【池原照雄の単眼複眼】ASIMOの視覚や知能を生かすホンダの自動運転車

自動車 テクノロジー 安全
ホンダ 協調型自動運転車
ホンダ 協調型自動運転車 全 6 枚 拡大写真
◆「他社に遅れずに」と山本研究所社長

ホンダは先週の「ITS国際会議東京2013」で自動運転技術を初めて一般向けにデモ公開した。市街地での走行を想定した「協調型自動運転」の車両には、2足歩行ロボット「ASIMO」の視覚センサーや人工知能技術が生かされていた。ホンダは1980年代半ばから自動運転技術の研究に取り組んでおり、ロボットなど独自の蓄積をもとに内外メーカーとの競争に挑んでいく。

自動運転技術の要素を搭載した車両の市販化について、本田技術研究所の山本芳春社長は「現時点で何年モデルからというのは控えるが、他社より遅れて出すことはない」と述べ、2010年代のうちには、何らかの搭載車を投入する意向を示した。早期の実用化が想定される技術については「(車両だけが走る)高速道路は導入しやすく、前車を追随走行する技術などは早期に実現できるだろう」と指摘、自動車専用道でのクルーズコントロール応用技術などが最初に実用化されると見通す。

トヨタ自動車がITS会議期間中に、首都高速でデモ走行した車車間通信機能付きの高度運転支援システム「AHDA(オートメーテッド・ハイウェイ・ドライビング・アシスト)」のような分野である。より現実的な自動運転技術として、行政側もこうした車両が実走行できるよう法令などの環境整備に動く構えだ。

◆グーグルカーが刺激となって2年前に異動

ホンダは現時点では、米グーグルやトヨタが米国で公道実験を行っている「完全自律型」の車両はもっていない。今回のITS会議で公開した、クルマがバイクあるいは歩行者などと通信して車外の状況を認知する「協調型自動運転」から入っている。「システムやコストを小さくできるなど、自律型にない利点がある」(山本社長)とし、普及に向けてのステップはこちらの方が早いという事情もある。

もっとも、グーグルによる自動運転車開発は、ホンダにも大きな刺激となった。2年ほど前にはASIMO開発を経験した研究員を自動運転チームに異動させている。山本社長は人員規模などは明らかにしていないが、話しぶりからだと10人は下らないとの感触だ。

そのうちの一人で、2002年に発表した知能化機能をもたせたASIMOの開発に従事したのが坂上義秋上席研究員。1999年から06年にかけてロボットを担当していたが、実は1980年代半ばからは自動運転におけるレーンキーピングなどの認識関連技術にも従事したことがあるというベテランだ。

◆中核分野の未来を担うASIMO軍団

坂上氏は、「自動運転車はロボットカーでもある」として、ASIMOで培った視覚センサーや人工知能技術は「ホンダのアドバンテージになる」と言う。今回公開した協調型自動運転車の前方カメラには、その技術を応用しており、たとえば横断歩道の端に立っている歩行者の向きなどから、これから歩道に入ろうとしているのか否かを判断しているという。

もっとも「ロボットの人工知能をそのまま人間の行動に置き換えると違和感が出るので、そこは微修正しながら進める必要がある」(坂上氏)そうだ。ASIMOの要素技術は、産業技術総合研究所と共同開発して東京電力福島第1原発で稼働中の「高所調査用ロボット」や、パーソナルモビリティの「UNI-CAB」さらに歩行アシスト装置などに応用されている。ASIMO軍団は自動運転技術というホンダの中核事業分野にも活躍の場を広げてきている。

《池原照雄》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 「本当に世に出るとは」車重わずか1トンで800馬力V12、「超アナログ」スーパーカー…新型車記事ランキング 8月
  2. さらなる人馬一体へ!NDロードスター用「リビルトエンジン」発売、価格は65万7800円
  3. マツダの新型SUV『EZ-60』すでに4万台の予約殺到! SNSでは「マツダ復権か??」「日本でも売るべき」など話題に
  4. ホンダ『フリード』がニューレトロに!? ダムドが専用ボディキットのデザインを先行公開 発売は2025年冬
  5. メルセデスベンツ『Gクラス』、オープン「カブリオレ」復活へ
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「AIディファインド」の衝撃、日本の自動車産業は新たな波に飲み込まれるのか…アクセンチュア シニア・マネジャー 藤本雄一郎氏[インタビュー]
  2. EV充電インフラ-停滞する世界と“異常値”を示す日本…富士経済 山田賢司氏[インタビュー]
  3. ステランティスの水素事業撤退、シンビオに深刻な影響…フォルヴィアとミシュランが懸念表明
  4. SUBARUの次世代アイサイト、画像認識技術と最新AI技術融合へ…開発にHPEサーバー導入
  5. 「ハンズオフ」は本当に必要なのか? 高速での手離し運転を実現したホンダ『アコード』を試乗して感じた「意識の変化」
ランキングをもっと見る