宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2013年8月に実施したD-SEND#2飛行試験で異常が発生した原因究明結果を公表した。
D-SENDプロジェクトは、「静かな超音速旅客機」の実現に必要なキーとなる技術である低ソニックブーム概念で設計された機体の飛行実験を実施し、効果を検証するもの。
昨年8月16日に実施した実験では姿勢制御が不能となり飛行破綻事象が発生した。JAXAでは同日に調査・対策チームを立ち上げるとともに、10月18日には原因特定と対策提言のための外部有識者委員会を設置した。
委員会では原因の特定と再試験の確実な成功に向け対策を提言した。
飛行破綻となったのは飛行制御プログラムに組み込まれている機体モデルの空力特性を使って算出した機体のロール角加速度と、実機の値との間に差があり、ロール運動を制御する適切なエルロン操舵指令が与えられず、ロール運動の振動が収束しなかった。
これがヨー運動にも影響し、横滑り角を制御するラダー操舵を打ち消し、横滑り角が徐々に発散する動作となり、最終的に分離後62秒で機体振動を制御しきれなくなったと分析。
今回の原因分析結果をもとに見直した空力特性と1回目試験の飛行制御プログラムを使って、飛行シミュレーションを実施したところ、制御不能の状態がほぼ再現されたとしている。
原因究明を受けてJAXAでは、確実に実験を成功させるために必要な技術的な対策を実施する。
具体的には、姿勢制御に十分な安定余裕を持つ飛行制御プログラムへの改修と、機体モデルの空力特性の見直し、飛行軌道の再検討、これらに伴う飛行誘導プログラムの改修など。
JAXAでは再発防止策を実施した上で、再試験に向けた取り組みについて技術的な準備が整った段階で再試験の可否について決定する予定。