【アナリティクス14】これからのデータサイエンティストに求められるもの

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アクセンチュア株式会社デジタルコンサルティング本部、アクセンチュアアナリティクス日本統括 工藤卓哉氏
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アクセンチュア株式会社デジタルコンサルティング本部、アクセンチュアアナリティクス日本統括 工藤卓哉氏が「分析結果最適化プロジェクト成功の要諦とディシジョンサイエンスを支える人材の育成方法」と題し講演を行った。

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同講演は2014年4月10日『アナリティクス2014-SAS FORUM JAPAN-』内セミナーとして行われた。以下、講演内容をレポートする。

旧来型の“新しいサービスの創り方”に限界 イノベーショントレンドを踏まえた思考を

「データサイエンスというと統計の話に偏りがち。だが、今日はまえひろに、メッセージを散りばめたい」。工藤氏は冒頭で個々の領域を厳密に語るというよりも、広範囲にわたるトピックに対して自身が得てきた知見を共有したい旨述べ「一つでも役にたつようなかたちでお持ちかえりいただけたら」と講演を切り出す。

始めにまずイノベーションのトレンド説明から入る。なぜいきなりイノベーションの話をするのかというと「データサイエンスに関わるところというのは企業の経営戦略のために、もしくは意思決定の最適化のためになにかをする領域」であって、これらを考える際にイノベーションの大きなトレンドを把握することが重要なのだという。

旧来型の“新しいサービスを考える方法”ではここの領域を突破できない、と強調。
クリステンセンによるイノベーションを捉える枠組みをスライドで示し、今までの企業は(新しいサービスを)プロダクトアウト型でうみだしてきたけど、新しく3つの型(リードユーザ型・ユーザ創造型・アナリティクス型)が現れてきている点を指摘する。

「もちろんこれがすべてではないし、他の型を提唱されている人もいるかもしれないけれど、ここで言いたいのは人材要件の分野でも、これまでにない方向がみられる」ということ。
現に工藤氏が接してきたアクセンチュアの社員の中の、ハッカソンで入賞するような人間、オープンソースのプログラミングでのコミッターレベルで登録されている人間をみていても、「10何年前とエンジニアのかたちが変わってきていると感じる。」という。

スケールアウトするかいなか 「領域をわけ、データの性質に応じたアルゴリズムの適用を」

イノベーショントレンドを把握することの重要性を指摘した工藤氏。二つ目のメッセージとして、工藤氏は「データサイエンスは、“データだけでも数学だけでもだめ”で、先立つものに、目的になる適用サービス領域があって、それでこそ最適化に向かう。」点を強調する。
ここでいう“先立つ適用サービス領域”について、工藤氏は「データサイエンスが提供できるサービスの中でも、すごく世の中に役立つ、コスト削減が何億円できて利益に直接結びつくようなデータ領域と、そうでない領域が存在する」と話す。

巨額のコスト削減、利益創出に結び付く領域は「旧来型の“ミリミリとした”大量解析ではなく、SKUナンバーが非常に多い商材を扱い、リニアにスケールアウトできる領域」。
こういった領域ではアナリティクスが非常に効き、現にアクセンチュアの中でもレベニュードライバーになっている、という。

一方で、目的に沿うことが難しい分析領域があり、典型例には生鮮食品の需要予測などがあるという。「非常にレイバーインテンシヴで、一定の正解率は保ってはいるものの、依然として外挿するし、なかなかスケールアウトできない悩みを抱えている。」(工藤氏)
したがって、扱うデータの特徴に応じたアルゴリズムを適用することの重要なのだという。

データによりアナリティクスが効くか否かに差があると説明されたものの、現時点でどんなデータであれ、数日で構造データに落とし込むことができるフェーズにきているという。「今はデータサイエンスの過渡期で。2、3年前では考えられなかった処理速度でサービス提供ができるようになっている。」

適用サービス領域を見極めることの重要性が指摘されたうえで、現在工藤氏が統括する、アクセンチュアアナリティクス日本では、とくに“センサー分野”、ログの解析が非常につよみになってきているのだという。ログの解析では、「どんなデータでも数日で構造データに落とし込むことができるようになっており、それは2・3年前では考えられなかった処理速度でサービス提供ができるようになっている。」

データサイエンスの今後 キーワードは“クロスプラットフォーム”と“機械学習”

では今後のデータサイエンスで重要となるキーワードはなにか。
工藤氏はひとつに“クロスプラットフォーム”を挙げる。

「ソフトウェアかハードウェアかはまだ判断しかねるけれど、少なくともドコモがしているモバイル空間情報などのような、空間統計情報をつかうと、これまで考えられなかった軸での分析ができるようになる」。

たとえば銀行、証券業界では、契約情報つまり顧客データをもとにクロスセルしマーケット分析をしている企業も多い。しかし会員情報のような自己申告でのデータは一側面しか表していない可能性があり、構造データによってクロスでみれば、まったく違う形が見えてくるという。

「たとえば銀行で2000万所得のあると言っている人と500万の所得があると言っている人がいるとします。通常の銀行の分析だと預かり資産だけで優良顧客はどっちかランク付けしがち。だけど他の情報をクロスさせると意外な顧客の行動がみえてくる。とくに位置情報からわかることが多いのですが、いまの例だと所得2000万の人が量販店の既製服を着ていたり、高級料理ではなくファミレスで食事をとっているかもしれないわけで。所得だけでランク付けをしたとしても、衣食住にどのくらいのお金をかけているか、など、期間を伸ばしていくとノイズが排除されてその人の強い行動特性がみえてくるのだという。

クロスプラットフォームによって「従来の“たてわり分析”ではできなかった個人プロファイルが精度を増してみえてくる。」(工藤氏)

また、ふたつめに“機械学習”を挙げる。「機械学習によりいままで予測したいと思われてきた値がだせるようになってきている。」

脳波を分析して生産性がさがりそうな人に対してアラートを出す。物品・サービスを購買したいけど“どうしようかまよっている”複雑な想いも、将来的には個人別パターン化して
潜在的な購買意欲を予想する。コンタクトレンズを通じて血糖値をはかり予防医療をしていく。その汎用性は極めて高いという。

◆数学スキルより“ビジネスドメインでの仮説をたてられるか”

最後に工藤氏は人材育成において重要な三点を述べた。これからのデータサイエンス分野での人材に求められることとして“仮説をたてる能力をもっているか否か”“よしと言われているものを疑えるか”“リーダーシップをもっているか”の三つが挙げられた。

“仮説をたてる能力をもっているか否か”

データサイエンスは数学にだけ長けていればよいわけではない。今後の人材育成で重要なのは“きちんとビジネスドメインでの仮説をたてられるか”と強調。そのためにも業界知識(をインプットしていること)が必須になってきているのでは、と指摘する。「コンサルタントの中には“仮説なんてひらめきにすぎない”という人もいるけれど、(ここでいう仮説立案は)概念を理解したうえで次の新しい糸口をみつけることであって。飛び道具的なものを意味していっているわけではない。」

“よしと言われているものを疑えるか”

「データサイエンスがつくってきた一般線形モデルなどは(静的データを使っている場合は)デプロイメントした瞬間に陳腐化してしまう。だから常に疑わないといけないと思っています。」と語る工藤氏。アインシュタインの特殊相対性理論のように当時絶対だと思われていた理論もいつかは崩されるときもある。そういう意味でもバランスの取れた人材を配備することが重要で。そのままよしと言われていたものを疑える人が(アクセンチュアの)社員をみていても伸びていっているように思われる、という。

“リーダーシップをもっているか”

データ解析やアナリティクスにあたっては様々な人がかかわるため、部門・インダストリーを越えてコミュニケーションをつなげられることも重要と述べられた。また、自身がリーダーシップの重要さを感じた経験として、アクセンチュアでの事業立ち上げまでの経緯を語った。

そもそも工藤氏が日本にもどってきたとき、アナリティクス部門はなかった。そんな中、「アナリティクス部門をつくるため、社長・副社長に訴え、この領域の重要性を訴えた。非業務で、社内で工藤塾をつくって、統計の授業をしました。最初はゼロの状態から10、30、80人と増えて。」最後には社長も参加するようになったのだという。

ビッグデータの活用領域は従来型の社内データのみならず、社外データを合わせた活用が現在の主流。また先に述べたような機械学習分野でも日に日に発達が進む。複数のセンサーデータを組み合わせることで、これまでアンケートやヒアリングでしか取得できなかった人の思考・嗜好・感情・ライフサイクルなども推定可能になりつつある。工藤氏は最後に「このようなデータサイエンスの先端技術をこれからどんどん若い人に学ばせたい。彼らがやりたいことをやらせることできっと新しいものがうまれる。」と述べ、講演をしめた。

現在同氏は慶應義塾大学SFC研究所での「データビジネス創造・ラボ」創設や会津若松大学でのデータサイエンティスト育成講座の設立、ほか政府への政策提言など精力的な人材育成活動を行っている。

《北原 梨津子》

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