【CEDEC 2013】「アジアの常識は、日本の非常識」矛盾を解消するところに新しいビジネスモデルが生まれる

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【CEDEC 2013】「アジアの常識は、日本の非常識」矛盾を解消するところに新しいビジネスモデルが生まれる
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ゲーム業界でも久しくアジア市場が注目を集めていますが、地域ごとに固有の事情が存在し、数字だけを見ていると足下をすくわれる恐れもあります。CEDEC初日の8月21日、Kent Ho & Partners Company Directorの大和田健人氏は「アジアの常識は、日本の非常識/世界のボリュームゾーンとしての中間層市場に生まれる新たなゲームビジネスモデル」と題して講演し、現地の事情にあわせたビジネスモデル創造について訴えました。

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もともと「ゲームやろうぜ!」でSCEに入社し、ゲームクリエイターから海外営業に移動して、SCE Asiaで上海・台湾に10年間駐在した大和田氏。現地の富裕層を対象としてマーケティングを行っていましたが、「売れない・儲からない」という辛い日々だったと言います。ところがある日、広東省の出稼ぎ労働者たちと昼食中に「2」「4」「6」「8」のテンキーがすり減った携帯電話を見て衝撃を受けることに。「彼らはゲームに興味がないわけではなく、手に入れることができないだけだ」と悟ったのです。

「確かに中国には一定層の富裕層がいるが、ゲーム以外のさまざまな商品が彼らを対象に熾烈な競争を繰り広げている。それよりも日本の商品を買えない新市場を開拓するべきだ」と考えた大和田氏は2012年に香港で起業。現在は靴底をすり減らしながら、アジア全域で営業活動を行う日々だといいます。

実際、新興国市場は急速に成長しています。2015年には新興国(中国・インド・ロシア・ブラジル、アセアン諸国、中東&アフリカ諸国)の実質GDPが先進国の約半分(17兆268億ドル対34兆535億ドル)に達し、2010年と比較しての成長率は約4倍(13.4%対53.7%)を記録すると予測されています。またアジア(中国・香港・台湾・韓国・インド・インドネシア・タイ・ベトナム・シンガポール・マレーシア・フィリピン)の中間層人口(年間所得5000ドルから35000ドル)は2010年で9.4億人だったものが、2020年には20億人に達するという予測もあります。

「ただし理想と現実のギャップは常にあり、数字だけを見ていては間違えます」(大和田氏)。インドネシアの雑貨屋では今もシャンプーが1回ずつの小袋単位で売られており、ガソリンスタンドではペットボトルに小分けでガソリンが販売されています。どちらもまとめ買いするほど裕福ではなく、そのニーズもないためです。一方でこれらの商品を買いに来る消費者はスマートフォンでゲームを楽しんでいたりするのです。このように新興国には先進国とは異なる所得水準・ニーズ・消費習慣・流通モデルがあり、それらを理解したうえで、新しいビジネスモデルを創出することが重要だと大和田氏は指摘します。

具体的に大和田氏は誕生したばかりのアジア地域でのゲームビジネスモデルについて、マーケティング用語の4P(プロダクト【商品】・プライス【価格】・プレイス【流通】・プロモーション【宣伝】)のうち、プロダクトとプロモーションについて説明しました。

■品質はほどほどでOK、口コミ&共創型宣伝が有効
アジアで主要なゲームプラットフォームとなっているのはゲーム機ではなくスマホで、日本と異なり120ドルくらいの、ロースペック端末が中心です。3G回線もまだ普及しておらず、パケ放題などは夢のまた夢。ミャンマーで『キャンディクラッシュサーガ』が人気の理由についてヒアリングしたところ、一つにはゲームがおもしろくて、プレーに3G回線が必要ない(頻繁にアクセスしない)ためという結果も得られました。また市場のゲームリテラシーも低く、3Dの複雑なゲームを見せても、遊び方が分からないために人気がないといいます。品質の高いコンテンツが人気を集めるわけではないのです。

街中ではPC房も存在しますが、固定回線の速い中国・韓国と異なり、他のアジア地域では固定回線が遅いため、スタンドアロンで遊べるゲームにも人気があるそうです。インドネシアではPS3カフェがあり、1時間50円で遊べる。また『ウイニングイレブン』大会があり、参加料を払ってトーナメントを楽しむユーザーもいるとのこと。ゲームセンターではデータカードダス系のゲームも人気で、単に遊んで終わりではなく、モノとしてのペイバックがあるなど、リアリティが感じられるものが受け入れられているとされました。

また補足として、映画館に行く動機付けも異なっていると紹介されました。アジア圏ではほとんどが4-5人で連れ立って鑑賞し、一人で見る人は例外だそうです。これは多くの場合、新作映画を仲間内のアンテナの高い者が海賊版で視聴して、面白かったものについて友達と連れだって見に行くという消費習慣があるため。日本人は映画館にコンテンツを鑑賞しに行きますが、彼らはコミュニケーションツールと位置づけているのです。

一方で宣伝モデルについては、日本のようにマスメディアや中吊り広告などではなく、口コミや店頭のオススメが中心で、特に「共通の利益」を実現するモデルが効果的だといいます。一例として最近増加中のダウンロードステーションがあります。最近ではアジア圏といえども、海賊版の店頭販売が姿を消す一方で、街中にダウンロードステーションが登場し、お客はUSBメモリなどを持ってコピーしてもらいに行くスタイルが増加中です。その際にアフェリエイトでペイバックがもらえるシステムがあるため、店長も売れ筋を積極的に宣伝してくれるそうです。

また、あるMMORPGでは女性ユーザーが自分がプレイしている光景をストリーミングで流しており、アイテムの営業活動を行っていたという事例がありました。一人で週末に200万円もの売上を上げたほどで、これに目を付けた運営側が彼女に専用サーバを与え、レベニューシェアを持ちかけたそうです。日本ではおよそ考えにくいスタイルですが、良い悪いではなく、こうした違いを認識した上で、うまく活用することが求められるというわけです。

まとめとして、大和田氏は日本とアジアの常識の違いを次のように整理し、日本式スタイルとの矛盾が生じがちだが、これを解決するところに新しいビジネスモデルが生まれると語りました。そのうえで日本のコンテンツとアジアのビジネスモデルを組み合わせて、新しいムーブメントを生み出したいと抱負が語られました。

プロダクト:良い商品ありき/ほどほど品質でリアリティ重視
プライス:安かろう悪かろう/手の届く価格前提
プレイス:既存流通&電子配信/コピーソフト・伝統的流通
プロモーション:マス広告&交通広告、チラシなど/口コミ&共創型

このほか大和田氏はアジアの常識を取り込むため、「(1)まずは現地に行ってみる」「(2)海外に業務プロセスを出してみる」「(3)現地のビジネスモデルを学んでみる」「(4)自社でトライアルをする、またはパートナーと協業する」というステップが有効だと語りました。そして自社のコンサルティングなどのサービスも活用して欲しいとアピールし、公演を締めくくりました。

《小野憲史@INSIDE》

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