高性能な樹脂であるエンジニアリングプラスチック、通称エンプラはクルマやオートバイなどの部品を始め、生活のあらゆるところに使われている。それでも高熱に晒される部分は金属やセラミックなどが使われており、その使い分けがコスト管理や軽量化につながることになる。
そう思っていたら高機能プラスチック展で、凄いプラ部品を発見してしまった。それはターボチャージャーのインペラーである。ターボは、排気ガスの圧力を回収してエンジンに新気を過給するデバイス。当然、高温の排気ガスから熱も吸収するので、タービンには耐熱性の高い素材が使われているのが普通だ。それなのに樹脂製のインペラーを採用できると言うのだから驚きだ。
もっとも使われるのは排気側ではなく、吸気側のコンプレッサーホイールとしてだ。それでも十分に凄すぎる。何しろ比重はセラミックやアルミの半分ほど。つまり単純に考えれば5割もの軽量化が図れるのだ。
展示されていたのはビクトレックス・ジャパンのブース。それはビクトレックス・ピークという素材で、プラスチックながら高強度と耐熱性を合わせ持つスーパーエンプラ。一番耐熱性が高いものは380度まで耐え、カーボンやファイバーなどを充填すれば高い強度を誇る上に、耐摩耗性も高く、金属表面のコーティングにも使えるそうだ。
実はこの樹脂製インペラーは、すでに実用化されており、かつて国産スポーティカーに採用されていたそうだ。
ところがスポーツカー衰退のあおりを受けて現在は使用されていないそうだが、ビクトレックスジャパンの駒崎氏によれば、このところダウンサイジング過給エンジンが注目を浴びているので、再び需要が高まる可能性が高いと予測しているそうだ。さらにオイルポンプのローターにもピークが使われており、かつてはF1マシンのエンジンに採用されていたと言う。
触媒の前後に組み込まれるO2センサーにもピークが使われた製品もあった。従来セラミックが使われている部分がプラスチックで置き換え可能、ということに驚かされた。これにより成形の容易さから設計の自由度が上がり、コストダウンが可能になるそうだ。