ドイツの総合化学会社BASFが主催した自動車用シートのグローバルコンペティション“sit down,move”で受賞したトヨタ紡織の『Aptus』は、“ひとつのシートで全ての体格のユーザーに快適性を提供すること”がコンセプトである。
このコンセプトを実現するために、シート自体の形状が変化するという特徴を持たせた。ひとつは、シートの背もたれとサイドサポート部分の可変機構により、体重が重くなる程背もたれからサイドサポート部分にかけてが開き、軽くなる程包まれるように閉じる動きをする。
また、同じく体重によってリクライニング機構が働き、軽い場合はアップライトに、より重い乗員に対してはワンモーションでリクライニングし、適正なヒップポイントをカバーすることなどで、あらゆる体格の人に対応できるシートとなっている。
Aptusをデザインしたトヨタ紡織のクリスチャン・デリース氏は、「トヨタ紡織はかつてからユニバーサルデザインを尊重しており、全ての体格の人に合うシートにどう応用するかをスタディしたかった」とデザインのきっかけを述べる。
そこで、「シート形状は現在のシートのように固定ではなく、変化させたり、動かすことが出来るのではと考えました」と発案時を振り返り、これこそが最も重要なポイントでもあるという。
現在、Aptusのコンセプトをもとに、BASFジャパンと共同でプロトタイプを開発している。デリース氏は、「シート形状が人に合わせて変わる、動くということが一番重要です。例え見た目のデザインは同じであっても、シート形状が動くことの実現化がなされなければ意味がないのです」とし、シート形状の変化がプロトタイプに必ず反映させることを強調した。