レクサスは、東京ビッグサイトにて11月20日から12月1日まで開催される「第43回 東京モーターショー 2013」で、レクサスブランド初となるプレミアムスポーツクーペ『RC』を世界初公開する。
市販化が期待される一台として、出展ラインナップの中でも大きな注目を集めているRC。走りの魅力を、チーフエンジニアの古山淳一氏に聞いた。
期待はずれの走りにだけはしたくなかった
----:久々のクーペモデルですから、走りにも期待が集まりますが
古山:実際に乗ってみた際に「なんだこれは?」とならないよう、スタイリングからイメージされるパフォーマンスを実際に味わえるようにしました。開発コンセプトは「Impassioned(情熱的)&Captivating(魅惑的)」。乗った人を情熱的にさせるエモーショナルな走りを提供することですね。これまでレクサスとしては、『LF-LC』や『LF-CC』といったクーペのコンセプトを出してきましたが、それらの要素を取り入れながらつくりました。今は買えなくても、いつかきっと乗ってやる、と憧れてもらえるようなクルマにしたかったのです。
----:具体的にこだわった部分は
古山:まずは、走りを支えるボディ剛性を飛躍的にレベルアップさせている点です。レクサスでは新型『GS』以降、積極的にボディ剛性の向上に努めてきました。RCでは、『IS』でも導入した接着技術、レーザー溶接技術を駆使してボディ剛性を高めたことで、キビキビとした走りと高級感溢れるシルキーな乗り心地の両立を果たしています。
----:ISの走りも相当にスポーティですが、どう違いますか
古山:ISは絶対的な性能というより、意のままに操れるクルマであることを目的としました。RCもその延長線上と考えています。ただしホイールベースはISよりも短い。ドライバーのアクションに正確に反応する、それがISだとすれば、RCはちょっとその先をいって、ステアリングを切った時のクルマの向きの変わり方をISよりもう少しだけ速くしてやる。そういう部分で、お客様の期待を少しだけ上回ると、“このクルマはやるな”、と思っていただける。そういうところを目指しました。
----:実現しようと思うと、ISではなくGSのトレッドが必要ということなのですね
古山:そうです。キャビンそのものがコンパクトで、四隅にでかいタイヤがグッと踏ん張っている。性能的にもタイヤのキャパシティがあるので、コーナリングでクルマの向きの変わり方をISより少しアグレッシブにでき、さすがクーペだな、ということになると思うのです。
また、VSCも考え方を少し変えています。もちろん安全第一ですからVSCの介入はある。そのタイミングと量ですよね。ドライバーが意図せずコントロールを失いそうになったときに、それを助けるのがVSCですが、RCは少しだけ、その領域を踏み出すというか、介入を遅らせるなり、あるいは、遅らせないけどその量を減らしてもいいのではないかな、と。今までFモデルではそういうことをやっているのですが、それに近いことをやろうかと議論してきました。ドライブモードをいくつかもっていますので、スポーツプラスのときにはそういう自由度をもたせてもいい。クーペだから、一歩領域の外にでてもいいのではないかなと思っています。
「アメージング イン モーション」の体現
----:ガソリンエンジンは3.5リットルV6ですが
古山:世の中の主流が4気筒ターボになっている中で、3.5リットルV6というのは確かに大きいと思いますが、V6ならではの滑らかさというか、力強さを楽しめるものがあってもいいのではないかと。まあ、そのうち消えていく運命にあるのかもしれませんが、今のうちですよ、こんな美味しいエンジンに乗れるのは!…という思いですね。
----:ハイブリッドの方は2.5リットルですが、3.5リットルにしなかった理由は
古山:もちろん、その選択肢もなくはなかったんですが、そうすると、ラゲッジの荷室スペースがほとんどとれない。ラゲッジを開けたら目の前が電池となってしまう。2.5リットルならバッテリーも小ぶりなのでラゲッジスペースもとれますし、リアシートを倒すことができます。また、もし将来的にコンバーチブルをつくるのだったら、幌をしまうスペースも確保できます。そういうところまで一応考えています。
----:今回は若年層をターゲットとしているそうですが、走りを訴求するのが難しい対象だと思います。そういった部分はどうお考えですか
古山:確かに、走りの素晴らしさを言葉で伝えるのはとても難しくて、いつも悩んでいるのです。だから、まず乗ってくださいと言っています。ただ、モーターショーで実際に乗ってもらうわけにはいかないので、「アメージング イン モーション」という言葉で表現しているわけです。ドライバーが予測していた以上の動きをクルマがしてくれる。そこに驚きと感動がある。感覚的な言い方になってしまいますが、そういう部分がこのクルマの狙っているところなので、だから期待してくださいと。お店に行って試乗したとき、走りだした瞬間からRCの楽しさをわかっていただけると思います。