【インタビュー】三菱eK開発「負けられないライバルがいるから頑張れた」

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秋田義雄プロダクトエグゼクティブ
秋田義雄プロダクトエグゼクティブ 全 6 枚 拡大写真

三菱自動車が6月6日に発売した新型『eK』は29.2km/リットルを実現した。開発責任者を務める秋田義雄プロダクトエグゼクティブは当初の目標は28km/リットルだったが、それを上回るモデルを他社が出したことで、そのたびにハードルが上がったと明かす。

---:新型eKは日産自動車との合弁会社NMKVで開発されましたが、具体的にはどのようなプロセスを経て商品化に至ったのかお聞かせ下さい。

秋田氏(以下敬称略):まず業務的に、やったことは商品企画ですね。ここが非常に重要なポイントで、協業のメリットが特に大きく出たところだと考えています。次にそれを受けて実際の車に造り上げる開発業務、これもNMKVで、三菱と日産の開発のメンバーらもジョインして共同でやりました。

どういうお客様を狙って車を造っていくかということを、まずは個々で協議して持ち寄って、ひとつのターゲットにセッティングしました。今回は、トールワゴンという軽のど真ん中に突っ込んでいくという点で、非常に日産とは意見があった。また、スーパーハイトワゴンを2014年早々に発売するということで現在、開発を進めています。この2本立てで、だいたい軽の大きなところは抑えこもうということで企画をやりました。

開発面でいうと基本的にはNMKVで協業でやるというスタンスですが、実務の設計ならびに実験、これは開発のメインだと思ってますが、ここは三菱自動車が委託を受けてやるというのが今回の業務分担です。

---:開発の実務で日産のノウハウは反映されましたか。

秋田:三菱は軽を造り始めて50年の、開発だけではなく生産を含めたノウハウを持っていますので、基本的にはそれを最大限有効活用して頂く立場で良いのかなと思っていました。実際の設計という意味でいうと、ほとんどが三菱。ただ、燃費など色々と日産がノウハウを持ってる技術的なポイントがあります。そういうところは、日産からも技術的なアイテムを出してもらって、まさに良いところ取りをしました。

---:クラスナンバーワンの低燃費をどう実現したのですか。

秋田:この車は当初、28km/リットルを目標にやっていくと日産と合意し、両社のトップの了解も得てスタートを切りました。28km/リットルまでは三菱の技術でいける。これに関しては一切飛び道具は使っていないです。地道にフリクションの低減、空力抵抗などを積み上げた燃費です。それが一番コストが安く、かつ一番信頼性が高い。そういうポリシーで進めてきました。

開発を進めていく中で、28.2km/リットルまでいけた、28.4km/リットルまではいけますよ、と。そのたびに喜んでいたのですが、スズキ『ワゴンR』、ダイハツ工業『ムーヴ』の新型が出て、これでは負けていると、その時に正直悩みました。

開発が終わりかけている時期に燃費を上げようとなると、今までの苦労とは違う。デザインは変えられない。ではどこで対応するのか。当然コストもアップする。そういう悩みの中で、やはり燃費というのは一番を獲らなければならない、29.2km/リットルを目指そうということになりました。

岡崎の技術陣が苦労して、29km/リットルはいけるめどがたった。でもそれでは1番だけどトップではない。あと少しが出ないというところでしたが、本型ができ、最終的な部品で測ってみると、空力的に抵抗が落ちて、結果的に29.2km/リットルを超えた。やってみたら出たと、最後はそういうイメージです。

しかし、もうあと何か月(燃費トップの地位が)もつのか、あと数か月でまたひっくり返るでしょうね。これはもう入れ替わり立ち替わりの競争です。自動車メーカーとして、ここは譲れないメンツ的なところなので、燃費というのは。

---:開発の最終段階でそれだけできたということは、最初の目標を高くしていれば、もう少し上が狙えたのでは。

秋田:結果からするとイエスです。ただ、もともと28km/リットルを出せるエンジンがあったわけではないですから、今回はエンジンを変えましたが、当初の実力値ではせいぜい25 km/リットルぐらい。それを改善していって28km/リットルはなんとかなりそう、ということになった。その時点で他社が出してこなければ、たぶん28km/リットルのままだったでしょう。他社が出してきたから、これはいかんということで、もうひと頑張り、ふた頑張りが出来た。結果として得られた。それが実態ですね。

---:2014年初頭発売予定のスーパーハイトワゴンの燃費はどうなりますか。

秋田:今の時点ではお答えできません。悩んでいます。トールワゴンに比べてスーパーハイトは当然、背が高くなります。高くなった分、鉄板もかさ上げするので重くなります。空気抵抗も悪くなります。この2つから基本的には29.2km/リットルの同じエンジンを載せても燃費は悪くなります。ただスズキ『スペーシア』が29km/リットルを出しているので、困っています。あまり期間ないですよね、あと半年くらい。

---:気持ちとしてはナンバーワンを目指したいということですね。

秋田:目指したいですね、希望として。1番は狙って頑張りたいと思います。

《小松哲也》

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