【インタビュー】“スパークプラグのフラッグシップ”、NGK プレミアムRX、その低燃費性、加速性、長寿命の秘密を探る

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プレミアムRX。外側電極から突き出たチップの加工精度は驚くべきレベルだ。
プレミアムRX。外側電極から突き出たチップの加工精度は驚くべきレベルだ。 全 6 枚 拡大写真

スパークプラグメーカーとして世界シェアナンバーワンを誇るNGK。そのフラッグシップモデルとして2011年に登場したのが「プレミアムRX」だ。高性能プラグといえばイリジウムなどの貴金属を使用したプラグがすでに一般化しているが、それを上回る性能を実現できた秘密とはなにか、NGK自動車関連事業本部の佐伯健太氏に聞いた。

◆最強のフラッグシップを目指して開発

車に多少なりとも関心のある人なら、高性能プラグといえばイリジウムというのはもはや常識だろう。融点が極めて高い貴金属を電極に使用することで、画期的な長寿命、着火性などを実現したプラグだ。NGKでは2000年に「イリジウムMAX」、さらに2002年には「イリジウムIX」といった製品を市場に投入し、大きな支持を得た。

その後、イリジウムプラグはその性能の高さが認められて様々な自動車メーカーで新車装着プラグとして採用され、おどろくべきことに、現在では約8割もの装着率を誇っている。つまり、現在販売されている新車はそのほとんどが最初からイリジウムプラグを装着しているのだ。しかし、皮肉にもこの装着率の高さが、NGKの商品開発にとって問題となった。

「当初は、一般プラグからのグレードアップとしてイリジウムプラグを販売し、ユーザーに性能アップを実感してもらうという高付加価値の販売モデルができていました。しかし、イリジウムプラグの新車装着率が8割を超え、当時の最上位モデルであるイリジウムMAXでも新車装着のプラグと大きな違いがない。ユーザー様に高い付加価値を提供することができなくなってしまいました。弊社としては従来通りイリジウムIXやイリジウムMAXで行くのか、更に高性能なプラグを開発するのか、決断を迫られましたが、世界シェアNo.1のプラグメーカーとして、今までにない最高、最強のフラッグシップモデルを作ろうと決断しました。そして生まれたのがプレミアムRXです」。

◆性能向上のためにエアロダイナミクスまで取り入れるNGKのこだわり

プレミアムRXは2011年の6月に発売された。その前のイリジウムIX/MAXが2000年頃の発売だから、10年ぶりの新製品ということになる。その性能はフラッグシップの名に恥じないもので、同社の調査によれば一般プラグに対して燃費性能が2.2%アップ、イリジウムプラグとの比較でも1%アップした。近年注目されているアイドリング時の燃料消費も一般プラグに対して1.9%低減したという(同社内調査による)。低温時でも優れた始動性を発揮し、加速性能の向上も実現しただけでなく、耐久性も高くなったという。

「プレミアムRXには様々な特徴がありますが、最も大きいのは、中心電極にルテニウムを配合したことです。これによって耐久性が向上していまして、従来のイリジウムプラグ(両貴金属プラグ)の場合、交換推奨距離が10万kmですが、プレミアムRXは12万kmになりました」。

ルテニウムはイリジウムと同じ貴金属のひとつだ。電極の素材は融点が高いほど長持ちするが、ルテニウムの融点は約2500度と非常に高い。だが、これだけでは耐久性は向上しても、それ以外の性能は変わらない。低燃費や加速性能の向上はどのように実現されたのか。

「プレミアムRXのもう一つの特徴である白金チップの突き出し電極を外側電極に採用し、消炎作用が大幅に低減されました。さらに、外側電極にオーバル形状を採用することで、さらなる着火性の向上を実現しています。これによって燃費とパワー、いずれも向上しました」。

消炎作用とは読んで字のごとく、プラグ自身が燃焼を妨げてしまうことだ。従来のプラグでは太い外側電極が燃焼を邪魔していた。外側電極はエンジンの振動で折れることがないように、十分な太さが必要で、中心電極のように細くすることはできない。そこで、プレミアムRXでは従来の外側電極の先端から、白金チップを突き出して固定することで、画期的なレベルで消炎作用を低減した。このチップは溶接で固定されているのだが、絶対に脱落しない品質、加工精度の高さはNGKならではの技術だ。

さらに、外側電極の断面を従来の長方形からオーバル形状とすることで混合気の流動を妨げない工夫も取り入れている。スパークプラグもついにエアロダイナミクスを考慮して設計するまでになったのだ。ここまでやるこだわりにNGKの意地を見た思いがする。

◆軽自動車ユーザーを中心に高まる評価

これほど高性能なプレミアムRXだが、現在のラインアップは実用モデルを中心に展開している。販売の大きな比重を占めるのは、実は軽自動車だ。一般プラグを装着したモデルに乗るユーザーが、手軽なグレードアップとして到着するケースが多い。軽自動車ユーザーはコストに非常にシビアだが、一般プラグでは1万kmの寿命がプレミアムRXでは6万kmとなり、燃費も良くなるため、初期投資は大きくてもトータルコストとしては安上がりだ。コストにシビアだからこそ、そこを見抜いているともいえる。

「現在、プレミアムRXのラインアップは13品番で、国産車の約6割をカバーしています。すでに装着したユーザーからは違いが体感できるといった声が出ており、装着を薦めた修理工場のCS(顧客満足度)が向上したとか、ネットで口コミが広がっているとも聞いています。そのため、未対応のモデル、とくにスポーツカーをはじめとしたチューニング向けの高熱価のプレミアムRXを出してほしいという要望は非常に強いですね」。

ラインアップの拡充が急務というわけだが、最近の自動車はプラグの汎用性がなくなってきているため、残り4割をカバーするのはなかなか大変なのだそうだ。そのため、未対応の車種については従来のイリジウムIX/MAXで対応しているが、プレミアムRXのラインアップが十分に拡充すれば、高性能プラグはプレミアムRXに一本化していくという。それほど、すべての面で優れた自信作なのだ。

《山田正昭》

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