『MRワゴン』はモデルをごとにコンセプトを変えるという変わった遍歴をたどってきた。
2011年にデビューした現行の3代目は、当初モノセックス感覚のデザインを採用していたが、余り受け入れられなかったため、モデルの途中でデザインの方向性を変えた「ウィット」が追加された。
新デザインによって軽自動車としての質感を高めると同時に、それなりに存在感のある外観に仕上げている。最初からこのデザインにしていたら、売れ行きも違ったのではないか。内装については外観ほどの変更は行われていない。
パワートレーンは最新の仕様が用意され、改良が加えられたR06A型エンジン+副変速機付きCVTにスズキのグリーンテクノロジーを盛り込むことで、ワゴンRと同じクラス最高の30.0km/リットル(自然吸気エンジン搭載の2WD車)の低燃費を実現した。
『ワゴンR』の低燃費は話題になったが、その陰に隠れてMRワゴンやMRワゴンウィットもしっかり低燃費を実現していたのだ。
同じエンジンとCVTを搭載するので、走りはワゴンRと変わらない。低燃費車の割にはまずまず良く走る。発進時のわずかな時間だけメーターが青くなって燃費が良くない状態を示すが、走り出した後、流れに乗って定速走行に入ると、すぐにメーターが緑色に変わって燃費の良い走りをするようになる。
アクセルを強く踏み込んだときの反応は、ラフなアクセル操作をキャンセルするようにしているためか、やや鈍さを感じさせるシーンもあったが、燃費を考えたらそんなにアクセル操作はしない方が良い。
振動や騒音は普通の軽自動車の感覚で特に静かではないが、取り立てて騒音レベルを指摘するほどでもない。また足回りについてはやや柔らかめながら、フロントにスタビライザーが装着されていることで、安定感もまずまずのレベルにある。
ワゴンRは余りにもたくさん走っているので、少し違うクルマが欲しいという人にとって、MRワゴンウィットは有力な選択肢になると思う。
やや残念なのは、ワゴンRには衝突回避・軽減ブレーキのレーダーブレーキサポートの搭載車が設定されているのに、MRワゴンウィットにはそれが間に合わず搭載されていないこと。早期設定を望みたい。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。