トヨタから発売された『ノア&ヴォクシー ウェルキャブ』の開発にあたっては、多くのユーザーの元を訪れ、様々な使用シーンを観察したという。
「ウェルキャブはカタログに掲載しているモデルから、個々人によって様々な改造や仕様変更が必要になる。そのあたりは、設計を始める前に、最初に種類や仕様は決めていく」とは、トヨタ製品企画本部ZU主査の中川茂さんの弁。
「それを見極めるにあたっては自分がそのユーザーを知り尽くすしかない。そこで、日常においても注目をしているし、実際に多くのユーザー訪問をしている」という。
「ウェルキャブの難しいところは、ユーザーの種類がすごく多いことだ」と中川さん。「例えばデイサービスや輸送サービスなど、主に法人で使われているところから、個人では、障がい児や障がい者とその家族。年を取って車いすに乗っている方とその家族など、それぞれまったく事情が異なってくる。そこで、多くのユーザーのところへ訪問し、観察をすることで、開発の参考にしているのだ」と話す。
そこで、新型ノア & ヴォクシー ウェルキャブが先代から大きく改良された点について中川さんは、ストレッチャーが乗るようになったことを挙げる。現在ストレッチャーが乗るクルマは商用車がほとんどだ。「例えば障がい児の養護学校の往復の際に、スロープ車を買ったとする。その子は最初車いすだったが、不幸にも症状が悪化してしまい、ストレッチャーでないと乗れなくなった。もし、ウェルキャブがなかったら『ハイエース』などに買い替えなければならない」。しかし、「ボディサイズの問題で、家の前までハイエースが入れるかどうか…。さらに、毎日の送迎では母親が運転することが多いことを考えると、その母親がハイエースを運転するのか」という問題が生まれる。
中川さんは、「もし、障がい児が産まれた家庭で、その症状が進行する可能性があるのであれば、ウェルキャブを買っておけば、残念ながら症状が悪化して車いすからストレッチャーになったとしても、クルマを買い替えずに対応が出来る。これはすごく意味があることだと思う」と、多くのユーザーを訪問し、様々な状況を把握したうえでの、開発に込めた想いを語った。