【スズキの四輪技術】ポート噴射で直噴に近い効率を目指したデュアルジェットエンジン

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スズキ デュアルジェットエンジンのインジェクターと燃焼室
スズキ デュアルジェットエンジンのインジェクターと燃焼室 全 2 枚 拡大写真

スズキの四輪技術説明会では、開発中のディーゼルエンジンやマイルドハイブリッド、新興国向けのAMTと並んで、デュアルジェットエンジンのカットモデルも展示されていた。

先日『ソリオ』を試乗して、そのレスポンスの良さと豊かなトルク特性にちょっと感心させられた。軽自動車の出来が良くなっている分、リッタカーやコンパクトカーにはそれ以上の期待を持ってしまうが、その期待を裏切らない走りを見せてくれたからだ。

そんなスズキのコンパクトカーの走りを支えているのが、前述のデュアルジェットエンジン。カットモデルを見て、その独特なインジェクターのレイアウトに興味を持ち、四輪エンジン第二設計部長の加藤勝弘氏にデュアルジェット開発の経緯を尋ねてみた。

「我々が重視したのは、燃料直入率というものです。これはインジェクターが噴射した燃料がどれだけ燃焼室にダイレクトに入っているか割合で示したもので、従来のポート噴射では、インジェクターから噴射された燃料がポートの壁に付着して、燃焼室に入っていかない分も多いんです」。

ポートの壁に当たった燃料は液体のまま燃焼室に流れ込んで不完全燃焼の原因になり、燃費も悪化させる。この無駄を無くすことで走行性能は従来のまま、燃費を一気に向上させることを狙ったのである。

「そこで2本に分岐した吸気ポートそれぞれにインジェクターを配置して、インジェクターの位置を30mm近く燃焼室に近づけています。インジェクターの噴射形状も狭角にして、直入率を高めています」。

小型になっただけでなく、細く長く伸びるノズルが燃焼室近くでの噴射を可能にしている。また、キメ細かい制御を行うには、小型のインジェクター2本の方が都合も良さそうだ。

吸気バルブが開いている状態で燃料を噴射する必要があるなど、筒内直噴に比べて制約はあるものの、直噴に近い効果が得られるのがスズキのデュアルジェットだったのだ。これは効率のいい噴射タイミングを実現するとなると、燃料噴射のタイミングには、VVT(可変バルブタイミング機構)との協調制御なども影響していそうだ。

「おっしゃる通りです。VVTは吸気と排気の両方に搭載して、状況によってバルブの早閉じと遅閉じを使い分けています」。

もちろんデュアルジェットに伴い燃焼室やポート形状の最適化が図られているし、さらにはクールドEGRの採用など高効率化への工夫は数々盛り込まれている。

次世代のパワーユニットでは、1400ccの直噴過給エンジンも想定していると言う。そうなるとNAはデュアルジェット、ターボは直噴といったように使い分け、燃費と走行性能の最適化を狙っていく計画のようだ。

《高根英幸》

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