【プリウスPHV+デジコア808i】究極の音から自分の音へ、意外な落とし穴にハマる

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納車後、はじめて「ソニックプラス・ザ・クレスト」と「デジコア808i」の組み合わせの音を聞く筆者。高域再生能力の向上に驚く
納車後、はじめて「ソニックプラス・ザ・クレスト」と「デジコア808i」の組み合わせの音を聞く筆者。高域再生能力の向上に驚く 全 30 枚 拡大写真

ソニックデザインの「デジコア 808i」のインストールレポートを掲載してはや2ヶ月が過ぎた。その間、東京は冬からすでに初夏のような、ドライブに最適な季節に移り変わった。今回は、エージングが十分に済んだデジコアを、さらに追い込むことで自分好みに再調整(チューニング)したシステムの試聴レポートをお送りする。

結論から言うと"完璧"である。『プリウスPHV Sound Suite』という名称でコンプリートキットとして発売できるレベルじゃないか。真剣にそう思う。内面との苦悩を乗り越えて、ピシっと自分好みにフォーカスが合ったこの感触。もうこれ以上は求めないという意味で、オーディオを越えて音楽への興味と満足に置き換わりつつある車内の再生環境である。

◆プリウスPHV+SonicPLUS The CREST+デジコア808iを究極パッケージと呼びたい

プリウスPHVの購入から2年経つが、愛車の音質レベルは純正とはかけ離れている。『SonicPLUS THE CREST<ダブルクレスト>』プリウス専用モデルは、一体鋳造アルミダイキャスト製エンクロージャに小径ユニットの組み合わせというソニックデザインのオリジナル思想のスピーカーシステムの導入が最初のステップだった。今回導入した『デジコア808i』は、同ブランドが持つオールインワンのデジタルプロセッサーアンプ。両者の目指すハイエンド思想は変わらないが、「The CREST」がディーラーでも短時間で行える純正と同じボルトオンインストールであるのに対して、「デジコア808i」は腕と耳の確かなカーオーディオ専門ショップでインストールが必要であることが異なる。

とはいっても、「デジコア808i」はオールインワン。8チャンネルの高効率デジタルパワーアンプ部と、デジタル入力だけでなく、カーナビからのアナログ音声出力も一旦デジタル変換することで無劣化のまま調整などを行うデジタルプロセッサー部、そしてコンパクトフラッシュ内に収められたWAVファイル、MP3ファイルを再生するプレーヤー部とを一体化している。別体システムのインストール費用に比べると非常に安価かつクルマにかける負担(スペースや重量)もきわめて少ない。電源負担が低く発熱が少ないシステムは信頼性が高く長寿命、愛車の乗換えにもデジコアならば載せ替えが可能だ。

一方で、インストールのベースになる車両がプリウスで本当によかったと思っている。『SonicPLUS THE CREST<ダブルクレスト>』のエンクロージュアの容積を見てほしい。タイトな設計によって生まれた究極のエコカーにもかかわらず、これだけの大容量金属エンクロージュアをボルトオン&カプラーオンで搭載可能であったことはオーディオの神様の思し召しとしか言いようがない。しかも、3列シートの『プリウスα』やプリウスPHV、『G'sプリウス』などすべてのプリウスシリーズに対応している。ベース車両の入手は新車でも中古車でも選び放題の恵まれた環境にある。

もしあなたが、音楽やオーディオが好きでベース車両を探しているのならば、プリウスPHV、つまりプラグインハイブリッド仕様のプリウスをお勧めする。注目したいのは2012年11月の小変更で100V出力のインバータがメーカーオプション設定され、ヴィークルパワーコネクターを用いて車外にも100Vを出力できるようになっていること。残念ながら我が家のプリウスPHVは初期型ゆえ100V出力ができないのが残念だが、PHVの大容量電池を宅内に引き回し、ホームオーディオのクリーン電源にできれば音楽好きオーディオ好きとしては最高の選択となる。もちろん災害時にはこのクリーン電源が家電への非常電源になる。電池がなくなればエンジンが始動して発電し、ガソリン満タンならば約4日間の家庭日常使用をまかなえてしまう。

カーオーディオにとっても、プラグインハイブリッドの大容量電池がエンジンの音や振動がない静寂なリスニング環境を提供する。夏ならば静かな電動エアコンとの組み合わせで、自宅では家族や近所から非難轟々であろう大音量も可能な、移動するリスニングルームが完成するのだ。

ノーマルプリウスとプラグインハイブリッドのプリウスでは補助金を含めると差額は30万以内。駐車場に設置する充電器にも補助金が設定されている。あなたが戸建て住まいのオーディオ好きならば魅力的な選択肢となる。

◆SDカードの音の悪さに気づかず七転八倒する

カーオーディオに話を戻そう。前回のインストールレポートで強調したかったのは、ハイエンドカーオーディオとハイエンドホームオーディオの根本的な違いである。ホームオーディオも高価な趣味製品は存在するが、それはモノの価格。通常は、どのような部屋でどのようなセッティングで聞くかは購入者次第となっている。一方でハイエンドカーオーディオの世界ではショップの役目は商品の販売だけではない。安全で美しいインストールを行い、デジタルプロセッサーの設定によりマルチチャンネルのアンプと複数のユニットを総合して、ドライバー席のリスナーにその機器で望みうる最高の音を提供するまでをプロショップは責任を持つ。

さらに素敵なことに、最高の音から自分好みの音に再調整(チューニング)してもらえるところまでが価格に含まれているという。ホームオーディオの袋小路が、自分好みの音を求めてのチューニングを目的とした機器交換や、安くはないケーブルやインシュレーターなどのアクセサリー類の追加購入にあることを知っている自分としては、これは嬉しいサービスである。

じつは再調整あたって、私は非常に苦悩した。デジコア納車レポートのあと再調整にむけて、自分の求める音はどこにあるのかをあらためて自問自答を開始した。ところが、このセットで望みうる最高の音のはずが、納品時の感動が失われ、高域ばかり目立って中低音域から下のへその下にどうも力が入らない音のような気がする。

インストールをお願いした「Sound Park」(http://www.soundpark.ecnet.jp/)での納車時に清水忠則店長から聞かせてもらったサウンドはどこに行った? エージングが必要なのか…。ところが数週間でエージングが進むにつれ改善したのは高域だった。例えば低音域を含まないバッハの無伴奏バイオリンソナタなどは手を触れれば切れるほどのリアリティである。

この問題はひょんなことでメモリカードに原因があることがわかった。じつは私は試聴ディスクならぬ愛聴曲を詰め込んだ試聴用SDカードを、パナソニックのSDカード→コンパクトフラッシュ(CF)アダプターを使ってデジコアのCFスロットに挿して試聴を繰り返していた。しかし、清水店長はトランセンドのCF(コンパクトフラッシュ)で音の調整を行っていた。店頭で私に聞かせてくれたのもこのCFだったのだが、マイ・ソングが詰まったSDカードに入れ替えて聞き続けたのが間違いだった。まさかメモリーカードでここまで音が変わるとは思っていなかったのだ。ご存知のように同容量ならばSDはCFの半額程度で手に入り、パソコンにもSDスロットが装備されているので、こちらのほうが使い勝手がすこぶる良い。かつて一眼レフがCFしか対応していなかった頃のSD-CFアダプターをたまたま手元に残っていたため、気にもせずSDカードでの試聴を続けていた。

忠告しておこう。デジコアはCFカード以外は使ってはいけない。誰もがわかるレベルで音が変わる。SDからCFに戻した途端、ヘソの下に気合が入ったサウンドが戻ってきた。そう、これだ。清水店長が自信を持って勧めるデジコア808i&SonicPLUS The CRESTの実力がこの音である。お気に入りのディスクのひとつ、New York Trioの「Blues In The Night」(ASIN: B00005NO5B)再生してゾクッときた。ビル・チャーラップのピアノの左手とベースが濃密に絡むシーンに手の汗を握ったのだ。

◆自問自答の再調整、運命の出会いは突然来る

さて、振り出しに戻ったばかりなのにチューニングの時間を予約した日は近づいてきた。この音をあえて再調整すべきかどうか、こんどはそちらの悩みである。悶々とした時期に、リッカルド・シャイー指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団が来日公演を東京オペラシティの大ホールで行った。このライブが自分の求める音の方向性をあらためて示唆してくれた。”世界最古の”と形容されることが多いこのオケだがそんな表現は似合わないほどのキレッキレのショスタコーヴィッチ交響曲第5番「革命」。オケに性能というパラメータがあるとすれば、ポルシェ『911GT3』ばりの高性能サウンドを目の当たりにした。

腹は座った。今のままでもすばらしい。しかし清水店長にチューニングをお願いしよう。求める音はドイツのスーパーオーケストラが完璧に鳴るシステムだ。

かつて私はThe CRESTの視聴記の中で「オーケストラの再生はオーディオでは不可能だというのが私の持論だ。100人もの音楽家が2000人収容の大ホールをブワン!と鳴らしたものを2本のスピーカーと狭い部屋(車内)で再現できるわけがない」と言い切り、「まだ大ホールの空間再現性ではホームオーディオが有利だ」と述べた。しかし、デジコアをインストールした今ならば、不可能を可能にするポテンシャルがあると感じられる。

いよいよSound Parkに訪問当日、清水店長にSDカードの音質のことを伝えると「接点の面積や圧力が関係しているのかもしれませんね」と興味深く分析してくれた。そして聴き比べてもらい明らかな違いを清水店長と私、両者で確認できた。この違いの認識をベースに自分がさらに求める音のイメージを数曲再生しながら伝えた。「少し待っていてください」と清水店長は小一時間車内に閉じこもった。

その後は「これはいかがですか?」「確かに低音の量感は出ましたが、柔らかすぎます。もっとタイトなのが好みです」「ではこれは?」「もっとガツンときてほしい」「こちらでどうでしょう?」「これは高音が曇った印象です。すみませんがもう一度最初に戻してみてください」

このようなやり取りを複数のお気に入りの曲を聞きながら繰り返してゆく。堂々巡りになりそうな気もしたが、数時間後に出会いは突然やってくる。「これでしょう?」「そうですこれです!」

チューニングとはよく言ったもので、近づくのではなく合わさる感覚だった。ピタッと求める音に合ったということが直感でわかる。

◆アーチストが自宅にやってくるマイサウンド

その日の家路は幸福そのもの。お気に入りディスクを入れたCFカードの曲は、何を聞いてもツボにハマるサウンド。オリジナル設定でゾクッときたニューヨーク・トリオの「Blues In The Night」は、ジャズクラブで聴く演奏から、自宅にビル・チャーラップが来てまさにそこで演奏してくれているというようなプライベートな音に仕上がった。

清水店長による再調整は中低音域のバランスを私好みに整えてくれたのみに限らなかった。いわゆる音空間のプライベートチューニングが完成したように思う。レコードを聴く、コンサートを聴きにいく、といったよそ行きの空間ではなく、いつもの勝手知ったる音空間に演奏を招くことができる。音のチューニングをしてもらったつもりがリスニング空間のチューニングとなっていた。

ホリー・コールの「Smile」(ASIN: B004FKXHLK)、綾戸智恵「Ban Ban Ban」(ASIN: B002IELBFO)ではやはり、彼女たちが我が家に来て歌ってくれる。目と鼻の先に触れるようにそこにいるのは、空間表現と車内の音響特性、そして私の心情空間の響きが一致したからではないだろうか。もはやボーカルコンテンツをテスト試聴する必要はなくなった。すべてがオーディオ的に完璧であり、ただただ音楽にのめり込むのみ。

ウィントン・マルサリス「Feeling of Jazz」(ASIN:B0001CNQNU)、オスカー・ピーターソン・トリオ「You Look Good to Me」(ASIN:B004QEF7FY)もニューヨーク・トリオの「Blues In The Night」とともに私のオーディオチェック用の代表曲だが、音像定位の正確さ、音の飛び出しの鋭さはエンターテイメントの領域だ。ベースが胃を蹴りあげ、スネアドラムが脳天を叩き、トランペットが目玉に突き刺さる。

前回のレポートではThe CRESTとデジコア808iのシステムとそれをまとめあげるSound Park清水店長の高域再生能力に驚愕したことを伝えた。いま、チューニング後にへその下で沈み込む低音を獲得したからこそ更に高音表現のコントラストが効いていることが確認できた。そして高音のさらに上の帯域で空間を描き出している。そこを受け持つのが純正ツイーターの場所にボルトオンで装着されるThe CRESTの一体鋳造密閉エンクロージュアのワイドレンジドライバーとなる。繰り返すが、この容積の密閉型エンクロージュアがクルマへの加工ゼロで取り付けられる幸運を噛みしめたい。もしThe CRESTに飛び込む準備をしているのならば、ワイドレンジドライバーエンクロージュアが含まれるダブルクレスト以上をぜひとも選択肢としてほしい。

◆スーパーオーケストラ再生、不可能を可能にする技術

ベルリン・フィル管弦楽団というスーパーオーケストラがある。昨年11月19日、東京モーターショー開幕前夜にサントリーホールで聞いたブルックナーの7番の演奏は今でも忘れられない。まず彼らは世界一の名手だが、余裕など絶対にブッこかない。情熱を前面に出して必死の形相で演奏する。超一流に共通して言えることはけっして手を抜かないことだ。完璧なアンサンブル、管楽器ソリストの美音、それだけじゃない。低音弦のゴリゴリ度、つまり解像度とボリュームが他のオケと比べて明らかに違う。

デジコア808i+The CRESTで描き出されるオーケストラ再生はまさにベルリン・フィルサウンドである。オーケストラ再生が不可能どころか、カリカリの解像度とゴリゴリの低音弦。トゥッティでは空間に響きが満たされるが歪を伴わない。奥行きと広がりがある空間にワイドに弦楽器群が、その後方に木管ソロ楽器が、さらに奥から打楽器金管が彩りを加える様が再現されている。

自分がかつて、オーディオでオーケストラ再生が不可能だ、と思い込んでいた理由が今となってはわかる。それは音量が大きくなった時の歪みであり、低音域の混濁であった。デジコア808iのマルチチャンネルデジタルアンプが歪のないトゥッティを響かせ、The CRESTの小径ロングストローク型の金属エンクロージュアが正確かつタイトな低音域を下支えすることでそれは克服された。もちろんそれはある程度の音量を伴うことが条件であり、一方でボリュームを上げても内装に共鳴して音が濁らないようなインストールの技術が必須となる。

今は往年の指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤン時代のベルリン・フィルの録音と、現代の音楽監督であるサー・サイモン・ラトルのベルリン・フィルの録音を聴き比べている。今年生誕150周年を迎えるリヒャルト・シュトラウス作曲の「英雄の生涯」という曲はカラヤン&ベルリン・フィルが最も得意とした曲であり1959年、1974年、そして1982年の3度も録音している。とくにカラヤン晩年の1982年版(ASIN:B00ATRPFPO)はスーパーオーケストラのデモンストレーションのような鮮やかさと後期ロマン派の濃密なロマンチシズムが合わさったデジタル録音初期の名盤である。このカラヤンの亡霊に挑んだのが現在の音楽監督サー・サイモン・ラトルによる2005年版「英雄の生涯」(ASIN:B000BU992E)となる。これが素晴らしい。私はカラヤンと同等、それ以上の名演であると感じた。23年も経たベルリン・フィルは当然メンバーも一世代変わっていると思うがそれが信じられないくらい同質のサウンドを響かせる。大先輩と戦っているのは指揮者だけでない。オケの面々の、より良い演奏をディスクに残したいという気持ちが再生音を通じて伝わってくる。

録音技術の進化も、よりベルリン・フィルのライブな音に肉薄している。そう、昨年サントリーホールで聴いたベルリン・フィルサウンドがプリウスPHVの車内で再現されたのだ。そんな環境を得た私は、前よりも一層コンサートに足を運ぶようになった。レコード録音で音楽に没入し、コンサートライブで発散するという繰り返しがたまらなく快感になる。オーディオへの不満がなくなって、いまはひたすら音楽三昧である。

《三浦和也》

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