【BYD シーライオン6】600km走ってわかった長距離クルーザーとしての素性と、浮かび上がった改善の余地

BYD シーライオン6
BYD シーライオン6全 16 枚

和歌山県・高野山で行われたBYDの電気バス『K8 2.0』の納車式を取材するにあたり、往復の足としてBYD『シーライオン6』を使った。往路は4WD、復路はFWDである。

【画像】BYD シーライオン6

シーライオン6には以前の試乗会で触れているが、4WDは今回が初めて。しかも試乗会レベルの短時間試乗と、雨あり渋滞あり山道ありの長距離実走とでは、見えてくるものがまるで違う。カタログや短時間試乗では見逃せても、ロングランでは誤魔化せない部分が必ず出る。象徴的だったのがUSBポートの位置。

フロントにはタイプAとタイプCがそれぞれ1ポートずつ備わるが、これがセンターコンソール下の奥まった場所にある。はっきり言って使いにくい。USBケーブルを差すのも、USBメモリーを抜き差しするのも、いちいち手探りでやるしかない。

USBポートが見えづらい場所にあるため、手探りで取り付ける人が多く、周囲が傷だらけだUSBポートが見えづらい場所にあるため、手探りで取り付ける人が多く、周囲が傷だらけだ

ワイヤレス充電やApple CarPlay、Android Autoを使う人なら看過できるかもしれないが、そうでない使い方では不満がきっちり残る。デザイン優先の手法は工業デザインとしてはいただけない。

一方でドライビングポジションは悪くない。ステアリングはチルト&テレスコ、運転席は8ウェイ電動調整で、姿勢はかなり正確に合わせ込める。シートは見た目にスポーティではないが、長距離で身体を預けると案外しっかりしている。派手さはないが、実用上はきちんと仕事をするタイプである。また、ラゲッジスペースも広く、多くの荷物を載せられる。

◆長距離クルーザーとしての素性のよさと、ACC制御の◯と×

BYD シーライオン6BYD シーライオン6

横浜を発ち、和歌山県紀の川へ向かう。試乗車は前日から使われていたため、出発時のSOCは93%。メーター表示の航続距離はガソリン分が818km、総航続距離が894kmで、数字のうえでは余裕がある。エアコンはオン、回生ブレーキは強、SOC設定は25%でスタートした。

SOC設定とはバッテリーをどこまで使うかという設定。25%がもっともバッテリーを使える設定で、SOC25%までに設定すると26%まではEV走行が可能、25%になるとハイブリッド走行に切り替わる。ただし、渋滞路などEV走行が圧倒的に有利となる場合は10%台までEV走行をすることもある。

往路はかなり強い雨に遭遇したが、高速域での安定性は高い。4WDであることも効いているのだろう。新東名の120km/h区間をACCで巡航しても落ち着きは崩れず、長距離クルーザーとしての素性のよさは感じられた。

BYD シーライオン6BYD シーライオン6

ただしACCの制御には若干不満もある。まず、先行車に追いついたときの減速開始が遅い。しかも初期制動が弱い。弱く、弱く、最後に少し強く、という帳尻合わせのような減速である。これでは安心感が薄い。もっと早めに減速へ入り、一定感のあるブレーキングをしたほうがはるかに自然である。さらに巡航中にも、速度を厳密に合わせようとしているのか、微妙な加減速を繰り返す場面があった。1km/hの差を神経質に追いかける必要はない。少し遊びを持たせた制御のほうが、乗員にとっては圧倒的に快適である。

レーンキープ機能はICC(インテリジェントクルーズコントロール)として独立したスイッチで作動する。ここは悪くない。むしろ好印象だったのは、ACCやICC使用中にウインカーを出しても勝手に追い越し加速を始めない点である。最近はドライバーより先回りしたがる制御が増えているが、あれは余計なお世話である。追い越しで加速するかどうかはドライバーが決めればいい。シーライオン6はその点、余計な気を回さず淡々と走る。こういうクルマのほうが結局は扱いやすい。

◆約600kmの走行で実燃費13.3km/リットル

充電するBYD シーライオン6充電するBYD シーライオン6

途中、伊勢湾岸道の刈谷PAで昼食と急速充電を兼ねて休憩した。PHEVなので充電は必須ではないが、運用実態の確認も含めての行動である。そこで残念な場面も見た。充電器に接続せず、ただ駐車だけして立ち去るEVがいたのだ。EV優先スペースとは、EVという車種のための駐車場ではない。充電という行為のためのスペースである。この基本すら共有されていない現実は、インフラ以前の問題である。

雨天時にはもうひとつ気になる症状が出た。窓の曇りである。前後デフロスターを全開にしても、解消には時間がかかった。これは快適性の問題であると同時に、安全性の問題でもある。のちに確認するとBYD車では比較的よく聞く話のようなので、解消に向けての努力を求めたい。

曇り除去性能はもう少し高性能であってほしい曇り除去性能はもう少し高性能であってほしい

渋滞時の印象は悪くない。低速域でもACCが使えるため疲労は少ないし、シリーズパラレルPHEVのメリットも出る。低速では実質的にシリーズ走行となるため、SOCが下がっていてもエンジンは発電に回り、駆動はモーター主体で滑らかである。17%までSOCが落ちた場面でも、走りそのものがガサつく感じはなかった。ここは電動車らしい美点である。

往路の総走行距離は前日分を含めて595km。給油量は34.7リットル、急速充電は1回でSOC42%分、電力量にすると約7.9kWhである。さらに前日スタート時の満充電分を加味すると、使用電力量は合計21.6kWhとなった。ここから逆算すると電費は約6.1km/kWh、電気で走った距離は約131.8km。残りをエンジン走行分として計算すると燃費は13.3km/リットルとなる。Dセグメント級クロスオーバーSUVとして極端に悪い数字ではない。だが、ガソリン車として見れば平凡であり、PHEVとして見てようやく納得できる水準である。言い換えれば、電動化の恩恵をうまく使ってこそ意味があるクルマということだ。

◆PHEVであるシーライオン6の本質

BYD シーライオン6BYD シーライオン6

2日目は高野山へ向かった。タフなワインディングロードが続いた。だが、モーターの駆動力には不満が出ない。登坂路でも力感は十分で、この点はさすがである。ただし、足もとには不満が残る。標準タイヤのグリップがもうひとつで、車体側のポテンシャルを受け止め切れていない。ワインディングではその甘さが隠せない。もっとしっかりしたタイヤを履けば、走りの印象は確実に引き締まる。現状ではクルマが悪いというより、タイヤがクルマに追いついていない。

復路はFWDに乗り換え、「できるだけ電気主体で走る」と決めて東京方面へ向かった。SOCが25%まで落ちたら次の充電ポイントで充電、基本は80km/h巡航というルールで進めたが、結論から言えば、この使い方は効率が悪い。走行距離507kmに対し、急速充電は6回、充電量は49.9kWh、ガソリン使用量は4.8リットル。数字だけ見れば電気をうまく使ったように映るが、問題はコストと時間である。

BYD シーライオン6BYD シーライオン6

高速道路上のビジター料金で計算すると、急速充電の電気代はかなり高くつく。宿泊地での普通充電分やガソリン代まで含めると、往路とほぼ変わらない水準になった。しかも急速充電は1回30分で、6回なら合計3時間を要する。つまり、PHEVで長距離移動中に律儀に急速充電を繰り返しても、安くもなければ速くもないのである。むしろ面倒が増えるだけだ。

だが、シーライオン6の本質はそこではない。日常ではEV的に使い、遠出ではエンジンを含めて一気に走る。これが正しい。長距離で充電器を渡り歩く使い方は間違いだ。クルマ自体は静かで、滑らかで、高速でも安定している。細かい部分では改善の余地があるが、全体としての印象はかなりいい。

BYD シーライオン6BYD シーライオン6

諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

《諸星陽一》

諸星陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

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