【インタビュー】BMW i3、“3”の数字に込められた意味…プロダクトマネージャー

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BMW i3 プロダクトマネージャーハインリッヒ・シュバックヒュファー氏 (東京モーターショー2013)
BMW i3 プロダクトマネージャーハインリッヒ・シュバックヒュファー氏 (東京モーターショー2013) 全 18 枚 拡大写真

先頃、『i8』とともに日本国内でも発表されたBMWの都市型EV、『i3』。強力なモーターに高密度バッテリー、そしてバッテリーカーボンファイバー採用による軽量化と、コンパクトなシティコミューターでありながら同社の技術の粋が注ぎ込まれている。

同車はどのような商品企画の元で生まれ、そしてこの量産EVをどのような戦略を持って販売していく青写真を描いているのだろうか。i3のプロダクトマネージャーを務めるハインリッヒ・シュバックヒュファー(Heinrich Schwackhofer)氏に聞いた。

BMWで初めて持続可能性を完璧に有するクルマ

----:今回i3の日本市場への導入や販売価格が発表され、日本でも多くの方が発売を楽しみにいます。また本国ではすでにデリバリーが始まり、受注も好調と聞いています。人気の要因はどこにあるとお考えですか。

シュバックヒュファー:i3が市場導入前から注目されていると聞いて、とても嬉しく思っています。実は欧州では正式な発売前に約9000件の予約注文をいただきました。人気の理由については、BMWが約束する「駆けぬける歓び」、つまりドライビングプレジャーがしっかり実現されていることが第一の要因だと思います。

もう一つの理由は、i3がまったく新しいEV(電気自動車)であり、BMWにとって初めて持続可能性を完璧に有するクルマだからでしょう。それは例えば、素材の選択や、風力発電を活用した生産体制といったことも含みます。排出ゼロを追求した環境で、排出ゼロのクルマを生産することが、真に都市型のドライビングを実現すると理解していただいている点も、人気の秘密だと思います。また、そういったコンセプトやBMWであることが、ひと目見て分かるクルマになっていることも、要因の一つでしょう。

----:工場の生産能力はどの程度あるのでしょうか。また、日本での販売目標台数は。

シュバックヒュファー:販売目標や生産台数に関して、具体的な数字は発表していませんが、一つ言えるのは、i3の生産体制が非常にフレキシブルで、生産能力をお客様のニーズに合わせて調整できるという点です。そして私たちは、今回参入するEモビリティ市場が将来、モビリティ市場全体の中で極めて重要な部分を占めると信じ、その分野において重要なプレーヤーになることを目標にしています。決してニッチ市場を狙っているのではなく、極めて真剣にこのEモビリティに取り組んでいるのです。

実証実験からパッケージングを決定

----:i3はBMWのモデルレンジで最も小型ですが、このサイズやパッケージングはどのように決定されたのでしょうか。

シュバックヒュファー:まず私たちは、世界で都市化、資源の枯渇、燃料コストの上昇といったことが起きている中、従来型のクルマに代わる「都市型の小型車」が求められていると考えて、開発目標を決めました

また、我々は開発を進める上で、欧州や米国、日本において『MINI E』や『アクティブE』(1シリーズベースのEV)で、延べ3000万km以上に及ぶ実証実験を行ない、お客様のクルマの使い方や行動パターンを理解するなど、多くの経験を積みました。例えば、都市部のお客様が一日にクルマで走る平均距離は50km以下で、また日本の場合はもっと少なく、約25kmから30kmだと分かりました。なのでEVの航続距離は、100~150kmで十分だろうという判断に至りました。

もう一つのキーが、車体自体の軽量化です。車体構造そのものが軽量なら、航続距離は伸びるし、BMWが保証する「駆けぬける歓び」も実現できるからです。そのためにはCFRP(カーボンファイバー強化樹脂)製ボディが必要だという結論が出ました。バッテリーの重量が多少嵩んでも、CFRPで重量増を相殺し、最終的には軽量なクルマが出来上がるという計算がありました。

また、実証実験で、やはり都市型のクルマは小型であるべきという結論が出ましたが、同時に少なくとも4名と荷物が載らなくてはいけないことも分かりました。つまりボディを極端に小さくは出来ないということです。

レンジ・エクステンダーに2気筒エンジンを採用

----:i3にオプションでレンジ・エクステンダー(航続距離を伸ばすための発電用エンジン)を用意した理由は。

シュバックヒュファー:まず、我々にとって重要だったのは、i3がEVでなくてはいけない、ということでした。つまり決してプラグイン・ハイブリッド車ではなく、電気自動車だということです。

それでもレンジ・エクステンダーをオプションとして用意したのは、お客様の要望にお応えするためです。環境に優しいクルマに乗りたいお客様でも、時にはクルマで遠出したい時がある。そんな場合に、やはり電気だけでは不安だという気持ちに応えるため、小型の発電用エンジンを用意したのです。

この発電用エンジンは、毎日それを使って走るためのものではありませんが、エンジンで発電した電気だけでも100~150kmほど走行可能です。これはバッテリーの電力だけで走れる距離と同程度です。燃料タンクは9リットルと小さいので、一般的なエンジン車であればスペアタンクを持っている感覚に近いと思います。

発電用エンジンには、BMWの大型スクーター(C650)に搭載されている2気筒の650ccエンジンを選び、i3に最適化して車体後部に搭載しています。もちろんエンジンの静粛性や滑らかな始動、補機類や排気系の搭載位置といった課題はありましたが、技術的にはそれほど困難なことではありませんでした。

----:BMWと言えば、前後重量配分へのこだわりがよく知られていますが、i3の場合は。

シュバックヒュファー:前後重量配分は具体的には発表していませんが、50:50に等しいところにあります。一番重いのはバッテリーで250kgあり、これが車体の中央にあります。レンジ・エクステンダーの場合は、燃料タンクや排気システムを含めて100kgほどの重量増になり、0-100km/h加速で0.5秒のロスになりますが、それによってドライビングのダイナミックさが失われることはありません。また、レンジ・エクステンダーの場合でも、エンジンをリアに、一部の補機類をフロントに搭載することで、50:50に近い前後重量配分を実現しています。

室内空間では3シリーズに匹敵

----:i3のネーミングについて、BMWでは最もコンパクトなモデルなのに、なぜ1や2ではなく「3」となったのですか。

シュバックヒュファー:確かにi3は、1シリーズよりコンパクトですが、同時にかなりプレミアムなクルマでもあります。また、都市型のクルマとしての魅力を考えれば、5シリーズに匹敵するとも言えますし、車内空間の点では3シリーズに匹敵するものがあります。

このように一つ一つの側面を考えれば、i3は様々なクラスの要素を持っていますが、室内空間という点に注目すれば、やはり「3」と呼ぶのがふさわしいだろうと考えました。また、将来的な取り組みを考えた場合、ひょっとすると、もっとコンパクトなシティカーを開発するかもしれません。であれば、それは1や2ということになるでしょう。

《聞き手:宮崎壮人 まとめ:丹羽圭@DAYS》

《丹羽圭@DAYS》

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