【トヨタ プロボックス/サクシード 改良新型】12年目のマイナーチェンジ、シェアトップの商用車に求められるものとは…開発主査インタビュー

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プロボックス/サクシードの開発を指揮したトヨタ自動車 製品企画本部 ZP 主査 下村修之氏
プロボックス/サクシードの開発を指揮したトヨタ自動車 製品企画本部 ZP 主査 下村修之氏 全 18 枚 拡大写真
トヨタの商用バン『プロボックス』/『サクシード』が12年ぶりのマイナーチェンジを遂げる。広い荷室と使い勝手の良さから、ビジネスを支えるプロの道具としてクラストップシェアを走り続けるプロボックス / サクシードが、なぜ今、刷新されたのか。プロボックス / サクシードに求められるもの、そして新型のねらいを、開発を指揮した製品企画本部 ZP 主査の下村修之氏に訊いた。


◆変える必要がないところは、変えなくてもいいという発想

----:プロボックス / サクシードは、12年もの間、モデルチェンジしなくてもトップシェアを維持してきたわけですが、今回大規模な改良に踏み切った理由をお聞かせください。

下村:きっかけは、やはり2015年の燃費規制です。商用車というのは定期的にモデルチェンジするものではなく、やらなければいけないという時がそのタイミングになります。燃費規制をクリアするため、新しいエンジンとCVT(無段変速機)を採用する。それが第一の目的でした。

新しいエンジンを載せるには、『ヴィッツ』、『アクア』、『カローラ』等に使われている新しいBプラットフォームに変える必要がある。そうすると武器が揃うんですよね。フロントの足回り、エアコン、シート、色んなものが新しく取り込めるんです。そこが、けっこう大事な要素でした。


----:パッケージングや外観を大きく変えず、中身が全くの別物といって良いほど変わっています。

下村:そうですね。変える必要がないところは、変えなくてもいいんじゃない? ということなんです。アッパーボディは、荷物をいかに積めるかが大切なわけで、その点で先代モデルはよく出来ていました。変えなくても行けるなら、それで行ってみようと。商用車はそれでいいんじゃないかと。

しかし、そうすると新しいフロント側のプラットフォームとは横幅が合わない。乗用車の場合ならアッパーボディを変えてフルモデルチェンジですが、今回はアッパーボディを変える必要はない。でも、新しいプラットフォームの幅を6cm切れば、アッパーボディが載るし、新しいエンジンコンパートメントもそのまま使える。それがベストという話を社内的に通したわけです。生産技術部には、従来のアッパーボディを使うために、新しいプラットフォームを切るなんて前代未聞だと言われましたけどね。

開発当初、お客様に言われたのは「カッコ良くしても買わないからね」でした。そして「荷物が積めなくなったら買わないよ」と。そこが乗用車とは全く違うところですね。新型も最初に「荷室は変わりましたか」と聞かれるんですが、「いえ、変わりません」と答えると、ああ良かったと。ただ何台もずっと買い続けていただいているお客様からは「何回買っても、同じクルマが来るんだよね」とも言われました。見た目で新しいクルマと分かるようにする必要もあると。そこで歩行者保護対策でフロントまわりを変えるので、デザインも変えちゃいましょう、と。


----:Aピラーから後ろの作りは先代モデルと一緒ですね。

下村:先代の時からAピラーは角度が立っていて、乗り降りがすごく楽だと評判がいいんです。そういった点でも先代のアッパーボディはとてもよく出来ている。先代はすごく画期的なクルマだったと思っています。二つポイントがあって、一つは「パッケージング」。いかにもバンですという四角四面のアッパーボディで、ただし荷物はたくさん積めますよと。それからもう一つが「足」。専用開発リアサスに、ラテラルコントロールロッドという横棒がズドンと入っていて、荷物を積んでカーブを曲がってもブレない、リアが砕けない。この二つは、バンだからこうしたという堂々とした宣言になっているわけです。


◆商用車は時代に合わせて変わっていく

----:今回は、先代に乗っているお客様の声を積極的に聞いたと伺いました。

下村:声を聞くのは、当たり前のことですが、お客様の声がなかなか上がってこないのがこのクルマの難しいところです。(商用車は)買う人と乗る人という、二種類のお客様がいる。買うお客様からは丈夫で、荷物が積めて、ランニングコストが安くて、という評価をいただいています。でも、実際に乗る人はどう思っているんだろうと。そこでお客様のところへ直接行って話を聞き、両方のお客様からいいねと思われるクルマを作りたいと思いました。


----:実際に聞いたお客様の意見で参考になったのは。

下村:本当に知りたかったのは、お客様がどういう気持ちで乗っているんだろう、ということでした。そして特に参考になったことが二つありました。一つは「クルマの中で過ごす時間が長い」と言われたこと。もう一つは「仕事してて楽しいっていうことはない。その代わり、楽がいい」って。それで、あ、そうかと。

これで使う人の全体像が何となく腹に落ちてきました。クルマの中にいる時間が長いから、そこで楽になればお客様に喜んでもらえるだろうと。それは会社にとってもいいことだろうと。クルマの中とは、走っているか、休んでいるかだから、走りを楽にするのと、車内で楽に休めることの二つだろうということです。


----:今回レベルアップした操縦安定性や乗り心地、そして機能的なインパネにそれが盛り込まれたわけですね。特にインパネはお弁当が置けるテーブルがあったり、1リットル紙パックが置けたりと画期的です。

下村:いろんな意見を聞いているんですが、それをすべて盛り込めば、いいクルマが出来るわけではありません。普通はデザイン作業から始めるんですが、私はデザイナーにちょっと仕事を待ってくれと言いました。そしてドライバーがよく車内に持ち込むものがあるから、まずそれを置く場所を作ることにしたんです。乗用車だと、そこまで機能優先でデザインはできませんが、このクルマだったらいいでしょと。先代にもセンターコンソールに小さなテーブルがあって、当時は画期的な装備だったんですが、小さくて弁当が置けない。デザイナーには、おでんと海苔弁当くらいは置けるようにして欲しいと伝えました。

もちろんインパネデザインを新しくできたのも、プラットフォームを変更できたからです。12年ぶりだし、モデルライフも長いので、ここは思う存分やろうと。会社の偉い人にも、しばらくモデルチェンジしないで済むように思い切りやれと言ってもらいました。

商用車は、時代に合わせて変わっていくしかないんですね。例えば、商流(受注、発注、販売など商取引の流れ)や物流の形態が、ガラッと変わってしまったら、商用車というクルマがなくなる可能性だってあるわけです。でも、幸いなことに、物を運ぶという日本の商業形態というのは、まだしばらくは続きそうです。時代の流れで、従業員のことを考えよう、働きやすくしようという考えも昔より強くなっていて、今回の新型にそういうのも取り入れようと。もちろん、環境に優しい、燃費を良くする、安全性も高めるということもやっています。唯一出来なかったのは、“楽しい商用車”っていうところですが(笑)、“働く人を元気にするクルマ”は出来たと思っています。

《聞き手:宮崎壮人 まとめ:丹羽圭@DAYS》

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