今年3月のリチウムイオン電池不具合発覚後、原因究明と対策に取り組んできたアウトランダーPHEVが8月に生産を再開した。といっても、トラブルの理由は電池セル検査時の過大な衝撃による内部の損傷であり、それ以外に問題はなかったので変更もない。
だからスタイリングやインテリアはそのまま。運転した印象も、発表直後の試乗会のときと同じだった。街中を走る分には、ほぼEVである。なにしろ満充電なら50km以上電気で走れるのだ。流れに乗って走る限り、エンジンの出番はない。
そんなシーンで実感するのは、三菱のEV経験の長さ。発進停止はなめらかで、速度を上げてもロードノイズは気にならない。パドル操作で回生ブレーキのレベルを6段階から選べるのもありがたい。突然PHVを作り始めたブランドとは、こういう部分で差が付きそうだ。
意図的に電力温存のセーブモードや充電のチャージモードを選んだり、高速道路に入ったりすればエンジンが始動するけれど、言われなければ気付かないほど、音や振動は抑えてある。2リッター4気筒という余裕のあるメカニズムを選んだおかげもあるだろう。
試乗しながら感じたのは、HVとは別の意味で、PHVにもいろんな種類があるんだということ。EVをルーツに持つクルマがある一方で、HVの発展型もあり、エンジンは発電に特化した小さな2気筒から、走りもこなす大きめの4気筒までさまざま。
何車種かに乗った経験から言えば、PHVはEVベースが理想的だと思う。そしてエンジンは、シティコミューターなら発電専用、長距離もこなす車種なら余裕のある選択が望ましい。そう考えるとアウトランダーPHEVはうまいところを突いている。これもEV経験の長さがなせる業かもしれない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性: ★★★★
パワーソース: ★★★★★
フットワーク: ★★★★
オススメ度: ★★★★
森口将之|モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト
1962年東京都生まれ。自動車専門誌の編集部を経て1993年に独立。雑誌、インターネット、ラジオなどで活動。ヨーロッパ車、なかでもフランス車を得意とし、カテゴリーではコンパクトカーや商用車など生活に根づいた車種を好む。趣味の乗り物である旧車の解説や試乗も多く担当する。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員。