三菱自動車 益子修社長は、北京モーターショー14のプレスカンファレンス後に実施された報道陣とのラウンドテーブルにおいて、中国市場における2014年度の三菱車販売を30%以上上乗せする目標を明らかにした。
中国車体事業にかける期待
三菱自動車は中国においてエンジン事業、輸入完成車事業、車体事業を展開している。車体事業は1995年から技術供与を続けてきた東南汽車(福建)工業に対して、2006年に25%の出資手続きを完了し、現在では『ランサー』『ギャラン』『デリカ』などを生産している。また、2012年に広州汽車との合弁会社を設立、『パジェロ』や『ASX(日本名:RVR)』の生産を開始した。広汽三菱の2013年販売台数は4万3035台。
益子社長は2005年からの社長在任期間における事業展開を振り返り、「就任当時はまだエンジン事業しか行っていなかった。その後東南汽車に25%出資を行ったが、50%出資の合弁会社を持つ他メーカーに比べればそれでも満足のいく状況ではなかった。なので、一昨年にやっと合弁パートナーを得て広汽三菱を設立できたことは、車体事業への参画という意味で念願叶ったと言える」と語った。
今年の目標について尋ねると、「今年は全てのマーケットで昨年の数字を上回るよう目標を掲げているが、その中でも何とか達成できるところと、大きく上回れるところがあり、中国は後者に当たる。広汽三菱の工場が本格的に稼働を始めたのは去年からなので、まだまだ成長の余地はあるだろう。現在出しているモデルも好調なので、30%以上は伸ばしてほしい」とし、2000万台市場での期待を示した。
厳しい環境規制をチャンスに
益子社長はプレスカンファレンスにおいて「新エネルギー車の導入検討を開始した」と言及。壇上にも『コンセプト GC-PHEV』と『コンセプト XR-PHEV』という2台のプラグインハイブリッド車が据えられた。
2009年にアメリカを追い抜き、5年連続で世界一の販売台数を誇る中国。増加する自動車の台数に伴ってエネルギー問題、環境問題が課題になるのは当然の流れだ。中国政府は現在、国内で販売される乗用車の燃費を2015年までに14.49km/リットル、2020年までに20km/リットルとする規制基準を掲げている。今回のモーターショーでもEVやプラグインハイブリッド車の出展や導入発表が目立った。
同氏は「三菱に限らず自動車メーカーがその社会的責任を果たすことは重要であり、それらを無視して成長を続けていくことはできないと思う」とした上で、厳格化する燃費規制に対して「我々にとってはチャンスだ」と述べる。「中国の環境規制が厳しくなるのであれば、我々持ってる技術を何とかうまく中国に持ってくることで、販売台数を一気に増やすことができるのではないか。それはEVでもPHEVでも両方でも構わないし、柔軟に対応したいと考えている」(益子社長)。
また、中国市場で急激な伸び率を見せるSUVについては「一台しか車を持てない人が、最大限に有効活用できる車種を考えたら、私はやはりSUVやミニバンになると思っている。中国でもそういった選択が増えてきたのではないか」(益子社長)と話し、主力モデルの伸びに期待を示した。
立ちはだかるのは“バッテリーの壁”
しかし、新エネルギー車導入を左右するのがバッテリーだ。現時点で中国政府は、バッテリーなどの基幹部品も現地生産したものを使用するよう定めているという。中国国内で品質が保証されており競争力ある価格のバッテリーを調達できるかどうかが鍵となってくる。仮にEVやPHEVへの輸入許可が下り、完成車を日本から運び入れることになっても、関税のかかった高額な値段では勝負できない。
益子社長は「我々はバッテリーメーカーではないので、自分たちだけでは判断できないところ。しかし、品質に見合うものが生産できる会社が見つかれば、その2年後には新エネルギー車の生産が可能になると考えている」と述べた。今後、早期導入に向けて意欲的に模索していくという。
さらに、「今ある車種を単に現地生産しているだけでは、燃費規制をクリアできない。広汽三菱に関して言えば、しばらく現行の2車種(パジェロ、ASX)で生産を続けていくが、新たなモデルも追加しなければならないとは思っている。車種については2016年(から2020年までに20km/リットル)規制を念頭に置いて、考えていく」(益子社長)との考えを示す。
中国における2016年までの販売台数目標は30万台。『i-MiEV』や『アウトランダーPHEV』で培ってきた独自の電動化技術を活かし、環境対応に努めながらのシェア拡大に意気込みを見せた。