【マツダ デミオ プロトタイプ 試乗】やや薄味の走りもフットワークが際立つ…青山尚暉

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マツダ・デミオ プロトタイプ
マツダ・デミオ プロトタイプ 全 18 枚 拡大写真

マツダは『CX-5』などのディーゼルモデルが好評だが、ついにBセグメントカーの新型『デミオ』にもSKYACTIV-Dが搭載されることになった。

2種類あるパワーユニットはいずれも新開発の1.3リットルのガソリン、1.5リットルのクリーンディーゼルである。ミッションは1.3リットルに6AT、新開発の5MT、1.5リットルにダイレクト感を高めた6AT、6MTが組み合わされる。

マツダと言えば人馬一体、Gのつながりにこだわった走りが自慢であり、また、実際に評価されている。このデミオではその人馬一体感を「走りだした瞬間、日常シーンでも体感できる」というから楽しみだ。決して積極的な走りを楽しむシーンだけでない人馬一体である。

さて、新型デミオのハイライトのひとつがインテリアのデザイン、質感だ。広さで勝負するコンパクトカーも少なくないが、デミオは先代同様、そこではなく、"ドライバーシンメトリカルデザイン"にこだわり、まさに「美しい!」と感じられるインテリアを創出している。特にオフホワイトレザー×赤ストライプのインテリアは高級車さながら。エアコン吹き出し口のあしらいなども素晴らしい。一部『アクセラ』のパーツを流用…ということは、クラス上の質感があって当然だろう。

運転席に乗り込んでまずうれしいのはインパネ回りの質感だけではない。オルガン式のペダル配置が実に自然で、ドライビングポジションを決めやすいのだ。聞けば、ヒップポイントに対してタイヤを80mm前方に移動させ、ペダルを20mm外側に配置(先代比)。身長150~190cm、33cmの靴でも無理のないドライビングポジションが取れるという。

今回、自動車専用ではない山岳路風のクローズドコースで試乗したのはプロトタイプ。まず乗ったのはもちろん、注目の1.5リットルのディーゼルモデルである。

結論を先に述べれば、マツダ初の1.5リットル(シングルターボ)ディーゼルエンジンがもたらす走りの印象は、現時点では「走りだした瞬間から感動でき、ずっと走り続けていたい…」と思わせる『アテンザ』やアクセラ(2.2リットル・ツインターボ)より、やや薄味であった。

アクセルレスポンスはいい意味で先代より穏やかながら(キビキビしすぎないから扱いやすい)、2.5リットル車並みの25.5kg-mものトルクを持つため、さすがにトルキーに走り、なおかつガソリンエンジンのように高回転まで痛快に回り切る。急こう配もグイグイいける実力の持ち主だ。ただ、MT車の場合、登りでは使うギアが比較的低めになる。平たん路だけを走れば印象は変わるかもしれないが、もう少し高いギアで走れたらなぁとは思う(静粛性や燃費にかかかわる)。その点、6AT車のほうが常時トルクのおいしいところを使い、比較的高いギアで走れるから好ましく感じられる。

これで遮音、吸音性能をワンランク上げれば(アテンザやアクセラほどそこにコストがかけられないのは分かるが)、走りはさらに洗練され、気持ち良くなると思う。

フットワークは秀逸だ。適度なキビキビ感と文句なしのスタビリティ、そしてなるほど、日常シーンからドライバーとクルマが一体となった走りを味わうことができる。カーブや山道でのリヤのふんばり感、ジワリとロールする安心感、安定感は鉄壁。そう、誰でも走りやすく扱いやすい。ビシリとした直進感を持つため、未経験だが、高速道路を延々と走るような長距離走行もしっかりこなしてくれるに違いない。こうしたクルマとのフィット感、ロングドライブ性能を持つ国産コンパクトカーは実はそう多くない。

乗り心地も文句なしだ。段差やうねり路の乗り越えでもしなやかなサスペンションが一発でいなしてくれる。大きな入力が入っても不快な突き上げ感とは無縁。角の取れた質の高いタッチを示す。また、例えばコーナリング中に大きめの段差があっても、ステアリングはしっかりしたまま。進路を乱されることがない。フラットライドを基本としたクラスを超えたレベルにあるフットワークは、かなり大人っぽくもある。

一方、1.3リットルモデル(ガソリン)のフットワークの良さは1.5リットルモデル(ディーゼル)同様だが、エンジンのパフォーマンスはこの排気量としてはパワフルで気持ち良く、爽快(そうかい)な走りが楽しめた(トルク感でディーゼルにかなうはずもないが)。価格的にもよりリーズナブルなはずで、街乗り、ちょい乗りがほとんどの人ならこちらで十分に満足できるだろう。

ちなみに先代同様、後席の広さで勝負するコンパクトカーではない。前席優先、走り優先。それがマツダのデミオに対する強いこだわり、ライバルとの差別化なのだろう。

いずれにしても、このクラスにクリーンディーゼルモデルが加わることは、国産コンパクトカー、エコカーの勢力図を変えるきっかけになるはず。市販車の一般公道試乗が待ち遠しい。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
ペットフレンドリー度:★

青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車雑誌編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に執筆。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組、イベントも手がける。現在、ドッグライフプロデューサーとしての活動も広げている。

《青山尚暉》

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