【スカイライン200GT-t発表】ステア・バイ・ワイヤを採用しなかった理由とは?

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日産自動車 インフィニティ事業本部 ものづくり・クオリティ本部 車両開発主管 長谷川 聡 氏
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大きなセールスポイントを使わない2つの理由

2014年6月5日より、2リッター4気筒の直噴ターボ・エンジンを搭載する『スカイライン200GT-t』が、スカイラインのラインナップに追加される。

この新グレードとなる「スカイライン200GT-t」の最大の特徴は、ダイムラーから提供されたダウンサイジング直噴ターボ・エンジンを搭載することだが、他にも注目の変更点があった。それが電動油圧パワーステアリングの採用だ。

つまり、すでに発売済みであるハイブリッドのスカイラインで、大きなセールスポイントとなっていた世界初のステアリング・システム「ダイレクト・アダプティブ・ステアリング」を不採用にしたのだ。このシステムは、ステアリングとタイヤを物理的ではなく、電気的につなぐもので、ステアリング・シャフトは途中で切り離されている。いわゆるステア・バイ・ワイヤである。そうすることで、路面からの不要なキックバックを排除し、スッキリとしたフィールを狙っている。

異なるパワートレインの新グレードということで、ハイブリッドではないエンジンを搭載したのはわかる。しかし、なぜセールスポイントであった「ダイレクト・アダプティブ・ステアリング」を不採用としたのか? そこを、車両開発主管である長谷川聡氏にたずねてみた。

「性能的になくても、操縦安定性が確保できたというのがひとつ大きなポイントです。そして4気筒として出すときにお値段を比較的に買いやすいように設定したかった。大きくは、この2つです」と長谷川氏は説明する。

今回の4気筒ターボ・モデルはハイブリッドよりも車重が100kgほども軽く、前後重量バランスも50:50に近づいている。素性が良いこともあり、「ダイレクト・アダプティブ・ステアリング」のような凝った機構がなくても俊敏さが表現できたという。しかも不採用とすることで価格を抑えることができるのが、その理由であったのだ。

「そのため、最初はDAS(ダイレクト・アダプティブ・ステアリング)なしの普通のパワーステアリングで出すことを決めました。ただ、DAS(ダイレクト・アダプティブ・ステアリング)を出して、ステアリングに嫌な振動がこないとか、フィーリングを変えられることに対するお客様の反応が良いので、急遽、開発して、秋になるのですが、オプション設定できるようにしました」と長谷川氏。

◆安全性や品質はそのままで、より買いやすいモデルを提供

もともと現行スカイラインは、日本マーケットにおいて、メルセデスベンツやBMWといった欧州プレミアム・セダンと同じセグメントを狙っている。

「欧州プレミアムを狙うならば、基本性能がしっかりしていないとダメなので、乗り心地とか操縦安定性が良くて、なおかつ品質もよくないとダメ。そのため、工場品質も上げてきました。それをやって、さてスカイラインの特徴は何だろう? というと、“ハイブリッドで燃費がよくて動力性能も一等賞。重たいクルマだけど、キビキビ走るようにDAS(ダイレクト・アダプティブ・ステアリング)をつけた”となる。そこまでやると燃費・動力性能・操縦安定性は、BMWやベンツといったプレミアムカーの少し上までいけているんじゃないかなと思うんです。ただ、値段も日本のスカイラインとしては高くなりすぎてしまいました」

ハイブリッドのスカイラインの価格は、2WDモデルで約460~540万円。これは値段面でも欧州のライバル同様だ。

「そこで品質や安全性など、基本的なところはまったく同じままで、エンジンを替えることで、少しリーズナブルなところに落とし込んでくるというのが、今回の4気筒の大きなポイントです。プレミアムの品質を保ちながらも、値段を買いやすいところに持っていこうと。安全の仕様や工場で作っている品質とか、ナビの設定は変えていません。エンジンとステアリングだけです」と、長谷川氏。

新しく導入された4気筒ターボの「スカイライン200GT-t」の価格は約380万円~460万円。なるほど、ちょうどハイブリッド・モデルの下にすっぽりと納まる価格帯だ。

プレミアムカーにおいて価格設定は非常に重要なファクターとなる。価格がブランド・イメージを形成するという側面もある。また逆に、ブランドの価値よりも価格が高いのもいけない。プレミアムカー市場に挑戦するスカイラインにとって、4気筒ターボが肯定的に認められるかどうかは、その走りが鍵になるだろう。冴えた走りであれば価格の安さは肯定的になるし、逆ならばネガティブになる。その走りに注目したい。

《鈴木ケンイチ》

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