【日産 スカイライン 試乗】豪快な走りや最新技術の搭載も日本優先ではない…松下宏

試乗記 国産車
日産・スカイライン
日産・スカイライン 全 13 枚 拡大写真

日産を代表するブランドともいえる『スカイライン』がフルモデルチェンジし、ダイレクト・アダプティブ・ステアリングと呼ぶ新機構を採用するなど意欲的なクルマ作りをしてきた。

でもスカイラインに日産のエンブレムはなく、フロントグリルにはインフィニティのエンブレムが装着されている。ボディも大きくなり、全幅は日本ではおきて破りともいえる1800mmを超えるサイズになった。

アメリカや中国などの大市場で販売するのがメインで、日本では月にわずか200台を販売目標とするクルマだから、日本市場への配慮が足りなくなるのも仕方ないのだろう。まあ『ティアナ』に比べたらずっと良いが、米中を偏重して日本を軽視したクルマ作りは最近の日産では当たり前のことである。

外観デザインは良い。堂々たる高級セダンが表現されている。サイズの余裕がデザインを良い方向に向かわせたのだろう。ボディサイズの割にタイトなコクピット感覚を演出したインテリアも、スポーティさや高級感をうまくまとめている。

スカイラインはBMW『3シリーズ』をベンチマークにしたそうだが、インテリア回りの質感などは確実に3シリーズを超えている。

ただ走り出そうとした瞬間にがっかりしたのは足踏み式パーキングブレーキを採用していたこと。プレミアムセダンをうたうクルマで、今どきこれはないだろう。

3.5リットルエンジンに電気モーターを加えた1モーター2クラッチのハイブリッドシステムは『フーガ』用と同じだが、スカイラインへの搭載に合わせて改良が加えられている。燃費志向のハイブリッドではなくパフォーマンス志向のハイブリッドである。

停止状態から発進加速を試すと、文字通り豪快な加速を示す。世界最速のハイブリッドをうたうのは、正にその通りといった感じだ。

当然ながら高速クルージングは余裕十分。7速ギアを使えば時速80kmは1200回転ほど、時速100kmでも1500回転くらいである。ただし、これは意識して高いギアを選ぶ必要がある。ATの変速スケジュールも日本仕様が考慮されておらず、Dレンジのままだと時速80kmでは5速ギアの1600回転くらいで走っている。

クルージング中にアクセルを抜くと、すぐにエンジンが停止してモーター走行に入る。フーガよりもモーター走行に入りやすくなった感じがあり、そこから急な加速が必要になってアクセルを踏み込んだときのショックなどもうまく抑えられている。ハイブリッドシステムの洗練度が高められたのが分かる。

世界初の電気式のステアリングシステム、これを採用した意欲は大いに買いたい。クルマがこの方向に進むのは間違いなく、スカイラインがその第一歩を踏み出したことは評価されるべきだ。

ただ、その操舵感覚はこれまでのギア式ステアリングの自然なフィールに欠ける部分があり、無条件でべた褒めできるほどの仕上がりではなかった。

微小な操舵に対して敏感に反応しすぎる感じあったり、あるいはコーナーから立ち上がるときの直進状態への戻り方に違和感が感じられたりしたからだ。熟成が進められることに期待しておきたい。

シャシー系では逆に、従来は設定のあった4輪操舵の4WASが採用されなかった。日産が早くから採用していた技術であり、ここにきてBMWなども採用しているというのに、日産が独自の技術が使われなくなったのは残念だ。

安全装備は先進緊急自動ブレーキの採用がやっと始まった。トヨタやホンダから10年遅れの採用であり、後出しの良い面とまだまだ物足りない面とがあった。カメラを備えておらず、人間認識ができないことを除けば、対応する速度域や前の前のクルマの挙動に対応できることなど良いも多い。

装備や仕様の向上もあって、新型スカイラインの価格は大幅に高くなった。このあたりもやや厳しい部分である。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★

松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。

《松下宏》

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