『はやぶさ』採取した小惑星サンプルの成果 第1回シンポジウムで報告

宇宙 科学
はやぶさ採取サンプルのキュレーションを担当したJAXA 安部正真准教授
はやぶさ採取サンプルのキュレーションを担当したJAXA 安部正真准教授 全 5 枚 拡大写真

10月16日から18日まで、JAXA 相模原キャンパスにて第1回宇宙物質科学シンポジウム(HAYABUSA2013)が開催され、2010年6月に小惑星探査機『はやぶさ』が持ち帰った小惑星イトカワ表面物質を各国研究期間が分析した成果の報告が行われた。

JAXA 宇宙科学研究所太陽系科学研究系の藤本正樹教授によれば、シンポジウムには、11カ国の参加者から63件の講演が行われ、うち28件は海外の研究期間による。はやぶさの採取した小惑星表面物質のサンプルは、JAXAによって2011年まで「初期分析」が行われ、サンプルを1個ずつ分類し、番号をつけるなどカタログ化が行われた。2012年から開始された「はやぶさ」採取サンプル国際研究公募(国際AO)では、初期分析の結果を元に各国研究期間から研究テーマを募り、国内・国外合わせて全17件の研究を採択した。採択された研究には約1年間、はやぶさ採取サンプルが貸し出され分析が行われた。

17件の研究公募のうち、6件が分析を終え、1件はすでに論文として科学誌に受理されているものもある。宇宙物質科学シンポジウムでは、論文発表前のもの含めて国際研究公募の成果報告が行われた。研究テーマは多岐にわたるが、小惑星の表面が宇宙放射線や太陽風にさらされて起きる「宇宙風化」の現象について、これまで観測をもとに提唱されていた理論、モデルを実際の物質を分析することで確認を進められたといった成果が上がっている。小惑星の表面では、地球上でペンキを塗った板が日光にさらされて日焼けのように浮き上がるのと同じように、表面の物質が変化していくのだという。こうした現象が起きていることが確認できれば、「はやぶさ2」で予定されている、小惑星表面に穴をあけ、内部の”フレッシュ”な物質を採取するミッションへの期待も高まる。

JAXA 宇宙科学研究所太陽系科学研究系の安部正真准教授によれば、国際研究公募の成果が一通り得られたことで、新たな研究の枠組みへの提案も行われた。はやぶさ採取サンプルの中には、300マイクロメートル以上の大きなサイズのもの、表面に塩がついており、何らかの液体の痕跡をとどめていると考えられるものといった貴重なサンプルもあり、まだ公募研究への分配は行われていない。今後は、コンソーシアムをつくって、JAXAを中心にこうしたサンプルの詳細なカタログ作成を進め、研究者へ提供していくとしている。

《秋山 文野》

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