【ホンダ N-WGN 600km試乗 前編】市街地、高速での乗り心地にいま一歩の頑張りを…井元康一郎

試乗記 国産車
N-WGNカスタム
N-WGNカスタム 全 20 枚 拡大写真

ミニバンの『N-BOX』『N-BOX+』、セダンの『N ONE』に続くホンダの新世代軽自動車Nシリーズ第4弾として昨年11月にデビューしたトールワゴン『N-WGN(Nワゴン)』で600kmあまりドライブする機会があったのでリポートする。

試乗車はエアロパーツ、ディスチャージヘッドランプなどでデコレートされたトップグレードの「カスタム G・ターボパッケージ」。30km/h以下で機能する衝突軽減ブレーキやサイドカーテンエアバッグといった安全装備も充実。また、室内もハーフ合成レザーシートやイルミネーションなど、軽の中でも相当に豪華装備満載のモデルだ。オプションの15インチアルミホイールを装備しており、JC08モード燃費は24km/リットルと、14インチ仕様車に比べて2km/リットルのビハインドを負う。

試乗コースは東京・葛飾と長野北部の高瀬渓谷の往復で、総走行距離は604.0km。一般道と高速道路の比率は5:1。ドライブを行った4月5日~6日はシーズン最後の本格的寒波の到来で場所によっては氷点下になるほど冷え込んだこともあって、エアコンはデフロスター作動時以外はオフ。1名乗車。また、普段は省燃費運転を行うECONモードをOFFにするのだが、NワゴンはECONモードを入れないとアイドリングストップ機構が作動しないため、行程の約5分の4をONの状態で走った。

N ONE との価格差が動的質感に表れる…一般道

自宅を早朝3時に出発し、国道17号線で群馬県の長野自動車道藤岡インターへ。筆者は高額きわまりない日本の高速道路を使うのが大嫌いで、先を急ぐときとクルマの高速巡航性能を試すときを除けば、高速道路はほとんど使わない。空いている時間帯に混雑しているエリアを抜け、信号の少ないバイパスを多用すれば、一般道でも時間あたりの走行距離はそこそこ稼げる。平均30km/h強で午前6時頃に上信越自動車道藤岡インターチェンジに達した。

空いた一般道やバイパスのクルーズでは、Nワゴンのパフォーマンスに特段の問題は見当たらない。走り重視のN ONEに比べて変速比はハイギアードで、無駄なトルクをかけなければ1500rpm以下の領域を保ったまま60km/h巡航をこなすことができる。足回りはセッティングがかなりハードなN ONEに比べると柔らかいが、若干しなやかさに欠け、揺すられ感は強め。15インチタイヤを履いている影響もあって、ロードノイズも若干大きい。

シートは座面、シートバックともに軽自動車らしからぬ厚みを持たせた立派なものだが、N ONEのシートが腰をハンモックが支えるような絶妙な体圧分散であったのに比べると凡庸な仕上がり。また、Nワゴンのシートの座面、シートバックはサイドサポート効果を狙ってやや深くえぐられた形状となっているのだが、その幅が若干狭く、横幅の広い乗員にとっては窮屈な印象があった。N ONEが軽自動車のレベルを大きく超越したロングドライブ耐性を見せたのに対し、Nワゴンは比較的短いインターバルで一息入れたくなる。このあたりは価格差がクルマの動的質感にそのまま表れていると言える。

タント、ハスラーと違うのは?…高速クルーズ

上信越道藤岡インターから長野の手前の坂城インターまでの103kmは高速クルーズ。この区間でのNワゴンのパフォーマンスは、軽自動車としては平均を上回っているように思われた。100km/h巡航時のエンジン回転数は約2600rpmと、約2800rpmのN ONE、同2700rpmのダイハツ『タント』より低く、約2300rpmのスズキ『ハスラー』より高いといったところ。90年代の3リットル級乗用車と同等の低回転運転ということもあり、エンジンのノイズレベルは十分に低いレベルに収まっていた。

空力特性はN BOXやN ONEより良好なようで、横風や高速度で走るトラックに抜かれるときの乱流を受けても安定性は十分。平時の直進性も良好だった。Nワゴンには瞬間燃費計が装備されていないため、あくまで平均燃費計の動きからの推測だが、100km/h巡航は20km/リットル前後でこなせるようだった。風切音は軽自動車としては小さいほうで、ハスラーやN ONEに比べるとかなり静か、空力設計を徹底させたタントに対してはやや劣るといった印象。

乗り心地は一般道のクルージングに比べると落ち着いたものとなる。車重800kg台のモデルとしては重厚感はそこそこ出ているほうだった。ただし、路面のアンジュレーション(うねり)が大きいところを通過した時の揺すられ感は、一般道と同じように少し大きめだった。

坂城インターから聖高原を経由し、大町から高瀬渓谷に向かう。高瀬渓谷に至るまでの区間はワインディングロードだ。高瀬渓谷へ向かった目的は、早春の高瀬ダムまで散策を楽しむこと。高瀬ダムは観光地として有名な黒部第四ダムと3000m級の後立山連峰を隔てた長野県側にある山奥のダム。ダムマニアはともかく一般的な知名度はきわめて低いが、堤高176mと、同186mの黒部ダムと国内ワンツーフィニッシュを飾る巨大ダムだ。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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