【モスクワモーターショー14】新型 NSX 大不評に見るロシア市場の特異性

自動車 ニューモデル モーターショー
アキュラブース(モスクワモーターショー14)
アキュラブース(モスクワモーターショー14) 全 16 枚 拡大写真

モスクワモーターショー14において、アキュラはミドルクラスセダン『TLX』をロシア初公開した。『RDX』や『MDX』も合わせたオールラインナップを展示するなど、ロシア市場への意気込みを見せる。

中でもブース入り口にほど近い、最も目立つ位置に展示されたのは『NSX コンセプト』だった。NSX コンセプトは、デトロイトモーターショー12で世界初公開。その後、いくつかのブラッシュアップを経て現在に至る。搭載される次世代ハイブリッドシステム「スポーツハイブリッドSH-AWD」は、ミッドシップに搭載されるV型6気筒エンジンと3個のモーターによって駆動する。

ハイブリッドスポーツカーへと生まれ変わったNSX コンセプトは、東京モーターショー13で出展されると黒山の人だかりができるなどその期待度の高さを見せたのだが、ここモスクワでは、まったくと言っていいほど来場者の興味を惹かなかった。

スポーツカーよりSUV

ロシアにおける2013年の新車販売台数は277万7447台。前年5.5%減のマイナス成長となったが、依然としてドイツに次ぐ欧州第2位の市場をキープしている。ブランド別販売台数は、国産ブランドであるラーダを筆頭にルノー、キア、ヒュンダイと続く。日系メーカーでは、トヨタが7位、日産が8位、三菱が12位、マツダが15位、スズキが20位、ホンダが24位となっている。

モスクワに関して言えば、世界でも有数の高級車市場であり、メルセデスベンツやBMW、アウディなどのドイツ系を中心に、高級車ブランドのプレゼンスが高い。中でも、特筆すべきはランドローバーの多さだ。ランドローバーは2013年にロシアで2万1030台を売り上げた。ロシアは、同ブランドにとって中国、北米に並ぶ最重要市場である。

また、ポルシェのモデル別販売台数も興味深い。ポルシェは2013年に3790台を販売したが、実に80%強が『カイエン』となっている。『911』『ボクスター』『ケイマン』といったスポーツモデルは、合わせて10%に満たないのが現状だ。

トヨタ『GT-86』(日本名:86)、日産『GT-R』、マツダ『MX-5』(日本名:ロードスター)、スバル『BRZ』など、日系各社もそれぞれスポーツモデルをラインナップに加えてはいるが、それぞれがブランド別販売台数に占める割合は1%にも及ばない。

厳寒の大地であるロシアでは、冬季には大部分の路面が凍結する。また、郊外ではそもそも路面が整備されていないところも多く、ピュアスポーツカーが走るのに適した環境とは言いがたい。一方で、どんな悪路をも走破するタフネスさを持ったSUVが人気が出る傾向がある。それに加えて高級セダンにも劣らないラグジュアリーさを兼ね備えたプレミアムSUVは、憧れの的となるのだ。

ハイブリッド不毛の地

NSX コンセプトの大きな特徴である「ハイブリッド」という点も、ロシアの地ではネガティブに受け取られがちである。ハイブリッドの代名詞とも言える『プリウス』はロシアでも販売はされているものの、2013年の販売台数はわずか52台と、同ブランドで最低である。モスクワ市内にトヨタ系ディーラーを展開する企業の関係者は、ハイブリッドが不人気の理由について以下のように説明する。

「まず、ロシアが産油国であるためか、そもそも燃費コンシャスな国民ではありません。実際、ロシアのガソリン価格は日本の3分の2程度です。加えて、新しいものに対して非常に保守的な国民性も影響していると思います。“ハイブリッド”は動力機関が複数搭載されている=コストがかかる、と思われてしまうのです」。

加えて、極度の寒冷地であることや、メンテナンスにおけるディーラーネットワークの整備などもハイブリッドにとっては向かい風だ。レクサスも、全世界で唯一フルラインナップを展開するが、ハイブリッドの比率は「1割前後」(上述の関係者)という。

以上のように、ロシア、特にモスクワにおける自動車志向は、欧米のそれとは明らかに異なる。モスクワモーターショー14でも、積極的に訴求されていたのは、ほとんどのブランドでSUVかアッパーミドルクラスのセダンであった。ロシアにおけるSUVとアッパーミドルクラスのセダン偏重姿勢は、アキュラブースにおいては、NSX コンセプトの不人気という形で現れた。

《瓜生洋明》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. ようやくですか! 新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』日本仕様初公開へ…土曜ニュースランキング
  2. セリカに次ぐ「リフトバック」採用のカローラは、50年経ってもスタイリッシュ【懐かしのカーカタログ】
  3. トヨタ『ランドクルーザー300』初のハイブリッド登場!実現した「新時代のオフロード性能」とは
  4. 【マツダ CX-60 XD SP 新型試乗】やっぱり素のディーゼルが一番…中村孝仁
  5. シートに座ると自動で送風開始、取り付け簡単「クールカーシート」2モデルが発売
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
  2. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  3. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  4. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
  5. 「あれはなんだ?」BYDが“軽EV”を作る気になった会長の一言
ランキングをもっと見る