【メルセデスベンツ SLK200 MT 試乗】“乗りやすい”ことがいいとは限らない…諸星陽一

試乗記 輸入車
メルセデスベンツ SLK200 MT
メルセデスベンツ SLK200 MT 全 18 枚 拡大写真

すっかりATが当たり前となった日本の自動車市場。なんとベンツにはずっとMTの設定がなく、この『SLK』の6MT仕様はじつに21年ぶりに正規輸入されたMT車だというのだから驚きだ。

さてその21年ぶりの6MT仕様。これがじつに乗りやすい。MTの場合は当然のことながら、左足でクラッチペダルを操作しなくてはならないが、その操作感は軽くもなく重くもなく絶妙のフィーリング。踏み込んだ左足をゆっくりと戻してきたときのミートポイントも自然で、狭い半クラッチ領域をもちながら確実な接続感をもっている。

シフトレバーの操作感もいい。MTでまず大切なのが正確さだがそれについてはまったく問題がない。面白いのはシフトノブに刻まれたシフトパターンの表示にN(ニュートラル)があること。3速と4速の中間にNのマークが刻まれている。当たり前のことなのだがじつはこれを意識することが重要。2速から3速にシフトアップする際に、間違えて5速に入ってしまうのは、ニュートラルを無視するからなのだ。いったんNに入れ、そのまま押し込めば確実に入る。このパターン表示はそのことを教えているのだ。

シフトレバーの後ろ側にあるフロアコンソールには、ちょうど左下腕を乗せておくようにパッドが貼り付けられた部分があり、そこに左下腕を乗せておくことで、左手をリラックスさせておくことができる。

100km/h時のエンジン回転数は6速が2000回転、5速-2400回転、4速-3000回転、3速-4400回転。1.8リットルのターボエンジンの最高出力は184馬力。最大トルクは270Nmで、1800~4600回転という広い範囲で発生する。

このトルクバンドの広さがSLK200の乗りやすさの原動力。高めのギヤで巡航しているときも、とくに強い加速が必要でなければシフトダウンせずにアクセルペダルを踏み込むだけで順調に加速に移行でき、まるでAT車に乗っているような感覚だ。

だが、しかし待てである。ATに乗っているような乗りやすさでいいのであろうか? 例え乗りづらくても、もっともっとMT感が強いほうがいいのでは……。エンジンの特性もこんなにフラットでなく、高回転で伸びのあるほうがいいのではないだろうか? わずか6200回転程度でレッドゾーンになってしまうエンジンではMTで走る楽しさは半減だ。

MT率の高いヨーロッパではこの設定でいいのかも知れないが、日本でMTに乗るということは“あえてMT”なのだ。これではちょっともの足りないと思ってしまう。

パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★

諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活躍中。趣味は料理。

《諸星陽一》

諸星陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

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