【フィット プロトタイプ 試乗】ベンチマークのポロに迫る走り、魅力的なのはHV…青山尚暉

試乗記 国産車
ホンダ フィットHV(プロトタイプ)
ホンダ フィットHV(プロトタイプ) 全 12 枚 拡大写真

全車がRSルックとも言える新型『フィット』のプロトタイプに試乗した。

開発基準車は、聞けば1.5リットルのガソリン/HV車であり、ベンチマークはVW『ポロ』だという。

おそらく燃費スペシャルであろう1.3リットルモデルとは走りの質感、動力性能は別物。2代目の両車より差はグッと広がった印象だ。

テストコースおよび連絡路をちょい乗りしただけだが、1.5リットルモデル(15X)はエンジンの力感&スムーズさ、気持ちよさ、足回りのしっかりしたしなやかさ、走りのすっきり感、そして先代をしのぐ安定感の高さで1.3リットルモデルを圧倒する。

しかし、新型らしさをより強く感じたのは、ついにアクアの35.4km/リットルを抜いた36.4km/リットルを誇るHVモデルだった。メーター、マウス感覚のシフター回りの先進感は2代目HVとはくらべものにならない。

1モーターながらエンジンとモーターを切り離すことが可能になったおかげでEV走行領域は大幅に拡大した。聞けば50km/h以下で最大約1.5キロのEV走行を実現しているという。実際、発進からはEV走行が基本。平坦路を40km/h程度で流しても頻繁にEVモードに入る。

そしてHVモデルはベンチマークのVWポロにもっとも迫った仕様でもある。ボディーの剛性"感"は及ばないが、VWポロのターボの代わりに2代目HVとは比べものにならないモーター出力がもたらすトルクのアドオンによって、力強く伸びやかでレスポンスのいい上質な加速感を味わうことができる。

そうしたドライブフィールを支えるのが、VWのDSGならぬ、ツインクラッチの7速i-DCDだ(HV車。ガソリン車はCVTまたはMT)。基本がマニュアルミッションであることを感じるとすれば出足のほんの一瞬のみ。そこからは素晴らしくスムーズに変速する。

全車ともに安定感も文句なしだ。ルックスと中身が一致するRSでなくても飛ばして気持ちいい。ただ、HVモデルはガソリン車とくらべるとブレーキタッチに違和感あり。板のように感じられることがあるのだが、これは改善されると思う。

ところで、ホイールベースを延長しただけあり、パッケージングにもさらなる余裕がもたらされた。特に後席ひざ回り空間(膝頭から前席シートバックまでの水平距離)が顕著で、身長172cmのボクのドラポジ基準で2代目は210mm。しかし新型は後席を後ろ寄りにセットしたこともあって、何とクラス最大の270mmものスペースが確保されていた。それは3代目『ステップワゴン』の2列目席を10mm上回る数値だ! そして足元フロア先端(靴が着地する部分)の角度も改善され、よりリラックスして着座できるようになっていた。

また、初代から引き継がれる、後席がごく低く倒せ、格納できる秀逸のシートアレンジ性はしっかり受け継がれている。フィット独自のセンタータンクレイアウトゆえの芸当だが、荷室から低くフラットなフロアが続くため、例えばリヤドアから大型犬などのペットも乗り降りさせやすい。言い方を変えればHBタイプのコンパクトカーでこれほど犬を乗せやすいクルマもほかにない。そう、フィットは愛犬家仕様のコンパクトカーでもあるわけだ。

お薦めグレード、仕様は価格、ガソリン車の燃費が明らかになる市販を待って検証すべきだろうが、どう考えても圧倒的に魅力あるHVになることは間違いないと思っている。

パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★
ペットフレンドリー度:★★★★★

青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車雑誌編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に執筆。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組、イベントも手がける。現在、ドッグライフプロデューサーとしての活動も広げている。

《青山尚暉》

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