新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、日立製作所などは、ハワイ州マウイ島で、EV(電気自動車)を活用したスマートグリッド実証事業の実証サイトが12月17日(現地時間)に、運転を開始したと発表した。
実証事業は、日米の政府間合意に基づいて実施されるもので、再生可能エネルギーの効率的な利用や、同エネルギー特有の急激な需給変動への対応に、EVなどを活用する、島しょ域スマートグリッド技術の検証を行うことが目的。NEDO、日立のほか、みずほ銀行、サイバーディフェンス研究所も共同で取り組んでいる。
実証サイトは、2013年12月17日から2015年3月末までの稼働を予定しており、その分析・評価結果を基に、低炭素社会を実現するシステムである島しょ域スマートグリッドとしてビジネスモデルを構築し、マウイ島と同様の環境をもつ島しょ域、亜熱帯地域を対象に展開する。
ハワイ州マウイ島では、2012年時点で再生可能エネルギーの導入比率が21%で、今後、ハワイ州全体では、2030年までに電力需要の40%以上を再生可能エネルギーとする計画。再生可能エネルギーの利用に伴って生じる課題を解決するため、NEDOは2011年から、「ハワイ州マウイ島におけるスマートグリッド実証事業」を開始した。
日立は、実証事業の責任者として全体を取りまとめ、みずほ銀行、サイバーディフェンス研究所に加え、ハワイ州、マウイ郡、ハワイ電力、ハワイ大学、米国国立研究所などと共同で、実証サイトの構築を進めてきた。
今回の実証事業では、EVを活用した島しょ域スマートグリッドを実現するため、EVエネルギーコントロールセンターを設置するとともに、マウイ島キヘイ地区の配電系統を制御するシステムや、電力系統の需給バランスを制御して再生可能エネルギーの効率的な運用を支援するエネルギーマネジメントシステムを設置した。
また、再生可能エネルギーの変動影響を緩和するため、需要家側の機器を直接制御するダイレクトロードコントロールを実施する。
実証に参加するマウイ島のEVユーザーや、キヘイ地区で、自宅に設置している電気温水器の制御実験を行う一般需要家などのボランティアを募集してきた。
また、EV用急速充電ステーションの設置や実証サイト全体のシステム安全性を実現するため、米国でサイバーセキュリティ基準への適合を進めてきた。現在、ボランティアは、EVユーザー向けが約150台、需要家としては40軒程度の関心を集めている。
今後も実証の推進に向け、ボランティア登録を進め、EVユーザーのボランティアを200台、需要家ボランティアを40軒にする予定。また、EV用急速充電ステーションは、現在5拠点に20台の充電スタンドを設置しているが、将来的には20拠点まで拡大する。
実証サイトでは、マウイ島に設置されている総出力7.2万kWの風力発電システムと電力系統を使って、ITを活用しながら、配電系統や需要家側負荷の制御、複数タイプの急速充電器を含めたEVの運用・充電制御システムなどの実証を行う。
実証サイトの運転は、2015年3月までの予定で、実証試験の分析・評価結果を基に、今後、ビジネスモデルの検討、議論を進める。