新旧『Sクラス』の3サイズは、全幅が30mm増えた以外はほぼ踏襲された。ホイールベースはロングボディで新旧同一の3165mm、全長(5250mm)はカタログ数値上、新型が10mm短いほど。クラスのリーダーらしい堅持ぶりだ。
なので、たとえ運転席に収まるのが初めてでもサッと走り出せるのは、ショーファーには嬉しいだろう。歴代のSを乗り継いできたオーナーにも、ノーズ先端にマスコットを眺めつつ、勝手知ったる…と、何の抵抗感もなく扱えるはず。ロングボディを運転させられているもどかしさもない。最小回転半径は先代W221よりさらに詰められた5.7mの小ささだ。初のフルLED化も実施(内外合わせておよそ500個)、ヘッドランプ始め、減光機能もあるテールランプ採用の外観スタイル自体は落ち着いた雰囲気を漂わす。
インテリアも“大筋”では先代の進化版の印象。ステアリングが2本スポークであること、丸型エアベントが採用されたこと、そしてナビ&表示部のみならずメーターも、大型液晶ディスプレイになったことなどが新しい。後席に各種パッケージオプション満載の試乗車は、そのすべてには言及できないほど。飛行機のビジネスクラスで用意されるそれのような風合いの別体の“枕”や、シートベルト部が約3倍に膨らむ「SRSベルトバック」などは、Sクラスらしいアイテムのひとつだ。
最大15m前方の路面を読みサスペンションを制御する「マジックボディコントロール」は、人工的に徹頭徹尾フラットに…というより、Sクラスらしい自然な振る舞いをもたらす、そんな印象。4.7リットルのV8ツインターボ(455ps/71.3kg・m)+7速ATもアクセル操作にあくまでも従順に、走行場面に相応しい性能をサラリと発揮してくれる。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。