米サイエンス誌、「銀河団の伸びる高温ガスの巨大な『腕』」発見の論文が掲載

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米サイエンス誌、「銀河団の伸びる高温ガスの巨大な『腕』」発見の論文が掲載
米サイエンス誌、「銀河団の伸びる高温ガスの巨大な『腕』」発見の論文が掲載 全 1 枚 拡大写真

米国サイエンス誌に「銀河団に伸びる高温ガスの巨大な『腕』が発見された」と掲載された。銀河団の進化を解く鍵になる可能性がある。

マックス・プランク研究所のジェレミー・サンダース博士や宇宙航空研究開発機構(JAXA)インターナショナル・トップヤングフェローのオーロラ・シミオネスク博士らの研究チームが、アメリカ航空宇宙局(NASA)のチャンドラX線観測衛星と欧州宇宙機関(ESA)のXMMニュートン衛星を使って、かみのけ座銀河団の中に、高温ガスの巨大な「腕」を多数発見した。

一つの銀河団の中に、こうした長い高温ガスの腕が、しかも多数発見されたのは初めて。少なくとも50万光年の長さを持つ、これらの腕は、かみのけ座銀河団が、どのように小さな銀河群や銀河団との衝突を経て、宇宙で最も巨大な重力的に結びついた構造の一つになったのか読み解く鍵になる。

チャンドラ衛星のデータを詳細に解析して得られたX線画像(赤)と、スローン・デジタル・スカイサーベイの可視光画像(白・青)を重ねることによって得られた新しい画像には、はっきりと腕の特徴を見て取れると、している。

X線は、数千万度の高温ガスから放射される。可視光画像では、高温ガスの1/6の質量しか持たない銀河だけしか分からない。腕を強調するため、写真には最も明るいX線放射しか表示されていないものの、高温ガスは、視野内にまんべんなく存在する。

これらの腕は、小さな銀河団が、かみのけ座銀河団と衝突する際、かみのけ座銀河団の高温ガスの向かい風によって、銀河からガスがはぎ取られてできたのの見方が研究者たちの間では有力。

かみのけ座銀河団は、中心に一つではなく二つの巨大楕円銀河を持つという点で、珍しい銀河団。これら二つの巨大楕円銀河は、過去にかみのけ座銀河団と衝突した二つの銀河団の、最も大きい銀河の名残であろうと推定される。研究者たちはこのほかにも、かみのけ座銀河団がかつて衝突した痕跡を見つけ出している。

高温ガスの腕の広がりや、その中での音速(時速約400万キロメートル)から、新発見された腕は、約3億年前にできたのであろうと推定される。さらにこの腕は、いくぶん滑らかな形をしている。これらのことから、かみのけ座銀河団内の高温ガスの状態を解き明かすヒントとなった。

ほとんどの理論モデルでは、銀河団同士の衝突が起こると、高温ガスに強い乱流が引き起こされることが予想される。しかし、今回滑らかな形の長い腕が発見され、かみのけ座銀河団が何度も衝突を起こしたにも関わらず、高温ガスが、想定されている以上に穏やかな状態にあるという事実を示している。

かみのけ座銀河団内で乱流が弱いのは、銀河団規模の磁場が原因と考えられる。銀河団内の乱流の量を見積もることは、宇宙物理学の大きな挑戦の一つとなっている。これまでに様々な見積もりがなされてきたが、結果に食い違いが見られるため、他の銀河団をさらに観測していく必要がある。

二つの腕は、ニュートン衛星のデータから、少なくとも150万光年の長さを持つさらに大きな構造と繋がっており、かみのけ座銀河団中心部から200万光年先にある銀河群まで伸びているように見える。

また、ある銀河の後ろには、薄い「尾」が見られる。これは、銀河団や銀河群に加え、一つの銀河からも高温ガスがはぎ取られている証拠と見られる。

チャンドラ衛星のデータ延べ6日分を使って得られた今回の新しい発見は、米国科学誌「サイエンス」2013年9月20日号に掲載された。

一方、JAXAインターナショナル・トップヤングフェローシッププログラムは、JAXAが2009年度に設けた研究員制度で、世界からJAXA宇宙科学研究所で進めている宇宙科学の研究分野で、卓越した能力と高い意欲を持つ若手研究者を宇宙科学研究所に招へいし、宇宙科学研究所を研究拠点として世界レベルの研究成果を創出することを目的としたプログラム。

《レスポンス編集部》

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