労働党組織再建に内紛後遺症さめず オーストラリア

エマージング・マーケット オセアニア

ショーテン、アルバネージ譲り合い

 9月8日、ケビン・ラッド氏の敗北宣言と党首引退発表の翌日、労働党の再建を率いる新党首選定が話題に上り始めている。

 党首候補と目されているビル・ショーテン氏は、「ラッド氏後継者選びは過去の遺恨や党分裂と無縁でなければならない」と語った。しかし、労働党はラッド氏とジュリア・ギラード氏の首相交代劇の過程で多くの経験豊かなベテラン議員が政界を引退しており、さらに選挙で15議席ほどを失っている。特に選挙前まで財相補を務めたデビッド・ブラッドベリー議員が、リンゼーの選挙区で自由党のフィオーナ・スコット候補に敗れている。スコット候補は、トニー・アボット保守連合リーダーが、メディアに質問されて、「セックス・アピールがある」と評した女性候補で、後にはメディアのインタビューで、「難民希望者は労働党政権の6年間に5万人もやってきた。そのためにM4自動車道が渋滞し、病院も患者であふれ待ち時間が伸びている」と発言する程度の現実認識の人物だが、それでも当選し、これから国政に参加することになる。

 ショーテン氏はVIC州の労組幹部出身で現在は党内右派の派閥領袖になっており、かつてTAS州のビーコンズフィールド金鉱落盤事故で鉱夫2人が2週間にわたって地下の坑道に閉じ込められた時には陣頭指揮を執り、名を挙げた。しかし、労働党議員としては、2010年選挙の前にギラード氏を立ててラッド氏を追い落とした「影の実力者」の一人であり、ギラード氏を追い落とし、ラッド氏を立てている人物で、「過去の遺恨や党分裂策動の中心人物ともいえる。ショーテン氏と党首争いの下馬評が高いのはシドニー首都圏インナー・ウエストを選挙区とするアンソニー・アルバネージ氏で、NSW州労働党左派で、ギラード首相の下で働いたが、ラッド氏に首相の座が戻った時にも辞職しなかった。アルバネージ氏は、ソフィー・ミラベル自由党議員らと保守系市民のスロットマシン規制反対デモが選挙事務所に押し寄せた時にハンドマイクを持って、説得のために飛び出していったという逸話のある豪胆な人物で、発言力もあり、ショーテン氏のような後ろ暗い過去もない。

 ショーテン氏は、「どんな場合でも、過去の過ちから学ばなければならない。過去何年か、内紛をメディアに漏らすような事態があったが、そういうことを避けなければならない」と語り、アルバネージ氏を称賛した。一方、アルバネージ氏もショーテン氏を「優れた労働党指導者の資格あり」と語っている。また、今後1か月ほどで党首選びは党員と議員がそれぞれ50%の配分で投票権を持って決める。その後は議員の60%が「党首問題会議開催」を要求して初めて党首交代の会議が開かれることになる。

 ペニー・ウォング氏やタニア・プリバセク氏が、「沈着冷静で知的、理路整然とした発言ができる人物」との評価が高く、副党首にはいずれかの女性議員が選ばれる可能性があるが、このような資質は反知性主義心情の強いオーストラリア国民の間では必ずしも支持を受けるとは限らない。(NP)

労働党組織再建に内紛後遺症さめず

《Nichigo Press》

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