【ホンダ フィット 新型 発売】パラレルだがシリーズに似たHVフィーリング…試乗燃費は25.7km/リットル

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9月にデビューを果たしたホンダの主力コンパクトカー『フィット』第3世代モデル。目玉のひとつである新型ハイブリッドシステム「i-DCD(インテリジェント・デュアルクラッチドライブ)」を搭載したフィットハイブリッドを短距離ながらテストドライブしたので、パワートレインのフィールを主体にリポートする。

◆高効率ミラーサイクルエンジンとモーター統合DCT

新型フィットハイブリッドのシステムをおさらいすると、i-DCDは、7速機械式自動変速機デュアルクラッチトランスミッション(DCT)に出力22kWのモーター1個を組み合わせ、リチウムイオン電池で駆動するというもの。パラレルハイブリッド方式であることは旧型のハイブリッドシステム「IMA」と同じだが、スペック面では旧型の10kWモーター、CVT(無段変速機)、ニッケル水素電池から大きく進化した。

エンジンは新開発の1.5リットル(110ps・13.7kgm)。燃費向上のカギを握る熱効率に優れたミラーサイクル方式とし、熱効率のピークは今日、エンジン開発のエンジニアたちが達成に眼の色を変えている40%にあと一歩まで迫る39%を達成したという(ここからの1%が並大抵のものではないとのことだが)。

モーターは旧型がエンジンに直付されていたのに対し、新型はクラッチ後方に置かれ、エンジンが停止しているときでもモーター単独で駆動でき、減速エネルギーを利用した発電もエンジンブレーキに邪魔されることなく行うことができるようになった。また、『アコードハイブリッド』に続き、0.2G程度の普通のブレーキングであれば時速2kmまでモーターの発電抗力だけで減速できる「電動サーボブレーキ」が採用されている。

◆試乗燃費はガソリンを9.4km/リットル上回る25.7km/リットル

これらの情報を頭に入れつつ、先に掲載した1.3リットルガソリンモデルとほぼ同じ、横浜のみなとみらい~山下公園界隈10.5kmをテストドライブしてみた。ガソリンモデルより0.2km短いのは、ガソリンモデル試乗時に1回コースを間違えてロスが出たため。試乗車はフィットハイブリッド「Fパッケージ」(5%消費税税込み172万円)で、条件は暖気ずみ、オートエアコン25度、ECON(省エネ)モードOFF、1名乗車、バッテリーのレベルゲージは下から3目盛。

まずは試乗時の燃費。試乗当日は市街地がかなり混雑していたが、トータルでの平均車速が時速約17kmとガソリンモデルの時よりは若干高めだったことも幸いし、走り終えた時の平均燃費計の数値は25.7km/リットルと、ガソリンモデルの16.3km/リットルに対して9.4km/リットルのアドバンテージを得られた。最終的なバッテリー残量はスタート時と同じ下から3目盛で、クルマのエネルギーコントロールを把握したうえで普通の運転をした場合の実力値の目安となろう。

◆IMAと一線画すi-DCDのハイブリッドフィーリング

そのi-DCDの挙動だが、旧型IMAとはまったく異なるものだった。発進は基本的にモーターのみで行い、車速が少し乗ったところでエンジンがかかる。ノーマルモードでは大きめのアクセル開度でもモーター発進するようプログラムが組まれているようで、燃費志向の強さがうかがえる。今回は試さなかったが、エンジンを最初から使うSモードを使えば、停止からの発進加速で最良のパフォーマンスが得られるであろう。

市街地走行での挙動もIMAとの違いは大きい。速度が乗ってクルーズ状態になるとエンジンを積極的に停止する。旧型フィットのIMAにもエンジンのバルブを全閉にしてモータートルクだけで走るモードがあったが、少し速度を上げようとするとすぐにエンジンが燃焼を再開していた。それに対してi-DCDは速度調節をモーターだけで行える幅がぐっと広くなっており、エネルギー消費量はかなり少なくなったという印象であった。

首都高速道路においては、流入時に低いギア段からポンポンとシフトアップするのかと思いきや、4速以上のハイギア側を使い、エンジン回転数を2000回転台に抑えながらモーターアシストを利かせて加速するというセッティングであった。みなとみらいランプは合流の距離が短く、料金所から走行車線、追い越し車線へと安全に合流でするにはそこそこ加速する必要があるのだが、それでもバッテリー残量が十分な場合はローギア側を使わないようプログラミングされているようだった。

バッテリー残量が少なくなると、エンジンが継続的にかかるようになる。駆動力を提供しながら発電も行うため、そのさいの瞬間燃費はかなり悪くなる。IMAではバッテリー残量を減らしすぎると、エンジン走行時の発電抵抗でクルーズ燃費ががっくり下がる傾向があった。その経験から「うわっここから燃費が悪くなるのかホンダのハイブリッドだからな~」と思ったのだが、ミラーサイクルエンジンになったことが奏功してか、燃費の落ち込みは直感よりずっと小さかった。

◆アコードハイブリッドにも似た運転感覚、静粛性はガソリン車をしのぐ

アコードハイブリッドで威力を発揮した電動サーボブレーキは、フィットハイブリッドにおいても燃費向上に相当貢献しているように感じられた。高速巡航から停止まで減速する高速道路出口では、スムーズな減速を心がけるくらいでエネルギー回生のレベルゲージがフルに近いくらいのところまで振れ、バッテリーのレベルゲージも急速に回復する。

市街地走行などの低速時は運動エネルギーが小さいため、回生量も少なくなる。が、バッテリーの挙動を見ると、それもバッテリー電力量の維持に結構貢献しているようだった。「それをこまめに取りきれば“塵も積もれば山となる”なのだなあ」などと思われた次第。

トータルで見ると、i-DCDはパラレルハイブリッドではあるが、リチウムイオン電池の特性を生かしてバッテリーの電力をかなり大胆に使うセッティングがなされていた。高速走行でもバッテリー残量が十分なときはモーターだけで走行し、足りなくなるとエンジンの発電で充電というサイクルを繰り返すあたり、意外にもはるかな兄貴分であるアコードハイブリッドのシリーズハイブリッドシステム「i-MMD」と似たフィーリングを持っていた。

最後に官能評価部分。パワートレインの騒音の少なさは、エンジンがかかっていない時間が長いこと、遮音材を多用していることなどから、ガソリンモデルを大幅にリードしている。一方でDCTの変速ショックは気になるほどではないものの、結構体感できるレベルで残っていた。DCTのトップランナーであるフォルクスワーゲンの新型『ゴルフ』がいつ変速したかわからないくらいに滑らかになったのと比べると、少し荒っぽい。

継ぎ目のない加速という点ではCVTと連続可変の動力分割機構を使うトヨタ『アクア』にも譲る。が、明確なシフト感、エンジンを使った時に車速とエンジン回転数が正比例の関係で連動する古典的な気持よさがあるのも確かで、このへんはユーザーのお好み次第というところだろう。

今回は運転時間37分というきわめて短い試乗であったため、わかったのはこのくらいであった。いずれ長距離試乗などで、様々な特性を検証し、お届けしたいと思う。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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