自動運転はすぐそこまで来ている…コンチネンタルが描く車両制御技術のロードマップ

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2012年のネバダでの実証実験
2012年のネバダでの実証実験 全 4 枚 拡大写真

自動走行がクルマの未来を輝かせる

少しばかり想像してほしい。今、アナタは何かの製品を使っている。その性能には満足しているが、最近、その製品の次世代モデルが登場した。その新しい製品の内容をチェックすると、性能は少しばかり向上したようだ。しかし、驚くほどではない。そのときアナタは手元の製品を処分して、新たな製品のために財布のヒモを緩めるだろうか?

どんなプロダクトであっても、旧型に対する圧倒的な性能向上があれば、新型モデルは売れるだろう。たとえばパソコンや携帯電話を考えてみよう。両製品とも、この20年で驚くべき進化を果たし、ユーザーである我々は、新製品が出るたびに喜んで購入してきた。カメラという長い歴史を持つプロダクトもデジタル化を経て、同じような道を歩んでいる。その結果、我々ユーザーは、次の新型は「もっとすごい」と期待するようになってきた。

ところがクルマの場合はどうであろう?

確かに新型モデルは旧型に対してほとんどの場合で性能を向上させている。特に燃費性能の向上は、驚くべきものがある。しかし、それ以外はどうか? 速さや室内の快適度が何倍にも高まったのか? 過去になかった驚くべき便利な機能が追加されているのか? 20年前のユーザーが今のクルマを見て、どう思うのだろうか?

そうした観点において、被害軽減自動ブレーキを筆頭とする車両制御技術は、クルマの商品性という意味で、非常に重要になってくるだろう。そして、この車両制御技術の先には自動運転が存在する。

もしも、新型モデルに自動運転機能が備わっていれば、アナタは、そのクルマを欲しいと思うだろうか? 私は欲しい。疲れた行楽帰りの高速道路の渋滞で、クルマが自動運転してくれれば、どんなに楽であろうかと思う。たとえ、自動運転が限定的なものであっても、運転の負担を軽減してくれるものであれば歓迎したい。もちろん、運転の楽しさは知っているし、それを手放す気はない。自分が運転したいときは、自分で運転するだけだ。しかし、クルマ好きを自認する自分でさえも、「運転が辛い」と感じるときはある。そして、その「辛さ」をシステムが肩代わりしてくれるなら、喜んでハンドルを渡すだろう。

私のように考えるユーザーは、決して少なくないはずだ。「そんなに楽なら欲しいな」「そんなに新しいものなら欲しいな」「便利に使えそうだから欲しいな」という人がいるだろう。つまり、自動運転はクルマという商品を光り輝かせる大きな武器になりうる。

◆既存のシステムで自動運転を実現したコンチネンタル

少々前置きが長くなったが、今回取材したのはドイツのコンチネンタルが取り組んでいる自動運転技術だ。説明してくれたのはコンチネンタルコーポレーション、シャシー&セーフティー部門取締役会メンバーであり、コンチネンタル・オートモーティブ社長も務めるChristoph Hagedorn(クリストフ・ハゲドーン)氏だ。

コンチネンタルはタイヤだけではなくパワートレーンからシャシー&セーフティー関連、車両エレクトロニクスまでを手がける、世界有数の自動車産業のメガ・サプライヤーだ。そのシャシー&セーフティー部門では、ブレーキ・システムから、車両エレクトロニクス、シャシー制御、各種センサーを提供している。つまり、自動運転に必要なアイテムのほとんどを手がけていると言っていいだろう。

そんなコンチネンタルは、クルマの自動走行に非常に力を入れている。その理由はズバリ、安全のためだ。それが「ビジョン・ゼロ」。アクシデントをゼロにする取り組みである。

「なぜクルマが事故を起こすのか? その76%が運転者の判断の間違いです。そして、70%の重い事故は回避できます。さらにアクティブとパッシブ・セーフティを統合することにより、ゼロ・アクシデントを可能とします」とハゲドーン氏は説明する。

その実現のために、コンチネンタルは、今後数年間で数十億ユーロを研究開発費に投じると発表した。また、2013年5月にはBMWとの2014年末までの共同技術開発を発表。欧州の高速道路で高度な自動運転を実現させるための研究を進めるという。

そうした取り組みのひとつが、昨年にアメリカのネバダで行われた公道での実験であった。驚くべきは、その実験車の内容だ。なんと、テスト用の自動運転車に装着されるコンポーネンツは、すべて量産車に採用されているものばかりであったのだ。これまで、自動運転車といえば、屋根の上に大きなカメラを載せ、いかにも特別しつらえといった出で立ちであった。それを見るたびに、「自動運転はずっと未来のもの。自分が運転する世代には関係ないのでは?」という印象が強まったものであるが、コチネンタルの実験車両は、これまでに見たことのあるカメラやレーダーなどで構成されていたのだ。となれば、俄然、期待が大きくなる。自動運転が夢物語ではなく、近い将来に登場する技術と思えてくる。

◆2016年には高速道路での低速走行をサポート可能に

コンチネンタルが発表した自動運転のロードマップには、3つの段階が目標とされている。その最初のステップは2016年だ。ここでの目標は、高速道路での時速30km以下での「ストップ&ゴー」のサポートだ。ドライバーは従来同様に走行に注意を払う必要がある。

次のステップは2020年。高速道路における時速30kmにとどまらない、より高められた自動運転だ。このとき、ドライバーは常に、車両操作ができる状態であることは求められるが、新聞を読んだり、ネットを閲覧することが可能となる。

そして、最終的な目標が2025年。高速道路での完全な自動運転だ。時速130km以上での走行を可能とする。ドライバーはハンドルの前に座る必要はない。ただし、自動運転は高速道路上に限定され、高速道路の外ではドライバー自身による運転が求められる。

もちろん、「自動運転中に発生した交通事故は誰が責任を取る?」「自動運転に対して、ドライバーはどういう立場になるのか?(免許は必要なのか?)」などの議論や世間一般のコンセンサスが必要なのは言うまでもない。コンチネンタルも「自動運転を市場にいつ、どのように展開されるのかを決定するのは、主に立法機関です。また、法的枠組の整備が必要となります」と、コンチネンタルの会長・Dr.Elmar Degenhart(エルマー・デゲンハート)氏は説明している。しかし、そうしたハードルを越えた先に、進化したクルマの未来が存在する。自動運転への議論と市場への認知は、始まったばかりだ。

《鈴木ケンイチ》

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