【フォード フィエスタ 試乗】気持ちよく日々を過ごる上質なカジュアルウェア…家村浩明

試乗記 輸入車
フォード・フィエスタ「1.0 Ecoboost」
フォード・フィエスタ「1.0 Ecoboost」 全 14 枚 拡大写真

フォードから、コンパクト車『フィエスタ』の新型登場。

【画像全14枚】

フォードを紹介するのにいきなりVWを持ち出すのもヘンかもしれないが、『ゴルフ』と『ポロ』、それに対しての『フォーカス』とフィエスタ。こういうライバル関係だという説明の方が、フィエスタのポジションを掴みやすいのではないか。このフィエスタは1976年に初代が誕生したという歴史を持ち、今回のモデルは7代目に当たる。その歴史には、ボディの“小ささ”を活かして、ラリー(WRC)で活躍したことも含まれる。

さて、その小さなフィエスタの第一印象だが、これは(何だか堂々とした感じのクルマだな)ということ。そう、小さく見えないのだ。データを見れば、全長は4000mm未満だし幅も1720mmで、まさにコンパクト(Bセグメント)なのだが、このクルマはそういう印象がない。ドカッとしたカタマリを作ることがテーマと言っているような台形のボディは、超シンプルなフロントグリルによって、そのラインがさらに強調され、ふしぎな存在感を醸し出す。横から見ると、ルーフは長くリヤエンドまで続いていて、ハッチバックとステーションワゴンを組み合わせたような“クロスオーバー”造型になっていることもわかる。

エンジンは3気筒の1000cc+ターボで、1400回転で最大トルクに達し、そのトルクが4000回転までフラットに続く。1リットルとはいえ過給によってエンジンパワーは「排気量×1.6~1.8」となるから、この車体には十分以上。山岳ワインディング路に持ち込んでも、このボディを軽々と運ぶ力強さを発揮し、また扱いにくさもない。

6速のミッションはMT風にシフトアップ&ダウンもできるが、これは次の段になるまでに若干のタイムラグがあり、“スポーツ走り”には、ややストレスとなる。むしろ、ミッションはスポーツ・モードを選択し、変速はATに任せてしまった方が、このシステムの総合力を引き出せるように思う。左手をシフトから解放しステアリング操作に集中すれば、イージーにして速いクルマとなる。言い換えれば、そうしたスポーティ走行にも適応可能なコンパクト・ハッチになっているのが、このフィエスタだ。

乗り心地には、硬さはない。フォーカスとも共通する“しなやか系”のサスで、適度のロールも伴いつつ、コーナーでも着実に車体を支える。シートのフィールはやや硬めで、またランバーサポートも積極的であるため、多少の違和感を覚える向きもあるかもしれないが、スポーティ・ハッチというこのクルマの主張には、こういうシート&感触でいいと思う。

ごく普通に、日常使用車として走らせつつ、時には山岳路で、しなやか、かつタフな、このクルマの走行性能を味わう。こうした“二つの顔”、いわば多様な使い方が可能なのが、この新フィエスタだと思う。一見、まるで飾り気のない佇まいで、服でいえばTシャツみたいなものかもしれないが、しかしこれ、実は、上質綿とウェルメイドが組み合わさった上出来のカジュアルウェア。いつも使えて、そして気持ちよく日々を過ごせそう…。そして、せっかくの新型なのだから、現状のような1グレードではなく、安価バージョンも含めての戦略的で多様な車種展開があっていいと思う。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★

家村浩明|ライター&自動車ジャーナリスト
1947年、長崎生まれ。クルマは“時代を映す鏡”として興味深いというのが持論で、歴史や新型車、モータースポーツとその関心は広い。市販車では、近年の「パッケージング」の変化に大いに注目。日本メーカーが日常使用のための自動車について、そのカタチ、人とクルマの関わりや“接触面”を新しくして、世界に提案していると捉えている。
著書に『最速GT-R物語』『プリウスという夢』『ル・マンへ……』など。

《家村浩明》

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