日本が育てたレーダー衛星の独自技術『だいち2号』5月24日打ち上げ

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日本が育てたレーダー衛星の独自技術『だいち2号』5月24日打ち上げ
日本が育てたレーダー衛星の独自技術『だいち2号』5月24日打ち上げ 全 7 枚 拡大写真

2014年4月21日、JAXA 宇宙航空研究開発機構は、5月24日に鹿児島・種子島宇宙センターから打ち上げられる『陸域観測技術衛星2号 だいち2号(ALOS-2)』の機能と特徴について発表した。

2006年から2011年まで運用された「陸域観測技術衛星 だいち」の後継機として、5月24日に種子島宇宙センターからH-IIAロケット24号機で打ち上げられる「だいち2号」は、レーダーで地表を観測する衛星だ。大きな板状の合成開口レーダー「PALSAR-2」を備え、光学地球観測衛星では観測できない雲のかかった地表や夜間の地球の観測が可能になる。PALSAR-2は、「だいち」に搭載された合成開口レーダー「PALSAR」の機能を向上させたもので、分解能は「だいち」の10メートルから「だいち2号」では3メートルとより高精細になっている。新たに追加された「スポットライト」観測モードでは、地上の1点を長時間観測することで、進行方向に1メートルと高い分解能を実現する。観測幅はスポットライトモードで25キロメートル、広域観測では490キロメートルとなる。

「だいち2号」では運用性が向上し、地球上のある地点の上空を通過してから、東西方向に少しずつ軌道がずれ、もう一度同じ地点の上空を通過するまでの回帰日数は14日間となっている。日本の上空で観測を行う際には、0時ごろと12時ごろ、1日2回の観測を予定しており、災害など緊急時の場合は最短で1時間前の観測のリクエストに対応できるという。

JAXA ALOS-2プロジェクトチームの鈴木新一プロジェクトマネージャによれば、打ち上げから4週間ほどで試験的な初画像の公開を目指す。搭載機器の校正などを行って、6カ月後ごろから正式なデータの公開を開始する予定だという。

「だいち2号」では、複数回の観測を行って地表から帰ってくる電波の「ズレ」から、地表の動きを調べる機能が期待されている。これにより、地震や火山活動、地盤沈下を監視する活動が予定されている。「だいち」でも、2011年2月に霧島・新燃岳の火口を観測し溶岩の噴出を確認した例がある。また、水害や土砂災害の監視、オホーツク海の海氷の監視など、昼夜を問わず地表を高頻度に観測できるレーダー衛星の特徴を活かし、災害対応などにあたる。

だいち2号は、日本がL帯と呼ばれる波長24センチメートルの電波を用いた衛星を、1992年打ち上げの「ふよう1号」、「だいち2号」と継続してきた流れの最新機となる。JAXA 地球観測研究センター 研究領域総括 島田政信氏によれば、アメリカ・NASAによる世界初の合成開口レーダー衛星「SEASAT」の思想を受け継いだところから、日本のレーダー衛星の流れはスタートしているという。一方、欧州では、ドイツの「TerraSAR-X」がX帯、この4月に打ち上げられたESA 欧州宇宙機関の「センチネル 1A」がC帯と、より短い波長を採用している。長い波長に対応するアンテナ機器は開発の難易度がより低かった点も理由の一つだという。かつ、樹木を透過して地表の様子をとらえやすいL帯のレーダー衛星は、日本の国土に合った地球観測衛星として期待される。

《秋山 文野》

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