新型クーガで占う、フォードグローバルカー戦略の行方

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新型クーガで占う、フォードグローバルカー戦略の行方
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世界中のフォードの力を結集させるのがOne Ford戦略

フォードが2013年9月より日本で発売を開始する新型コンパクトSUV『クーガ』(北米名は『エスケープ』)は、同社が遂行する「One Ford戦略」の元に生まれた「グローバル・プロダクト」という新コンセプトのクルマである。

「One Ford戦略」は2008年にフォードCEOであるアラン・ムラーリー氏が策定した経営戦略だ。

2008年といえばリーマンショックを思い出すが、それがOne Ford戦略策定の直接の理由ではないとフォード・ジャパンでマーケティングを取り仕切る木下洋氏は言う。

「リーマンショックはひとつの引き金になりましたが、実際にはその前から、フォードを含むアメリカのビッグ3は経営的に厳しい状況に陥っていました。One Ford戦略の提唱は、リーマンショック以前から存在しました」と木下氏。

「One Ford戦略には具体的に4つあります。ひとつは、経営危機のときに策定した事業戦略ですから、きちんと収益が出るように事業を再構築すること。二つめが、クーガもそうですが、グローバル・プロダクトとして、世界中の消費者に受け入れられる品質・性能を持った商品を開発していくこと。三つめが商品開発にしっかりと投資をしていくこと」

「投資については、当時のフォードとしては簡単ではなかった部分です。お金がない中で、いかに投資をしていくかということですからね。そして最後が世界中のフォードがひとつのチームになって、ひとつの目標に向かって事業を進めていきましょうということです」と木下氏。

続いてOne Ford戦略の背景には、大きくなりすぎたフォードならではの悩みがあったという。

「世界中のフォードの従業員や事業所が、同じ目標に向かって動けなくなっていたんですね。ですから、20万人近くいた従業員が同じ方向に、同じベクトルを持ちましょう! というのが、One Ford戦略の根幹にある理念みたいなものなんです。そして、それがなければ、グローバル・プロダクトも作れないし、事業の再構築もできません」という。

世界中のリソースを使ってクオリティの高い商品を生み出す

One Ford戦略が生み出した「ワールド・プロダクト」とは、ひとつで世界に通じるという商品を指す。以前のフォードは、同じCセグメントのクルマであっても、北米とヨーロッパなど、各エリアでバラバラにクルマを開発していた。それをやめて世界中の開発リソースを結集して1車種に集約させようというのだ。当然、バラバラに開発を行うよりも、コスト面で有利になり、その分、クオリティの高い商品を生み出せる可能性は高くなる。

そして、その第一弾が2013年4月に日本に導入された新型『フォーカス』であり、第二弾が今回の新型クーガとなる。また、この後もCDセグメントのセダンである『モンデオ』(北米では『フュージョン』)が控えているという。ちなみに、いかにもアメリカンな『マスタング』やトラックの『Fシリーズ』のように、その地域特有のニーズがある車種は、そのまま続くという。グローバルな商品一辺倒に突き進むわけではないのだ。

では、新しく「グローバル・プロダクト」として新型に代替わりとなったクーガは、旧型とどこが違うのだろうか? 試乗してみると、先代譲りの欧州生まれのクルマらしい、ソリッドな走り良さを感じることができた。しかし、それだけでは過去と同じだ。

変化点は、走り以外にあった。新型クーガは、従来からある欧州生まれらしい走りの良さをそのまま残し、その上に北米やアジアでも認められるよう、使い勝手の良さや先進のパワートレーン、内外装の凝ったデザインをプラスしたのだ。「いわば足し算ですね。走りの良さを薄めるわけではありません」と木下氏。

なるほど、新型クーガは、延長された全長のほとんどを荷室空間や後席の居住性向上に使い、リアバンパー下に足先をキックするように差し入れると自動でゲートが開閉する「ハンズフリー・パワーリフトゲート」も採用するなど、使い勝手の向上が見られる。また、ダウンサイズ加給エンジンである「エコブースト」の1.6リッター版や、時速30km以下で作動する衝突被害軽減自動ブレーキ「アクティブ・シティ・ストップ」などの先進技術の採用もある。そして、コクピット風なインテリアは、非常にモダンでハイメカ感がある。これは中国で非常に高い評価を得たという。

こうした商品力の向上により、新型クーガは日本に先行して投入された北米で前年比+23%、ヨーロッパでも+57%の販売を実現したのだ。ちなみに「グローバル・プロダクト」の第一弾であるフォーカスは、中国では前年比+51%のベストセラーカーとなり、北米でも+40%もの大きな成功を収めた。2012年の販売は102万0410台にもなり、単一車名として世界で最も売れた乗用車になったのだ(米Polk社調べ)。

窮地から這い上がったフォードが生みだした「グローバル・プロダクト」は、高い商品力を備え、それに見合う大きな成果を手に入れたようだ。当分の間、フォードが送り出す「グローバル・プロダクト」は注目すべき存在と言えるだろう。

《鈴木ケンイチ》

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