日米欧のブランドがさまざまなニューモデルを公開したモスクワモーターショー14。しかし思わぬ伏兵が会場で大きな面積を占めていた。それは中国の自動車メーカーだ。
ブースを展開した中国メーカーは10社。いずれも北京や上海のモーターショーにも出展する大手ばかり。国営企業では東風汽車、第一汽車、長安汽車。また第一汽車グループの海馬汽車も単独で出展。
このほか民族系メーカーでは奇瑞汽車、吉利汽車、華晨汽車、力帆汽車、華泰汽車、長城汽車がブースを展開した。なかでも長城汽車は「グレートウォール」ブランドのブースのほか、SUVやオフローダーのブランド「ハーバル」でもブースを構え、ロシア市場にかける意気込みを示した。
正直に言えば、中国メーカーがプレスデーに大きな存在感を示したとは言いがたい。ニューモデルがデビューしたわけでもなく、カンファレンスでサプライズ発表があったわけでもなかったからだ。理由は不明だが、カンファレンスを取りやめた中国メーカーもある。
しかし、実はすでにロシア市場に進出している中国メーカーは少なくない。なかにはロシアや東欧諸国でノックダウン生産を行っているメーカーもある。ロシアと中国は蜜月関係にあるというわけではないが、上海協力機構の影響で経済的な結びつきは年々強まっていることが背景にあることは間違いないだろう。
ロシア市場、とくにモスクワでは、西ヨーロッパをはじめ世界中から格安の中古車が集まってきている。極東からはるばる運ばれてきた右ハンドルの日本車を頻繁に見かけるし、北米でしか売っていないはずのアメリカ車も珍しくない。
モスクワは世界でもっとも多様な車種バラエティを誇る都市のひとつだ。ここで、安価でそこそこの品質を持ち、そして価格以上に見栄えのよい新車が買えるとなれば、中国車を選ぶユーザーがどんどん増えてゆく可能性も小さくはない。実際、モスクワの路上では長城汽車のSUVや奇瑞汽車のセダンをしばしば見かけた。
現在いくつもの中国メーカーが世界進出を目指しているが、その橋頭堡(きょうとうほ)がロシア市場で築かれるという可能性も考慮する必要がありそうだ。