クルマやバイクの部品を自作したり加工を楽しんでいるDIY派にとって、アルミ合金は魅力的な素材だ。
軽く、サビに強い上に、切断や穴開けも容易にできる。けれども素人にとって不可能なのが「溶接」。熱伝導がいいアルミは、溶接部分だけを溶け込ますにはMIG溶接のようなガスシールドアーク溶接が必要だ。そんな大掛かりな道具を手に入れるには勇気がちと足りない。そう思って諦めている人(筆者も含めて)は多いはずだ。
そう思っていたら、意外な解決策をホームセンターDIYショーで見つけた。カセットガス用バーナーなどを手がけるの新富士バーナーが、ガストーチを利用したロウ付けの実演コーナーを行っていたのだ。ロウ付けとは、融点の低いロウ材を溶かして対象物を接着する溶接法。クロモリ鋼のロードバイクなどに使われてきたものだが、これでアルミも溶接できるそうだ。
実際にロウ付けしたアルミ板を見せてもらうと、強度も十分。ただアルミは熱を加えすぎると対象物が歪んでしまうので、溶接温度を見極めるのが難しい。それでも慣れればアルミ同士の接着には役立ちそうだ。
ところでアルミ合金と言えば、柔らかく加工性に優れているものの、ちょっと形状や寸法を修正するために棒ヤスリなどで削ろうと思っても意外と苦戦することが多い。理由は柔らかいアルミ合金は削りやすいものの、ヤスリの目詰まりを起こしやすいからだ。
そんなヤスリの話を熱心にしているブースに気が付き、立ち寄ってみた。ワタオカは広島でヤスリを作り続けて創業120年という、ヤスリの名産地仁方でも老舗中の老舗であった。
そもそもはノコギリの目立て用ヤスリを作ってきたらしいが、今では棒ヤスリ全般、木工用、金属用のあらゆるヤスリを手がけている。マツダの生産工場でもスポット溶接機の電極清掃用に同社のヤスリが使われているそうだ。
目が詰まり難いヤスリという触れ込みを訊いて、試しに鉄とアルミ合金を一番目の細かいヤスリで削ってみた。筆者が日頃使っているヤスリとは手応えがまるで違う。しっかりと食い付き、しかも削った金属粉は細かく、目詰まりも少ない上にブラシでサッと取れる。
ワタオカの綿岡久美子社長に、その理由を訊いてみたところ、一般の棒ヤスリは量産性を高めるために仕上げをサンドブラストで仕上げているそうだ。細かな梨子地に仕上がる反面、これではヤスリの目の先端が丸まって、削れ難く目詰まりも起こしやすいと言う。
同社のヤスリは好みに応じて、酸仕上げと黒染めの2種類を用意しているそうだ。どちらもサンドブラストより手間はかかるが、ヤスリの目を潰してしまうことがないため、切れ味鋭く目詰まりし難いヤスリに仕上がる。今度ヤスリを購入する時は、こんなヤスリを買おうと思わされた。