素直なサウンドはまさにオールディズな雰囲気。このままフリーウェイを走ってみたくなる。続いて、最新型のキャデラック『ATS』に乗り換える。今度は5.1chサラウンドが体感できる最先端のシステムだ。フロントウィンドウ越しに映像を見ながらデモを聴いていく。車内の隅々の響き渡るサウンドが立体的な音場を作り出しているが、ソース源はなんと普通の2chステレオなのだという。まさにソースを選ばず最良のサウンドシステムが楽しめるボーズの基本コンセプトは最新型でもしっかりと受け継がれていたと言える。
また、プレスデーに開催されたボーズのプレスカンファレンスでは、30周年を迎えたことを記念したGMとボーズの記念品贈呈式も行われた。