DARPAが支援する超高精度原子時計、従来の10倍の精度を達成

宇宙 テクノロジー
クエーサープログラム支援で開発されたイッテルビウム原子時計
クエーサープログラム支援で開発されたイッテルビウム原子時計 全 2 枚 拡大写真

米国防高等研究計画局DARPAは、同局『QuASAR(クェーサー)』プログラムでの資金援助に基づいて、米国標準技術局(NIST)が開発した新型のイッテルビウム原子時計が既存の原子時計の10倍の精度を記録したと発表した。

8月22日付のサイエンス誌オンライン版に掲載された発表によると、NISTの研究チームは、極低温イッテルビウム原子を利用する2つの光格子時計を構築した。イッテルビウム原子時計は、原子が基底状態から励起状態になるときに原子が吸収する光の周波数を計測することで時刻を刻む。それぞれの時計は、およそ1万個のイッテルビウム原子を10マイクロケルビン(絶対零度に対して10万分の1度)に冷却し、レーザー光からなる光格子の中に閉じ込める。そこに、原子が1秒間に518兆回のサイクルで二つのエネルギー準位を往復するために必要なエネルギーを与えるレーザー光を照射する。この原子時計は、誤差1京分の2秒の記録を達成した。

現状でこうした研究は、時刻精度の限界を探る基礎的なものとなっているが、将来はGPS衛星に搭載された原子時計にも応用できるとしている。既存のGPS衛星の原子時計の1万倍の精度を実現できる可能性もあり、GPS信号のなりすましを防ぐことも可能になる。重力や磁気、温度の高精度な計測に利用するといった応用も考えられるという。

今後は、イッテルビウム原子をさらに投入して精度を向上させ、二つの光格子時計ユニットを1つに組み合わせて実用的な段階を目指すとしている。

また、現状では原子時計の時刻を同期させることができないため、複数のマスタークロックから時刻情報を配信している。DARPAが支援する『PULSE』プログラムでは、レーザー技術を用いて時計の同期を実現する研究も行っている。

DARPAクェーサープログラムのプログラムマネージャ、ジャミール・アボシャー博士は「同プログラムによって計測学の領域を拡大し、航法、時刻、機能材料や生物科学の分野にも役立つ実用的な測定ツールを開発する」とコメントしている。

《秋山 文野》

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