【中田徹の沸騰アジア】2014年展望、政治と政策が動く1年に

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バンコク反政府デモのようす
バンコク反政府デモのようす 全 4 枚 拡大写真

2013年も残りわずか。アジアの自動車市場を見渡すと、タイの好況に沸いた2012年から雰囲気がやや変わり、景気停滞や市場減速に直面する国がいくつかみられる。インドや東南アジアにおいては経済情勢の不透明感がさらに濃くなる可能性があり、2014年の自動車販売に大きな伸びを期待しづらい。また、アジア自動車産業をめぐっては、政治と政策が動く1年になりそうだ。

選挙イヤー

タクシン元首相の恩赦法案を巡って反政府デモが激化しているタイ。インラック首相が下院解散を決めたため、2014年2月2日に総選挙が行われることになった。タイの政情不安は、表面的にはタクシン派(赤シャツ)vs反タクシン派(黄シャツ)の対立となっているが、実質的には富裕層・中間層(主に都市部)vs低所得層(主に農村部)の対立構造となっており、容易に解決する問題ではない。五里霧中の政治情勢を背景に、自動車市場の先行きが憂慮される。

インドネシアでは、2014年4月に総選挙が、7月に大統領選挙が行われる予定だ。群島国家のインドネシアでは、多様な民族を統一することが政治の重要な役割・目的とされている一方、経済政策の巧みさに乏しい。現ユドノヨ大統領も、就任当初は金利政策の失敗などで経済を混乱させた。次期大統領の最有力候補が現ジャカルタ州知事のジョコ・ウィドド氏である。改革派のジョコ氏には汚職撲滅や行政システムの透明化などで実績があるが、経済政策の手腕は未知数だ。高度成長時代へ誘導できるか注目される。

インフレ対策を主眼に高金利政策を採用しているインドでは景気悪化が深刻だ。汚職問題などを背景に経済成長に必要なインフラ整備が進んでいないことも足かせである。経済再建が急務のなか、2014年5月に連邦下院の総選挙が行われる。野党BJP(インド人民党)が、最大与党のINC(国民会議派)に取って代われるかが焦点である。優勢とみられるBJPが勝利した場合、タタやマルチスズキを含む複数の自動車メーカーの工場誘致に成功したことで知られるグジャラート州のモディ首相が連邦政府の首相に就く可能性が高い。モディ政権が生まれれば、経済改革が進むと期待され、自動車産業にもプラス効果が期待される。

生き残りをかけた戦略

2014年にマレーシア、フィリピン、ベトナム、パキスタンが新たな自動車産業政策を発表する予定。これらの国をめぐる環境は様々だが、それぞれの国の自動車産業が生き残りをかけた岐路に立たされている点では共通している。具体的な成長戦略あるいは現状打開策を示せるのか注目だ。

1月半ばに国家自動車政策(NAP)の改定を予定しているマレーシア。EEVとよぶ低燃費車のハブ拠点化が軸となる見通しで、環境先進国への成長を図る。この部分は従来路線を強化する形になるが、一方で国民車メーカー、プロトンに対する優遇政策の見直しが盛り込まれれば、大きな方向転換につながる可能性がある。

ASEAN域内製の自動車に対する輸入関税が既に撤廃されているフィリピンと、2018年に撤廃される予定のベトナム。それぞれ1億人弱の人口を持つ有望なマーケットだが、内需育成が進んでいないため自動車メーカーが現地工場を維持できるのか危ぶまれている。2022年に年産50万台超を目標としているフィリピンの場合、目標達成のための具体的な方策を提示できるかが焦点である。ベトナムについては、国民車構想が目玉になる模様だが、特別消費税減税により内需喚起を図れるかが鍵になる。

パキスタンでは、2012年に終了した自動車産業政策AIDPの後継政策が待たれている。財政赤字やインフレ圧力に加えて、通貨切り下げ観測が絶えないなか、自動車市場の低迷が続いており、一貫性と実現性の伴った現状打開策の導入が期待されている。当初は2013年中にAIDP-2が発表されるとみられていたが、ステークホルダー間の調整が難航しており、2014年にずれ込む状況となっている。

《中田徹》

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