フィアット『500』をベースにした「アバルト」には何種類かあるが、『595Cツーリズモ』の「ツーリズモ」シリーズはバリバリのレーサー風ではなく、日常的な使い易さも意図したモデルだ。
一方、数字の後の「C」はカブリオレを意味していて、キャンバス製の電動スライディングルーフを持つオープンバージョンということになる。
160psにチューンした1.4リットルターボとシングルクラッチの5段2ペダルMTによる加速感は、オートモードのシフトアップが若干ギクシャクするものの、少々意外なほど気持ちいい。エンジンがそれなりの爆音を奏でる演出も、その気持ちよさを増幅している。
17インチのタイヤを履く脚は硬めの設定で、レスポンスのクイックなステアリングを切り込むと小さなボディが素早く向きを変え、コーナリングの愉しさを味わわせてくれる。サスペンションのストロークは限られているから、荒れた路面ではボディが上下に揺すられるが、乗り心地は普段乗りするにも充分許容の範囲にあると思った。
今回の試乗は、長野の山奥から東京まで高速道路で戻るというルートだったが、そこで意外だったのは、アバルト595の高速における直進性のよさだった。かなりペースを上げても真っ直ぐに突き進んでいったのである。
それやこれやでアバルト595Cツーリズモ、ドライビングが想像した以上に愉しかった。リアシートは狭いので常時4人乗りは考えない方がいいが、そのへんさえ納得できれば足にも使える。とりわけ親爺の“回春剤”にはもってこいのクルマではないかと思った。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★
吉田匠|モータージャーナリスト
子供の頃からのクルマ好きが高じて、青山学院大学卒業と同時に自動車専門誌『CAR GRAPHIC』の編集記者としてニ玄社に入社。同誌ではスポーツカーのロードテストなどを主として担当し、ヒストリックカー、ツーリングカー、FJなどのレースにも参戦、優勝経験もけっこうあり。後にフリーランスのモータージャーナリストとして独立。自動車専門誌や一般誌に記事を執筆し、今日に至る。