宇宙科学研究所は、大気球実験で、皮膜に網をかぶせたスーパープレッシャー気球が低温環境下、4000Pa以上の耐圧性能を持つことを確認したと発表した。
5月25日午前1時51分に、皮膜に網をかぶせたスーパープレッシャー気球の飛翔性能評価を目的に、BS13-04実験として、2013年度第1次気球実験の3号機を連携協力拠点である大樹航空宇宙実験場から放球した。
3号機は、満膨張体積10立法メートル(直径3メートル)の超小型スーパープレッシャー気球とゴム気球からなるタンデム気球システムで、上昇時の補助浮力を与える牽引ゴム気球を付けて実施した。
放球後、気球は毎分360メートルの速度で上昇し、1時間15分後に大樹航空宇宙実験場の南東約65kmの太平洋上で高度23kmに達したところで牽引ゴム気球を切り離し、タンデム気球システムとして水平浮遊させた。午前3時50分頃からは、日昇に伴った高度の上昇を利用して耐圧性能の検証を行い、午前5時03分高度25kmで、タンデム気球システムを構成するゴム気球が膨張限界に達して破裂し、超小型スーパープレッシャー気球と制御機器部は、大樹航空宇宙実験場の南東約80kmの海上に緩降下した。
今回の実験は、皮膜に網をかぶせるという新しい手法を用いたスーパープレッシャー気球開発の一環として行われたもの。皮膜にかかる張力を抑えた設計について、有効性確認を目指した。
この手法では、原理的には軽量で高い耐圧性能を実現することが可能だが、昨年度の飛翔試験では400Paの耐圧性能を実証するにとどまっていた。今回の飛翔試験で、微小なヘリウムガスの漏れが存在した可能性があるものの、成層圏飛翔時の低温環境において4000Pa以上の耐圧性能を持つことが確認できた。これは、気球の構成要素である皮膜と網の双方が体積30万立法メートルの大型気球で要求される強度を持つことが確認できたことを意味する。
また、飛翔中には、日照に対するスーパープレッシャー気球の応答特性、タンデム気球システムの飛翔特性に関するデータも取得した。
今後、より大型のスーパープレッシャー気球の開発を進めるとともに、昼夜で高度を変化させながら長時間飛翔できるという特徴を生かした、超小型タンデム気球システムの科学観測への適用を進める。