国立天文台、世界最速の天文学専用スーパーコンピュータ「アテルイ」を運用開始

宇宙 科学
クレイ・ジャパン・インクが開発した1512ノード・2万4192コア、502テラフロップスの性能を持つアテルイ。
クレイ・ジャパン・インクが開発した1512ノード・2万4192コア、502テラフロップスの性能を持つアテルイ。 全 3 枚 拡大写真

自然科学研究機構 国立天文台は5月29日、現時点で天文学専用としては世界最速のスーパーコンピュータ「アテルイ」を、岩手県奥州市の水沢VLBI観測所にて2013年4月1日より運用していることを発表した。

アテルイは正式には「Cray XC30システム」と呼ばれ、クレイ・ジャパン・インク製の大規模スカラ型並列計算機だ。国立天文台天文シミュレーションプロジェクト(CfCA)が運用しており、CfCAのスーパーコンピュータとしては第4世代に当たる。

ちなみにスカラ型並列計算機とは、多数のCPU同士を専用に最適化された高速回線によって接続し、システム全体として非常に大きな演算性能を得られる仕組みのスーパーコンピュータのことをいう。

アテルイの基本スペックは、1ノードが16個のコア(CPU)で構成されており、システム全体では1512ノード、つまりコア数なら2万4192コアが演算に用いられる形だ。2008年に導入されたCfCAの第3世代の「XT4システム」は2960コアなので、単純にコア数だけで約8倍となっている。

そして肝心のアテルイの性能だが、システム全体で理論演算性能502テラフロップス(1秒間に浮動小数点演算数が502兆回)となっている(日本最速、世界でもトップクラス(現在3位)の理化学研究所の「京」は、1秒間に10ペタフロップス(1京回))。なお、アテルイは2014年9月までにアップデートを行う計画で、そこで1ペタフロップスを超える予定だ。

また、それぞれのノードには64GBの主記憶装置が搭載されており、システム全体としては94.25TBの主記憶を持つ。さらに、数値シミュレーションのデータを格納するために820TBのハードディスクも搭載されている。

さらに、アテルイは情報通信研究機構が運用する高速ネットワーク回線を介して、奥州市にありながら国内外からのアクセスやデータ転送が容易になっている点も特徴だ。

ちなみに愛称のアテルイとは、約1200年前に現在の水沢付近に暮らしていた蝦夷(蝦夷というと北海道のイメージだが、関東地方以北から北海度までまとめてかつて蝦夷と呼んだ)の長で、朝廷の軍事遠征に対して蝦夷をまとめ勇敢に戦った英雄の「阿弖流為」にちなんでいる。世界最速の計算力を活かして、果敢に宇宙の謎に挑んでほしいという思いが込められているのだ。

なおアテルイでは今後5年間、「かつてない」というほどの大規模・高精度なシミュレーションが数多く実行される計画で、「理論天文学の望遠鏡」としての活躍が期待されている。

《デイビー日高》

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