【ダイハツ タント 試乗】 元祖スーパースペースの逆襲…青山尚暉

試乗記 国産車
ダイハツタント
ダイハツタント 全 11 枚 拡大写真

「やられたらやり返す!」自動車業界で半沢直樹を地で行くのがダイハツ『タント』だ。

【画像全11枚】

そもそも今や軽自動車の主流をなすスーパーハイト系モデルの先鞭(せんべん)をつけたのが初代タント。2代目では助手席側Bピラーレスのミラクルオープンドアとクラス最大のミニミニバンと呼べる広大な室内空間を売りにし、一躍ママズカーの頂点へと登り詰めた。

しかしホンダ『N BOX』の登場で事態は一変。迫力満点の顔つきや『フィット』譲りのセンタータンクレイアウトがもたらす魔法のパッケージで、軽自動車全体のNo.1の座をキープ。タントのお株を完全に奪ってしまったのだ(N BOXは13年1-9月の軽自動車販売台数1位。モデル末期のタントは6位に甘んずる)。

それをダイハツがただ眺めているはずもない。3代目となる新型タントはまさに「やられたらやり返す!」の新型だ。完成されたパッケージには大きく手が入っていないものの、最新『ムーブ』のプラットフォームを用い、ついに運転席側リヤスライドドアを新設。狭い駐車スペースで子供を抱き抱えて降ろすときや、後席に置いたコートを出す際、クルマを半周して助手席側スライドドアへ回り込む必要がなくなった。

そしてボンネット、フロントフェンダーなどの樹脂化による軽量化、『ミラ』並みの空力性能の実現によって最高28.0km/リットルの燃費性能を実現。ターボ車を含む全車免税というライバル車戦々恐々間違いなしの環境性能さえ手に入れたのである(N BOXは最高24.2km/リットル)。

さらに助手席スライド量を前方に10cm増やし乗降間口を拡大。助手席側スライドドアから乗降する際に便利な助手席肩のアシストグリップ、運転席からでも外からでも操作可能な助手席アレンジも新装備。実用度はもはやクラス最上級である。

パッケージ、室内の広さは先代とほぼ同じ(Aピラーを立てたことで前席の頭上前方向のゆとりは増している)。後席ひざ回り空間は身長172cmの運転手基準で約35.5cmと依然、あきれるほど広々。後席の格納用ヒンジをフロアからシート側に移したことで後席足元がすっきりしたのも進化のポイントだ。

そうしたバージョンアップを果たしながら、価格は先代比最大5万円安というクラスの基準価格を一気に引き下げる作戦に。スマートアシスト装着車(SA)をメーングレードに据え、その価格分を値下げしたとも言えるのだ。

とはいえ、個人的にもっとも「やり返して」ほしかったのは走り。先代タントのNAモデルはフロントスタビライザーレスで足回りが柔らかすぎて、カーブや曲がりくねった道でのロールが大きめだった。その点、スタビライザーを装着したN BOX、『スペーシア』はロールが少なめでより安心・安定した走りを実現していたのだ。

新型では標準車のLグレードを除く全FF車にいきなり前後スタビライザーを追加。ただしそれは操縦安定性向上が目的というより、「乗り心地をさらによくするため、サスペンションのスプリングを柔らかくしたかったから」とのこと。ゆえに標準車の場合、ロールはそれなり。しかし乗り心地はよりしっかり快適に。静粛性もクラストップレベルに進化していた。

もっとも驚かされたのはカスタムターボの走りだ。走り始めた瞬間に感動できるパワステのスムーズさ、乗り心地の上質さはほとんどよくできたコンパクトカー並み。段差越えでのダンパーのスムーズな動きに至っては下手なコンパクトカーを凌ぐほど。もちろんエンジンはスムーズでトルキー。リミットまで回しても実に静かなのだから、ロングドライブもまったく苦にならない。一家に一台のファーストカーになりうる実力の持ち主というわけだ。

お薦めは安全装備、スマートアシスト搭載のSAグレード。先代とくらべた場合、その価格分が吸収されているのだから選ばない手はない。欲を言えば、カスタムより廉価な価格設定となる標準車のターボモデルがあるとさらにうれしい。

タントは大型犬を乗せるのにも適している。乗降はスライドドア、バックドア側のどちらからでもOK。乗せ場所は後席、拡大した荷室など自在で、例えば後席足元のフラットフロアは幅約116cm、奥行き約40cm。後席がかなり後ろ寄りにセットされているN BOXにはかなわないものの、スペーシアよりは広く大型犬でもゆったりできるから愛犬家向けだ(フロアに敷くクッションは必要です)。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
ペットフレンドリー度:★★★★★

青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車雑誌編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に執筆。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組、イベントも手がける。現在、ドッグライフプロデューサーとしての活動も広げている。

《青山尚暉》

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