ASNARO/ひさき/ASTRO-H…3衛星を繋ぐNECのインターフェイス技術とは

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NEXTAR 300Lを採用したASNARO衛星の模型。地球観測衛星では、光学センサーを搭載したASNARO-1(左)が2014年打ち上げ予定。同じ型の衛星バスに合成開口レーダー(右)を搭載すれば、種類の違う地球観測衛星が短期間で開発できる。
NEXTAR 300Lを採用したASNARO衛星の模型。地球観測衛星では、光学センサーを搭載したASNARO-1(左)が2014年打ち上げ予定。同じ型の衛星バスに合成開口レーダー(右)を搭載すれば、種類の違う地球観測衛星が短期間で開発できる。 全 2 枚 拡大写真

2013年11月1日 JAXA平成25年度「宇宙航空品質保証シンポジウム」では、NECから『ASNARO』『ひさき(SPRINT-A)』『ASTRO-H』3衛星に共通するインターフェイス技術「Space Wire」が紹介された。。

シンポジウムでは、NECから宇宙システム事業部 小川俊明氏が登壇。世界標準の衛星インターフェイス技術Space Wire技術を採用した3衛星の開発と試験の標準化過程について解説した。

SpaceWire技術を導入した衛星は、衛星にいくつか搭載する計算機とそれを繋ぐネットワークを共通の部品で構成することができる。衛星ごとの新規の開発要素を減らすことで、低コストかつ短い期間で人工衛星を開発することができるようになる。NECは、2014年初頭に打ち上げが見込まれる経済産業省が主導する小型地球観測衛星ASNARO-1と、イプシロンロケット試験機で打ち上げられたJAXAの惑星分光観測衛星「ひさき(SPRINT-A)」の双方にこのSpaceWireを導入。今後打ち上げられるASNARO-2、2015年打ち上げ予定のJAXA X線天文衛星ASTRO-Hにも同じ技術を採用している。

ASNAROプロジェクトマネージャを務める小川氏によれば、ASNARO、SPRINT-A、ASTRO-H3衛星のSpaceWire関連部分は並行して開発が行われたという。その中でもASNAROはやや先行しており、ASNAROをベースにSpaceWireの新規開発を行った形となった。

1機の衛星をカスタム開発する場合は、そのために特化した仕様にできるが、ASNAROの場合は「ぐっとこらえて」後に続く人工衛星に共通する要素をあらかじめ洗い出し、標準化できるような開発を行っているという。たとえば、衛星から送られてくるその健康状態を示すデータは、地上で数値データとデータベースを突き合わせてその意味を判断する。

このデータベースは、カスタム開発の衛星の場合は開発後期に行われるのが通常だという。しかしASNAROの場合、SpaceWire計算機がこの処理を担うため、初期の段階でデータベースの時間をかけて作り込みを行ったとのことだ。また、機器の試験装置や手順なども標準化できるようにした。

ASNARO衛星の開発には時間が必要となり、実際の打ち上げはSPRIT-Aが先行したこととなった。正式な打ち上げ日時は発表されていないが、2014年初頭、2月ごろの打ち上げが予想されている。

ASNARO-1とASNARO-2には、SpaceWireだけではなく衛星プラットフォームも共通している。地球低軌道(LEO)用の300キログラム級衛星バス「NEXTAR 300L」(打ち上げ時重量0.5トン級)を採用しているのだ。衛星本体や電源などを共通化し、衛星の主目的を担うミッション部分を光学センサー、レーダーセンサーなどに変更することで迅速な衛星の開発を行うものだ。SPRITN-Aにも共通部分のある衛星バスを採用している。こうした軽量、低コスト、短納期で信頼性のある衛星開発を行うことで、海外からの衛星受注に向けた体制が整うことになる。

講演では、NEXTAR 300Lに続くNEXTARシリーズの展望も紹介された。地球観測衛星の市場では、2012年に打ち上げられたJAXAの水循環観測衛星『しずく(GCOM-W1)』をベースに中型衛星バス「NEXTAR 1500L」(打ち上げ時重量2トン級)を予定。また、通信・放送衛星市場向けには2008年に打ち上げられた『きずな(WINDS)』をベースにした静止軌道用標準バス「NEXTAR G」(打ち上げ重量1.5~3トン級)の構想があるという。NECは、人工衛星の生産を行う新工場を同社・府中事業場に新設し2014年に稼働を予定している。今後は、人工衛星バスのシリーズを拡充し、輸出の拡大も目標とした開発を行っていくことになる。

《秋山 文野》

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